表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第四章 王宮書記官の旅2(真歴一四九七年一二月)
21/87

2.父

 そんな子供の夢を真に受けたのか、ジャニィが学校の卒業の年になると、父はヴォーアム王国の騎士団の話を持ってきた。

 オボステム市に住むジャニィにとって、市に騎士団がないと分かったのは、もうすいぶん昔の話である。さすがに一七歳にもなれば、騎士団なんてものは無理な話で、それに近いものなら、市の警備隊が、せいぜいだろうと分かっていた。

 しかし、ジャニィは警備隊などになるつもりは、まったくなかった。

 この頃のジャニィの興味はもっぱら絵画で、市の中心をゆったりと流れるボアム川を、毎朝スケッチすることが、なによりの楽しみだった。

 時には家族の肖像画を描いたり、時にはフルーツの静物画を描いたり、時には時計塔の風景画を描いたりもしていた。

 華やかなオボステム市には、絵描きの心をくすぐるもので溢れていた。


 そんな、ある日。

「騎士団? ヴォーアムの?」

 ジャニィが日課のスケッチを終え、帰宅したときだった。

「そうだぞ! 国の騎士団だ!」

 三か月ぶりにトロザー島から戻ってきた父が嬉しそうにはしゃいでいた。

「国に仕える立派な仕事なんて、なかなかないぞ!」

「そうだけど……」

「先月な、トロザー島にエレファン王がいらしてな。なんでも久々に海が見たかったとかで……、そこで、直接お話しさせて頂いたんだよ。そしたらな、昔の事を覚えてらして、おまえの事を話したら、すんなり了承して頂けたんだ」

 父は有無を言わさず続けた。

「だからな、来年の四月からはヴォーアムだ! あそこは良いどころだぞ。ここより南だから暖かいぞ、なにより、山や森や海が良い! あそこの自然はすばらしいんだから!」


 その後も父は、ヴォーアムの飯が旨いだとか、女の子が可愛いだとか、スケッチには事欠かないとか、あらゆる手段でヴォーアム行きを促した。

 時には酷い言い争いになったこともあったが、最終的にはいつも父が勝った。


 そんな折、父が急に死んだ。


 なんでも、酷い嵐の夜、トロザー島に大型の船が突っ込み、灯台はいとも簡単にへし折れ、そのまま海に沈んだそうだ。

 父は、その夜もいつものように、灯台の頂上で光を灯していたらしい。

 事故後、ヴォーアム軍は騎士団も含め、総出で灯台守たちを捜索したが、誰一人として遺体を発見することはできなかった。

 これは後で知った話だが、この大型船はヴォーアムの船を装った海賊船だったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ