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レンの陰謀

 ゼンウラは都会。

 めっちゃ都会。


「ここ、王都より賑やかでは……?」

 私は南部の大都市リンアンには行ったことがない。リンアンも凄いと聞いてはいましたが


 そして街全体が大歓迎ムード。

 なんか旗とか振ってるし。


『ミィンジャオ万歳! 新王万歳!!!』

 なんか子供達もすごいはしゃいでる。


 なんで?

 と思っていると

「満族は北に引き上げました。まともに戦いにはならなかったのです。これによりゼンウラ地方全てを解放。リョウンも抑えましたし、これで戦は終わるのではないかと……それでこの歓迎ムードです」


 なるほど。


 そして私達はゼンウラの城に向かう。

 そこにはフワン様がいた。

 鎖でグルグル巻き。


「よう! 兄貴! ヤン! 久し振りだな!!!」

 メッチャ元気そう。

 相変わらずの筋肉ぶりで。


「フワン。久しいな。元気そうでなによりだ」

「おお! 俺はいつでも元気だ! 兄貴は体調悪いと聞いたが元気そうじゃないか!」

 声がデカい。


 というかフワン様って


「ヤンも随分大きくなったな! 兄貴が新王で、ヤンが次なんだろう! 頑張って勉強しろよ!!!」

 爽やかな笑顔。


 素直な人なんだよね。バカなだけで。


 ヤン様が怯えてるけど、フワン様バカだから遠慮なくヤン様の背中思いっきり叩いてすっ飛ばしたりするし、バカだから余所見して歩いてヤン様蹴り飛ばしたりしてたという。


 今回の「俺が次の王だ!」も悪意ないんだろーなーと思う。

 だからこそ「バカにつける薬はない」のだが。


「フワン、お主のバラまいた恩賞は取り消すが一緒に謝罪するのだ。分かったか」

「分かったよ! 兄貴!」

 素直。


 でもこれだけ素直なうえにバカなので「王様になりたい! ヤンを殺そう!」とかにもなりかねないのである。


 物凄い面倒な人。


「よし、では行くぞ」



 レン様とヤン様はゼンウラの民の前で演説していた。

 フワン様の謝罪と今後の方針の説明。


 好待遇にも関わらず満族に逆らったゼンウラへの優遇の発表はかなり盛り上がった。



 そんな順調な日々。

 でもすぐに不安要素は現実化した。


「……仰る通りです。ここで休戦と言われましても」

 リジンジョウさんに相談をしたのだ。

 レン様は休戦を考えている。でもそれで軍は止まるのか? と。


「戦う……どこまでですか?」

「まずはミィンジャオ旧領土の全解放です。やつらを北の大地に戻す」

「しかし、相手は旧ミィンジャオ国の兵士も取り込み兵の数は多い。そんなに簡単にいきますか……?」

 首を振るリジンジョウさん。


「簡単ではありません。何年もかかります。ここまではまともに戦っていないのです。ここからが本番。ただ、ここまで勢力を広げる事が大切だったのです。ゼンウラは想定外でしたが、リョウン地方全域と南部全域抑えました。これで我等は飢えません」


 なるほど。

 でも

「シャオ様。レン様にあなたのお父様の仇を討たせてくださいとお伝えいただけませんか? 先王は順が原因で死にましたが、お父様を殺したのは満賊です」



 軍がいよいよ言うことを聞かなくなった。

 それにレン様は厳しい顔をする。


「ここから数年に及ぶ戦……父の仇は討ちたい。だが民の安定を考えるとここで一度休戦し、国力を安定させることが最優先だ。一度休戦もダメか」

「……ソンケワンという将軍は戦いを求めて勝手に戦いに行くような人ですから……」


 休戦もできませんよねーと。


「……シャオは引き続き軍の説得を続けてくれ。俺はヤンへの引き継ぎを急ぐ。遷都先のリンアンの都の宮殿完成までは臨戦態勢というのは理解もされよう。だが、それまでにはこの戦は一度終わらせる」


 レン様の言葉に

「分かりました! 全力を尽くします!」



 =====================


 清は集めた食糧と兵士をチュウレイに集め対峙する事になった。


 だが

「オウコモラからの報告だ。もうレンは戦を止めたがっているが、軍が戦いを続けたいと」

「なるほどねー」

 他の将軍からの報告にラムダはいつもの調子で軽く答える。


「取り敢えず向こうは城攻めは慣れてない。チュウレイで籠城。その間に和平工作で向こうを混乱させようか。しかし親と妻を目の前で殺されたレンが和平ね。それも疑わしいけどなぁ」


 =====================


 ピヨと女官は疲れ果てたレンの身体を癒していた。

 だが

「……レン様、ゼンウラでは薬草が手に入りません。薬草尽きる前にショウサに戻りましょう」


 ショウサで体調を整えていたレンだが、ゼンウラに来て、フワンとの会話、民衆への挨拶でもう身体がボロボロになった。


「……やるべきことはいくらでもある……。この身体の事などどうでもいいのだ。だがショウサには速やかに帰ろう。ピヨ。お主は私の世話はもういい、シャオに貼り付け。シャオは軍との繋がりを隠している。それを探るのだ」


「シャ、シャオがですか? 彼女はそのような性格では……」

「伝えられないなにかがあると思う。悪意ではないだろう。だが言わないという事は聞いても答えまい。いいか。お主らには伝えよう。私はシャオに休戦と伝えたがそんな気はない。両親と、妻ハオラの仇は必ず討つ。だがここで休戦と俺が言えばシャオは軍と何度も話し合う。それを聞くのだ。かならずシャオは軍に切り札を出す。それが必要だ。ピヨ、頼んだぞ」


 ピヨは深刻な顔で頷いた。

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