女神降臨の儀式
「旦那様はありとあらゆる手をお使いになられました。その結論としては先王ではミィンジャオは救えない。それどころか、現在の王族全員でも駄目。そのため旦那様は清や順、西にもアプローチした。民が平穏になれば主は誰でもいいと。ところが、どこが制圧しても乱れるという結論しか得られなかったのです。そして目を付けたのが西で流行っていた女神信仰だった」
ダオの話は続く
「私を女神と父が吹き込んだ。そこまでは聞いています。ですが細かい点が分からない。私を女神に仕立て上げ、西軍を従えた。そこまでは理解していましたが、女神信仰に基づき王族を皆殺しにする? そんな滅茶苦茶な話が……」
「お嬢様、女神信仰における女神とは、破壊の女神なのです。すべてを破壊した後に平穏が訪れる。ある意味では選民思想。なぜ旦那様がこの女神信仰に賭けたか。それはシャオ様の血筋と性格が、女神信仰の女神そっくりだったからです」
「……はい?」
破壊の女神そっくりの性格???
「破壊の女神は気紛れです。しかし女神と呼ばれるだけあり慈愛に満ちている。なのですが敵と見なせば遠慮はしない」
「……確かにそっくりですね」
ピヨ。そうかな? そんな性格なつもりないんだけど。
「旦那様は民を救うために、シャオ様に女神を降臨させることとした。そのためにはまず自分が死ぬこと。破壊の女神降臨のためには肉親の死が必要だからです。そういう教義になっているから。次はミィンジャオの血を殺し回ること。恐らくは今軍が殺しているはずです。残りはレン様ただ一人」
「……ヤン様、アレン、コウルは例外だから、ですか」
「はい。王族でも初代の血筋は生き残る。もっとも初代の血筋の王族はこの三人だけですが」
ダオは溜め息をつき
「レン様はどちらにせよお身体が持ちません。最悪この状態で儀式は行うとリジンジョウさんは言っておられた。今リジンジョウさんがこちらに向かわれているはずです。女神降臨の最後の鍵を持って」
最後の鍵?
「女神信仰における女神降臨の為に必要なこと。それは母の血。リジンジョウさんは奥様の血を持ち向かっておられます」
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「狂ってんのかよ、あいつら」
ラムダは報告を聞いて呆れかえっていた。
南軍は二手に別れたが、別れた方はミィンジャオの王族達を殺して回っていると。
「王都には向かっているようです。もっともかなり寡兵のようで……」
「城に籠もってれば落ちはしないだろう。我々はチュウレイの防護に集中する」
そこに一人の兵士が来る。
「ラムダ様、ご報告があります。リャン族の者がとある宗教をしているのですが、気になることがある、と」
「宗教? ああ女神信仰か? ふむ、聞こうか」
その男は兵士ではなかった。
民族衣装を着たままラムダの前に来る。
「それで? 気になることとは?」
「はい。我等は女神信仰をしております。今その神官が慌てておりまして。なんでも女神が降臨すると……」
「すまないけど、あんまり女神信仰って詳しくないんだ。女神が降臨するってなにか重大なの?」
「はい。要は……災害が起こります。大地が揺れ動き、街は崩壊する」
ラムダは怪訝な顔をして
「なにそれ? 女神って救ってくれるとかいう教えじゃないの?」
「違います。破壊の女神は全てを一度滅ぼすのです。そして世界は作り替えられる。大地の鳴動が合図です……」
それを言った途端
『ガァァァンンンンッッッ!!!』
城が大きく揺れた。