13.時計塔
市庁舎は中央の大ホールを中心に東西に分かれていた。
東側は議事堂や会議室などがある政治向けの施設になっており、反対の西側は市民に向けた役所の機能と時計塔の基部になっていた。
王子達は、その西側の時計塔の真下の小部屋に出た。
その小部屋は倉庫として使用されているのか、木箱や樽が乱雑に置かれていた。
今入ってきた扉の正面にも扉があり、きっと西棟の部屋へと続く扉だろうが、今は鍵がかかっていて開かなかった。また部屋の中央には、螺旋階段があり時計塔の機械部へと登れるようになっていた。
「どうやら上に上がるしかないみたいね」
ジェニーが鍵のかかった扉を諦めて言った。
「時計塔を上ってもしかたないだろう。それより扉を開ける方法を考えた方が良くないか?」
王子は辺りを見回して、散乱するガラクタの中に何か扉を開ける道具がないか探していた。
「そんなことないわよ、上の階も西棟につながっているはずよ。ここでもたもたしているよりかは上を目指した方が良いはずよ」
ジェニーは螺旋階段を登り始めた。
「待ってくれ」王子はジェニーの後を追った。
二階も同様に部屋の中はガラクタが散乱していた。部屋の東側に扉があったが、ここも鍵がかかっていた。
「ダメね」
いち早く扉をチェックしたジェニーが早くも階段を登り三階を目指していた。
予想外に三階の扉には鍵がかかっていなかった。ドアノブを回したジェニー本人が一番びっくりしたのか惚けた顔をしている。
「あっ、開いたわ」
「気を付けろ。中に誰かいるか?」
王子はジェニーの肩に手をかけ、扉を開けるのを止めさせた。
「少しだけ開けて確認してみろ」
王子にそう言われると、ジェニーはそっと扉を開け、中を覗いてみたが、人影は無さそうだった。
「大丈夫そうよ」
王子とジェニーが扉を開けて西棟に入ると、少し先の曲がり角に人の影が映った。
「まずいな。巡回の兵がいるみたいだぞ! 隠れるぞ!」
王子はそう言ってジェニーを引っ張りながら、一番近くにあった右側の扉を開け部屋の中に隠れた。