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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第九章 年輪の仮面(真歴一四九八年二月)
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10.イソダムの所業

 真夜中になり、夜気を纏う荒れ地の風が一層冷たく感じられた。

 マスケスはトボトボと邸宅の別邸に続く道を歩いていた。

 そして、小さな幻導力灯で手元の本を照らしながら、器用にそのページを捲っていた。


 オークの司祭の家に生まれたマスケスは、小さな頃からこの書物を愛読していた。

 両親にお願いして買ってもらった記憶もないため、もともと家に置いてあった書物なのだろう。

 最初は単なる読み物として、多彩な幻導力の活用方法に胸を躍らせていたが、ある時からは、それが、マスケスの人生をかけての研究対象となっていた。


 『イソダムの所業』、それはボアム半島では広く知られる歴史書であり、また研究日誌でもあった。

 大幻導師イソダムとその弟子たちにより書き記された膨大な記録が、一冊の書物としてまとめ上げられている。


 それは、些末な幻導力の実験や、もしくは機械的な仕組みと幻導力を組み合わせた装置の開発日誌、さらには幻導力と時間との関連、はたまた、幻導力と人の死に対する考察など、その内容は多岐に渡っていた。そしてこの書物の中で一番有名なエピソードは、誰もが知る『オーロラのクレバス』である。しかし、マスケスが注目したのはそれらの記載ではなく、イソダムの弟子の一人が描いたとされる一枚のスケッチであった。


 スケッチは、どこかの室内バルコニーのような場所で、一人の男が盾を構えた姿で立ち、そしてその男の盾を中心に、幾重にも重なる半円が描かれていた。

 その半円の中には老齢の貴族と思われる人物が横たわり。それを抱き抱える形でベレー帽の女がしゃがみ込んでいる。そして、このベレー帽の女は右手にレインボーガンと思しきものを握っていた。

 さらに、そのスケッチの注釈には、『市庁舎の爆発』と書かれていた。


「やはり、これは現在のオボステムの市庁舎ですな。そして、この男が持っているもの……、間違いなく、シュラバリー家に伝わる『白虹の盾』ですな」


 マスケスは、シンクフォイルの変貌ぶりから、この『イソダムの所業』に書かれている場面が、現在の、いや、もしくはこれから先の未来で起こるシンクフォイルの姿だと確信していた。なぜなら、この『白虹の盾』はシュラバリーの呪い同様、シュラバリー家の人間にしか扱えないものであったからである。

 これは、王宮に居た頃のシンクフォイルから何度か聞かされていたし、現王エレファンからも似たような話を聞いたことがあった。

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