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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第七章 印刻の鎧(真歴九九九年一月)
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9.幼子

 王子は急いでイソダムの元に駆け寄った。

「イソダム!」王子が倒れているイソダムに声を掛けるが返事がない。

 死んでいるのか? 王子は不安になり、イソダムの手を取り脈を確認した。

 どうやら死んではいないようだ。意識を失っているだけだな。


 王子がほっと胸を撫で下すと、突然背後から声が聞こえた。


「ここどこ? さむーい」


 子供のような口調だが、声色はジェニーだ。


「ジェニー!」

 王子が振り返ると、そこには上半身だけを起こして、目をパチクリさせているジェニーの姿があった。


「ジェニー、無事か? 大丈夫なのか?」

 王子がそう言ってジェニーに近づくと、突然ジェニーが悲鳴をあげた。

「キャー、何? あなた誰?」ジェニーは怯える表情で、後ずさって行く。

 王子はあっけにとられジェニーを見つめていた。


「うう、どうやら成功したみたいですね」後ろでイソダムの声が聞こえる。

「イソダム、大丈夫か? しかし、どう言うことだ? ジェニーはどうなっている?」

 王子がイソダムにそう聞いている間もジェニーは怯えきった表情でお王子たちを見ている。

「ええ、私は大丈夫です。しかし、ジェニーさんは混乱状態なのかも知れませんね。どれ、私が見てみましょう」

 そう言ってイソダムがジェニーに近づくと、ジェニーはまた悲鳴をあげた。

「大丈夫ですよ」

 と優しい口調でイソダムが近づいても、ジェニーは叫び続け、その辺の雪を手当たり次第に掴むと、それをイソダムに向かって投げ続けた。


「うーん、どうやら少し戻り過ぎたみたいですね」

 イソダムはそう言いながら振り返り、王子の元へ歩み寄った。

「どういうことだ?」王子は泣き叫ぶジェニーを見ながらイソダムに聞いた。

「本質は無事に戻ったみたいですが、少し戻り過ぎたみたいです。身体はあの状態ですが、中身は一〇歳くらいの子供ってとこでしょうか?」イソダムも少し困惑している。

「そんなことがあるのか?」

「どうでしょう? 私にも初めての実験でしたからね。でもまあ成功と言って良いでしょう。現に生き返っていますよ。素晴らしい、の一言ですよ」

 イソダムは学者の顔に戻りつつそう言った。


「ふざけるな!」

 王子はなぜかだかやり場のない怒りが込み上げてきた。

「あんなになってしまって、ジェニーはどうなる!」

 王子はイソダムの胸ぐらを掴んでいた。

「どうなるも何も、死んでいるよりは良いでしょう」

 イソダムはそう言って、王子の手をはらいのけた。


「ひとまず家へ戻りましょう。ここにいても埒があきません」

 イソダムは傍に落ちていた杖を拾うと、怯えるジェニーに再び近寄って行った。

 そしてひと言だけ何かを囁いて杖を振ると、コトンと糸が切れた人形のようにジェニーは崩れ落ちた。

「大丈夫ですよ。少し眠ってもらいました」

 王子が何かを言う前にイソダムがそう言って、ジェニーを担ぎ上げてソリへ乗せた。

「行きましょう。王子」

 王子は仕方なく、イソダムの後を追った。

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