8.痕跡
ジャニィと王子は半日を掛けて焼け跡を調べて回った。
途中何度か王子が根を上げていたが、ジャニィは徹底的に調べて回った。
だが、どんなに調べても人骨らしいものは見つからなかった。
燃え尽きて灰になってしまっている可能性もあったが、ジャニィには、そうは思えなかった。
「よしっ! これくらいにするか」
ジャニィが王子に声を掛けると、煤で顔を真っ黒にした王子が安堵の表情を見せた。
「そうしよう! もう疲れたよ、ジャニィ」
王子は、その場に座り込んでしまった。
「ねえ、これだけ探しても見つからないってことは、やっぱ、シンクフォイルは生きてるんだよね?」
王子が座ったままの体制でジャニィに質問した。
「だろうな。もしくは、骨まで残らず灰になってるかだな」
ジャニィがいたずらっぽく言うと、王子がまた不満をもらした。
「そんな、怖いこと言わないでよー、で、どうすんの? これから?」
ジャニィが辺りを見回すと、西の空に微かな夕焼けが見えた。
「そうだな、今日はもう晩いから、さっきの小屋で一泊するか」
ジャニィは座り込む王子に手を差し出した。
王子はジャニィの手を取り、ジャニィに引っ張ってもらいながら立ち上がった。
「しかし、真っ黒だな、お前」
ジャニィが王子の顔を指摘すると、王子もジャニィの顔が真っ黒だ、と言い返した。
そうして、二人はトボトボと小屋へ向って歩いて行った。
「そいえば、小屋の横に井戸があったよね?」
王子は、そう言うと、真っ先に走り出した。
「ジャニィ、僕が先に使うからね!」
ジャニィは無邪気に走り出した王子の背中を見ていた。
一通り煤を払い、小屋に戻ると空腹が襲ってきた。
ジャニィは馬車の中に食料があることを思い出し、それを王子に取りに行かせた。
その間、ジャニィは暖炉に薪をくべて、火を起こしておいた。
冬の寒さが暖炉の炎で緩和され、小屋は居心地の良い空間になっていた。
「ねえ! ジャニィ! なんで、あんなに食料があるの?」
小屋に戻ると、開口一番に王子が言った。
ジャニィは、任務のことを王子に話してしまうか迷っていたが、この状況なら構わないだろうと思った。