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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第六章 王宮書記官の旅3(真歴一四九九年五月)
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5.姉さん

 港の周辺は被害もなく、建物はしっかりしていたが、やはりここも人でごった返していた。

 船で街を離れる人も多いのか、桟橋には人の列ができていた。


「船で逃げるったって、どこに行くんだ?」

 ジャニィはそんな事を口走りながら、オボステムタイムズの扉を開けた。


「ジェニー! 良かった。無事だったんだな!」

 そう言って白髪のオコイ人が飛びついてきた。

「うわっ、ちょっと待て!」

 ジャニィはいきなりの出来事にたじろぎ、そのオコイ人を突き飛ばした。


「おい、俺はジェニーじゃないぞ。よく見ろ!」

 ジャニィはペンを拾いながら言った。

 突き飛ばされ、尻もちをついたオコイ人は、目をパチパチさせて、ジャニィの顔を見つめている。

「ジェニーは俺の姉だ。姉さんを知ってるのか?」

 ジャニィは、今だ無言で尻もちをついているオコイ人に向かって言った。

 何かに気づいたのか、オコイ人は、ゆっくりと立ち上がって、もう一度まじまじとジャニィの顔を眺めた。


「いやあ、それにしても似ているな。そうか……」

 オコイ人はゆっくりとそう言って続けた。

「ジェニーから聞いているよ。双子の弟がいるって。俺はガウスだ。ジェニーの同僚だな」

 そう言ってガウスは握手を求めてきた。


 ジャニィは握手をしながら、ガウスに尋ねた。

「姉さんは無事なのか? どこにいる?」

「それが、分からない。俺もさっきここに戻ってきたばかりだ。それにしてもいったい何が起こっているんだ?」

「それはこっちが聞きたいよ。爆発があったとき、どこにいたの?」

 ジャニィは辺りを見まわしながら尋ねた。

「俺は……、牢屋だ。市庁舎の牢屋だな」

「本当か? 市庁舎にいたのか? それにしては、よくあの爆発で死ななかったな」

 ジャニィはびっくりしている。

「ああ、牢屋が地下にあって助かった」

「しかしなんで牢屋なんかにいたんだ?」ジャニィが質問した。

「まあ、それがな、昨日ジェニーと一緒に市庁舎に取材に行ったんだ。その帰りにジェニーとはぐれちまってな。運悪くユガレスの兵に捕まっちまった」

「取材? そうか、市庁舎に侵入したってのは、お前らなのか?」ジャニィは手帳をめくる。

「まあ、言い方によっちゃ、そうだな」ガウスは少し申し訳なさそうだ。

「何やってるんだ? それで、姉さんは?」

「ジェニーとはそれっきりだ。ここで落ち合う手筈だったんだが、俺が捕まっちまってたからな」

 ガウスはボリボリと頭を掻いている。

「そうか、じゃあ家の方か?」

「いや、どうかな? さっき上でジェニーの机を調べたらこんなものがあった」

 そう言ってガウスは何かの紙切れを手渡してきた。


「それ、ヴォーアムの紋章だろう?」ガウスが続ける。

「ジェニーが描いたみたいなんだが、裏にも王子がどうたらこうたらと記事になっててよ」

 ジャニィはさっと記事に目を通した。

「そうらしいな。どうやら王子と姉さんがここにいたみたいだな」

「だろう! やっぱりそうか」

 ガウスは何か思い当たる事があるみたいだ。

「じゃあ、きっとジェニーは今も王子と一緒だろう。それなら安心だ」

 ガウスはそう言ってちょっとホッとした顔つきになった。が、逆にジャニィの顔からは血の気が引いた。


「どうした?」ガウスが尋ねる。

「王子と一緒? それはまずいぞ」ジャニィが小さな声で言った。

「ガウス、市庁舎にはどうやって侵入する? まさか下水道か?」

「そうだよ。なんで知ってるんだ?」ガウスが疑問を口にする。

「王子とジェニーが爆発前に下水道にいたって証言があるんだよ」

「そんな! 確かか?」ガウスも青ざめている。

「おい、じゃあなんだ? ジェニーがヴォーアムの王子と市庁舎を爆破したのか? おい? ヴォーアムにそんな計画があったのか? おい! どうなんだ? お前もヴォーアムなんだろ? おい、聞いてるか? ジャニィ! こんなテロ紛いの事をジェニーにやらせたのか?」

 ガウスが喚き散らしているがジャニィの耳には届かなかった。


「姉さん……、なんで王子なんかと?」

 ジャニィの心に不安の波が押し寄せてきた。

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