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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第五章 白虹の盾(真歴一四九九年五月)
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12.光と幻争

 鉄格子には、ちょうど人が一人通り抜けられるくらいの隙間があった。

 自然にできたものではなさそうだ。きっとジェニー達の仕業だろう。

 その隙間をジェニーがするすると通り抜けた。

 王子も続いて狭い隙間を通り抜けた。


 下水道は思った以上に暗かった。

 中に入ると、自分の手も見えないくらいの闇が広がっていた。


「ジェニー、何も見えないぞ。こんなんで……」

 と言っている間に辺りが仄かに明るくなった。

「小型のホロランタンよ。はい王子の分」

 と言って、ジェニーは小さなガラス玉のようなものを手渡してきた。

 王子はガラス玉を受け取ったが、どうしていいかわからない。

「王子のくせに点けられないの?」ジェニーは少し呆れているようだ。

「幻導力か? 少しは操れるが光を灯したことはないな」

「簡単よ。光ってると思えばいいだけよ」


 王子はガラス玉に集中した。


「難しいな」王子のガラス玉には光が灯らない。

「考えるからよ。そこにあると思えばあるのよ。誰かが言ってたでしょ? お・も・う・の」

 ジェニーが最後の思うのに合わせて自分のホロランタンを点滅させている。


 ――


「こうか?」王子の周囲が微かに明るくなる。


「そうよ、やったわね。センスが良いのかしら?」ジェニーが褒める。

「王子だからな」王子は照れ隠しに言った。

「そうかもね。先を急ぎましょう」

 ジェニーは少しだけ笑顔になると先を急いだ。


 王子達は下水道をさまよった。

 何度が下水道に巣食うネズミの群れに出会ったが、その度に王子は剣でなぎ払い、ジェニーはレインボーガンで撃ち抜いた。


「ここよ」

 ジェニーはそう言って梯子を登り始めた。

 王子はジェニーに続いて梯子を登り、市庁舎の中庭に出た。


 王子たちが中庭に出ると、裏門の辺りに人影が見えた。


 王子たちは、裏門の人影が気になり、慎重に近づいて行った。

「ユガレスの番兵かしら?」耳元でジェニーが囁く。

「ユガレスの番兵は三叉の槍だろ? あいつは何も持ってないぞ」

 王子がそう言うと、人影の手元が少しだけ虹色に光った。

 そして、ヒュンと耳元を何かがかすめると、後ろで倒れる音が聞こえた。

 王子が振り返ると、ジェニーが額に矢を突き立てて倒れていた。

 狙撃用の矢か? 王子がそう思った瞬間、頭に衝撃が走り、世界が闇で閉ざされた。


 ――


「王子! 王子! なにボーっとしてるのよ!」

 ジェニーが王子の腕を掴んでいる。


「ジェニー? 大丈夫なのか?」

「はぁ? 大丈夫って何よ? どうしたの? 急に?」

「いや、今、矢で打ち抜かれただろ?」

「矢で? 何を言ってるのよ! 早く、見つかる前に隠れましょう」

 ジェニーは市庁舎の扉を開けて中に入っていった。

 王子は混乱する頭でジェニーに続いた。

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