スパイとの付き合い方
オウコモラが清に信服した理由は順賊があまりにも酷かったからだ。
王宮を略奪し、王族を殺し、女を犯し、街に出ては殺して回る。
オウコモラも拷問に近い処分を受けていたが、それを解放したのが清だった。
清は新たに王族を殺さなかった。
王族を世話する女官を同行させ自分達の北方に移動させるに留めた。
そのやり方に深く感謝しオウコモラは清に協力した。
まずミィンジャオ国でまともな将にも関わらず王により放逐されたラムダを説得して清の将軍とさせた。
他にも有能なのにミィンジャオからは冷遇された臣下を推薦していった。
それらの行為に清の王はオウコモラを深く信用しており、今回の「南軍の状況を見て可能ならば混乱をさせてくる」という任務を預けた。
そのオウコモラだが、内政を任されていると紹介されたシャオは「私には関係ないので」と相手にされず、軍は「シャオ様に聞いてください」の一点張り。
各領主は「裁量はかなり任されていますが、キチンと指示は来ています。また重要なことは領主を集めた会議で話し合われますから。誰が決めているか? 最後はレン様ですが、殆どはシャオ様ですね」
なのでオウコモラはシャオに改めて内政の状況を聞きに来たのだが
「いだいっ!!! いだいぃぃぃっっ!!!」
「小さいなら小さいで、体勢をこちら側で合わせてあげれば良いのです。こうやって、抱えるようにしてあげれば……」
「無理無理っ!!! ほねっ!? 骨がきしんでるからぁぁぁっっ!!!」
ピヨと騒いでるシャオ。
ピヨがオウコモラに気づき
「……あら? オウコモラ様?」
「おお、レン様の女官だった者じゃな。元気
そうでなによりじゃ」
「はい! レン様もこちらに来て大分良くなりまして……」
ピヨと談笑するオウコモラ。
一方でシャオは不思議そうな顔をしていた。
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リョウンとゼンウラの両面作戦。
軍は編成を整えていたが
「オウコモラは多分スパイっす。あいつ順賊大嫌いなのに普通に俺に話しかけてきたっすからね」
ザンリ。
「……その件はシャオ様に任せろ。我々は関知せぬ。それよりもゼンウラの占拠と守りだ。こちらは我等でどうにかせねばならぬ」
「守りもなにも、誰がやるっす? そちらは敵味方の区別つかないわ、うちらは平気で味方を略奪するっすよ?」
その言葉に頷くリジンジョウ。
「うむ。だが、それでもどうにかせねばならぬのだ。ゼンウラの反乱はかなり強固らしい。守りはゼンウラの兵にやらせて、我々はゼンウラについたら西のカンレイを落とすのと、東のジョウンを攻めあがろう。そうすれば敵はゼンウラにではなく、我々のどちらかに攻めいるはずだ」
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「……」
ウェインとその部下はトハンに着き、リョウンから逃げてきた者達に状況を伝える。
ウェインはしゃべらないので、説明するのは部下だが
「……なんと、女神様が……」
「本当に解放されたのか……」
「……ライディラ様の言うとおりだ。女神様に従い、我々は戻ろうではないか!!!」
リョウンから逃げてきた人々は口々に言う。
そこにトハンを統べる部族長がくる。
「……女神様は、来られるのか……?」
ウェインは一度首を振り、その後に頷く。
「……今ではありません。しばらく後です。ですが必ずや来ます」部下がフォローして話す。
「……そうか」
ウェインは手紙を取り出す。
そこには
『女神の降臨はもうすぐだ。儀式は必ずここで行う』
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なんか、違和感が凄いある。
「……なーんでしょ……」
オウコモラ様。
なんか動きが変なのだ。
内政を任せてる筈なのに、なんか、こう……
「あのさぁ。ピヨピヨ」
「私はぴよぴよではありません」
いつものようにつれない。
「……オウコモラ様、なんか変じゃない?」
「……変? とは?」
なんというかなぁ……
「……なんか、私のこと探っているような……」
まさか恋慕でもされてるわけでもないだろうし。
「そう言えば昨日もシャオのこと聞いてましたね」
うーむ……
気になったままレン様の所にも行く。
「レン様、オウコモラ様の事で御相談が……」
「ああ。スパイという話だろう?」
あっさり。え?
「泳がせておけ。スパイされたところでなんの問題もない。それよりも我々は細かい内政が出来ない。今のうちにオウコモラから内政の事を聞き出しておいてくれ」
うーんと?
つまり、知ってて受け入れた?
「オウコモラも混乱していたぞ。しばらくスパイ活動は長引くだろう。その間に我々もオウコモラから内政の技術を盗む」
「……スパイされて困らない。……ですか?」
その言葉に頷くレン様。
「そもそもなんでこんなに上手く回ってるかなんて、シャオに軍が絶対的忠誠を誓っているからだ。だがその理由はシャオにも分からんだろう? だからスパイされるだけ時間の無駄だ。それよりもだ、シャオ。我等にとって最大の焦点はお主だ」
え?
「お主には失礼な事をした。詫びても詫びきれん。だがヤンと仲良くやってくれているようだ。引き続きヤンを支えてくれるか?」
「は! はい! この身に余る光栄です!」
というか、手ですけど。もう触れてしまいましたし。
「そうか。ヤンもお主にべったりだ。中々難しいと思うが、弟のような接し方というよりも、男性と女性のような扱い方をしてあげてくれ。ああ見えて積極的だぞ?」
はい。それはそう思います。
「ピヨ達とも相談してくれ。ヤンと仲良くな」
レン様は笑顔で、そう、久しぶりに見る笑顔をしてくれた。
積極的なヤン様。
今日も既に私のベッドに潜り込んでおられるのですが。ええっと……?
「……あ、あの? ヤン様?」
「……その。……シャオの布団。いい匂いだから……」
布団がもぞもぞ。
つまり、だ。
「……そうですね。私はヤン様の婚約者ですから」
隣に座りヤン様を抱きしめる。
「しゃおー♪」
嬉しそうに抱きつき返してくれるヤン様。
なお、股間部分は湿ってる。
「シャオ、僕頑張るからね!」
ヤン様はにこにこしながら、わたしの胸にうずまるようにして寝た。




