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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
おまけ 沈没する車輪 真暦1500年1月~真暦1505年9月
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4.そして

「こっ、これは……」

 男は立ち上がり、呆然と辺りを見回していた。

「シンクフォイル殿、大丈夫ですかな?」

 マスケスは、ゆっくりと近づいて行った。

「衛兵たちには、あなたの幻を見せて、同士討ちにさせましたぞ」

「同士討ち?」

 シンクフォイルは、床に転がる衛兵たちを見下ろしていた。

「そうですぞ、ですが、意識を失っているだけですな。ささ、時間がありませんぞ」

「時間? いったい、どういうことです? 先生! 説明してください!」

「うむ、そうですな。しかし、彼らが目覚めてしまったら、元も子もありませんぞ」

「ですが!」シンクフォイルは、声を荒げていた。

「お気持ちは分かりますぞ。だが、まずは、場所を変えて頂きたいですな」

 そう言うと、マスケスは、足早に扉の方へ歩き出した。


「ここまで来れば、大丈夫ですかな」

 丘の上に続く坂道を足早に歩いてきたせいか、マスケスは息を整えながら呟いた。

「先生、ここは?」

 意味も分からず後をついて来たシンクフォイルは、マスケスの傍らに立ち、崖下を見下ろしていた。

「ふむ、あの教会が見えますかな?」

「ええ、小さな教会ですが、美しいですね」

 シンクフォイルが、ありきたりな感想を述べた。

「そうでしょうな。先日亡くなった神父も、ここからの見晴らしを、気に入っていましたからな」

「神父様が? いや、先生! いったい、なんのお話ですか? 私に何を?」

「そうですな。しかし、まずは、最後までお聞きいただきたいですな」

 マスケスは、強引にシンクフォイルを制して話を続けた。

「実は遺言でしてな。亡くなった神父が、自分が死んだら、この見晴らしの良い丘の上に葬ってほしい、と常々おっしゃっていましてな」

 そこで、マスケスは後ろを振り向いた。

「叶えてやりたいと思いましてな。もう、あとは、土を被せるだけですぞ、しかし……しかしですぞ」

「しかし? なんです?」シンクフォイルが不安な顔つきで、相槌を打った。

「最後に、シンクフォイル殿に、お願いがあるのですぞ」

「私に?」

「そうですぞ、お持ちの『王家の紋章』を貸して頂きたいと思いましてな」

「『王家の紋章』ですか? まさか、そんなもの、私が持っているとでも?」

 シンクフォイルは、半ば呆れているのか、半笑いのような表情になっていた。

「やはりですな……」

 そこで、マスケスは、一度俯くと、シンクフォイルの正面に立った。

「シンクフォイル殿、どこまで、覚えていますかな?」

「どこまで? いったい、何をです?」

「あなたが『王子』だったことを、ですかな?」

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