表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

南部の治世と父の陰謀

「リンアンとしては一刻も早く王朝をここで開いて頂きたいと強く願うものです」

 いつもの会議。

 わざわざ毎回遠くから街の代表者(領主さんもいれば、その代理もいる)が来ているのだが、今回から南東部の街からも来るようになりました。


 今いるショウサは南西部。遠い。

 なので発展している南東部に早く来てくれ&王朝開いてくれ要請。


 実は元々リンアンはミィンジャオ国の王都になる予定だったのだ。

 ただ、滅ぼした前の国の王都は縁起が悪いとのことで、北に王都を作ることになった。


 街の規模としては今でも北の王都よりも大きい。


 なんでこんなに大きな街を擁してあっさり負けたんだ。と言いたいのだが、仲間割れしてれば負けますな。

 んで、リンアンの人が「王朝をここにたてろ」と言ってるのは、王都とそれ以外では税金が違うからである。

 王都になれば特典いっぱい。でもそんな話してる場合なんでしょうか?


 滅びる、滅びないみたいな話してるのに。


「……」

 レン様はヤン様を見てる。

 発言しろ? ってことかな?

 でもヤン様は困った顔。


 うむ。口出して良いものだろうか?


 軍の方はリジンジョウさんは黙ってる。

 というか、なんか興味なさそう。

 ザンリはなんか机に絵を書いてる。なにしてるんだい? 君は?


 提案されてるのに誰も返答しない。

 これはマズいでしょ?

 見るとヤン様は困った顔で私を見てる。

 いやいや。見られましても。


 でも

「王朝を開くと言っても、そもそも滅んでません」

 なんとなく引っかかった方に答える。


「レン様は正当な後継者です。レン様が生きている以上、まだ滅んでいません」

 いや詭弁ですよ。

 王様殺されておいて「まだ王族残ってるから滅んでませーん」と言われてもみたいな。


 それでも王位継承権があったレン様が残っている以上建て前上は滅んでいないのである。


「……も、申し訳ありません!!! そ、そのようなつもりでは……」

 リンアンの領主さんが怯えたように謝る。


「その上で遷都は当然考えるべきです。臨時の都かどうか。名称はともかく。このショウサは天然の要塞ですが、都にはなり得ません」

 みんなうんうんと頷く。


「ですのでリンアンに遷都する。その事は問題ないかと……問題は」

 そう、問題はあるのである。


 レン様の問題。

 レン様の体調はずっと悪い。

 脚を砕かれ歩けなくなり、栄養不足かつ、寒い北方で薄い毛皮だけで過ごされてきた。


 今のショウサは温暖で薬草がふんだんにある。

 少しずつレン様の体調も回復してきた。


 でもリンアンでそれが出来るかどうか。

 レン様は出来ればしばらくショウサに養生してほしい。


 そうなるとヤン様だけが移動?

 いや、多分レン様は認めない。


 つまりだ。


「王の執務は安全を考えて引き続きショウサでとる。でも都はリンアンに遷都する」


 この形しかない。

 でもそれで納得いくのか? というのは不安だったのだが


「軍としては同意です。リンアンは既に一度賊に落ちている。安全とは言い切れません。なにしろ平地ですからね。一方でこのショウサは僅か1千で10万の包囲に耐えきった。王には引き続きこのショウサにいて頂きたいと願います」

 リジンジョウさん。

 いや、あれはあなた方が撃退したんであって、籠城戦やってませんよ?


「王がいれば狙われる。遷都は興味ないっすけど、王はこの少数でも守れるショウサにいて欲しいっす」

 ザンリ。


 なんで軍の人達は毎回私の助け船出してくれるのか


「リンアンとしては、遷都以上は望みません。また宮殿を整えるのに時間がかかると思えば当然の措置です」

「ショウサもぉぉ、いぞんありませぇぇん」

 ショウサの領主さん。


 という訳で遷都が決まりました。



 みんな帰ったあとお説教タイム。

「なぜ、あれが言えんのだ」

「……え、えっと……おにいさま、のことを、考えたら……遷都は……」


「シャオの発想が何故できぬ。敵は王を狙う。今はリンアンに移動すれば狙われやすくなるだけだ。ショウサならば少数で守りやすい。それは以前も話をしたぞ」


 ヤン様泣き顔。

 こんなお説教聞く私も辛い。

 やっぱり私は出過ぎた真似を……


「シャオは何度も『言わないんですか?』と見ていたろう? あれ以上沈黙すれば我等は能無しと疑われるところだった。シャオが言わねば私が言っていた。だがそれではダメなのだ」


「は、はい!」


 そんなお説教の終わり。

 私は気になることを解決しようと思い、リジンジョウさんに会いに行った。


 気になること。

「なんで私をそこまで守ろうとするのか」

 である。


 ヤン様の為に来た。

 と言ったが、どうもなんか違う気がするのだ。

 マトモなリジンジョウさんだが、ヤン様に対する敬意はあんまり感じない。


 レン様に至っては目も合わせない。


 なのになんでここまでしてくれるのか?

 それを聞きに来た。


 リジンジョウさんは、驚く様子もなく

「そうですね。南方は解放しました。話すにはいいタイミングです。お話しましょう。シャオ様のお父様、ライディラ殿から託されたお話しです」


 お父様。

 リョウンに行ってから消息が分からなくなっていたお父様。


「父は? 死んだのですか?」

 リョウンは滅んだ。当然父も死んだものだと思っていたが


「はい。それをお伝えします。リョウンの壊滅も、今の南方解放の策も、全てライディラ殿が描いたものです」


 …………? はい?


「ライディラ殿は西軍と順軍との和平をずっと模索されていました。元は農民反乱。国が正しくあれば従ってくれる。と信じていたのです。ですが、その試みは失敗しました。我等にも非はあったのでしょうが、それ以上にミィンジャオ国の王が問題でした。猜疑心が強く、賊を許す、受け入れると言うのが出来ない。しかし王族も不仲で王は孤立。なにをやっても、なにを言ってもうまくいかない政治にライディラ殿は絶望しつつも、最悪の中の最善手を討とうとしました。それが我等の長兄ハイセンの事です」

 一旦溜め息をつくリジンジョウさん。


「このままではハイセンは全てを皆殺しにしてしまうと危機感をおぼえました。それを止める為にリョウンに来た。ですが手遅れだったのです。既に虐殺は始まっていた。被害を少しでも少なくするよう、ライディラ殿はソンケワンをそそのかし、ハイセンを殺させます」


 はい?

 父ちゃん、あんたなにやってんの?


「しかしもう手遅れ。なのですが、ライディラ殿はこの最悪の状況を利用します。生き残った住民を強制的にトハンに移動させたのです」

 え?


「いくら我々でも50万いるリョウンの民皆殺しは不可能です。それでも殺しまくりましたが、殆どの民はトハンに逃げたのです」

 待って、トハンって。


「トハンって。山国の蛮族のことです?」

 南西より更に西の山の国。国とも言えないと聞いていたのだが


「はい。リョウンよりも辛い生活はしてるはずですが、リョウンには殆ど戻らないことから分かるように、それぐらい我々の殺戮は恐ろしかったのです。そしてなんでそんなことをしたのか。理由はリョウンを空白地にすることによって、清がリョウンを通って攻めることが不可能になり、こちらはリョウンを守る必要が無くなるからです。ここまでの我々の進撃は、広大なリョウン地方を守らなくていいから出来たのです」

 確かに。

 リョウンには誰もおらず食糧も調達出来ないから、満賊も攻めてこれないと聞いた。


「そして、ライディラ殿について。ライディラ殿は、守りきれなかった王と、民に詫び、トハンへ皆を移動させたあと自殺されました」


 自殺。


「……なにも、自殺をしなくとも……そもそも悪いと思ったら責任とりなさいな……」

 トハンに移動した人達のケアとかさぁ。父ちゃん、あんたなにやってんのよ。


「そう。それが本題になります。シャオ様。ライディラ殿は自殺をされた。その自殺には意味があるのです。それこそが我等がシャオ様に忠誠を誓う意味です。それは」


 リジンジョウさんから出た言葉。

 それを聞いて


「はぁぁぁぁあああああっっっ!!!???????」

 私は絶叫した。

父親がリジンジョウになにを言い残し自殺したかの描写は物語の最後の方で明かされます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ