表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
エピローグ 魔王罪として処刑する 真暦1505年9月
104/110

1.魔王罪として処刑する

 ジャニィは、左右に揺れる美しい銀髪を見ながら歩いていた。

 村から続く細道にも街路灯のように篝火が燃えている。

「なあ、ルリリカさん。昼間だってのに、なんで? この村は篝火を焚いているのかい?」

 ルリリカと呼ばれた女性は、勢いよく振り向いた。

「うん? なんでですかね? 昔おばあちゃんから聞いた話ですと、白夜の風習とか言ってましたけど……そういえば、理由までは聞いてませんでしたね」

 ルリリカは、足を止めると、人差し指を口元に当て、考える仕草をした。

 眉毛の上で切り揃えた前髪を見上げるように、灰色の瞳は斜め上に移動していた。

「いや、そんなに考えなくていいよ」

 ジャニィは、笑顔で答えると、細道の先を見据えた。

「なあ、それより、あとどれくらいだ? まだ遠いのか?」

 ルリリカは、人差し指を一度口元から離すと、その指をこめかみに当てた。

「そうですね……あと少しですよ。ほら、あそこのカーブを少し行ったところです」

 ルリリカは、そう言うと、こめかみに当てていた指をカーブの先に向けた。

 村はずれから続く細道は、緩やかに左にカーブし、丘の上へと続いていた。


 ――


「小さいね……」

 丘の上に辿り着いたとき、ジャニィの後ろにいた王子がポツリと呟いた。

 ジャニィの目の前には、小さな墓石があった。

 誰も手入れをしていないためか、辺りには雑草が生い茂り、墓石までも蝕んでいた。

 ジャニィは、屈み込むと、墓石の周りの草をむしり取った。


「ヴォーアムの王子。安らかに……か……」


 特権階級による権力犯罪としての魔王罪。

 そして、それによる処刑……。

 ジャニィたちが、ここまで辿り着くのに5年の歳月が過ぎていた。

 あの日、オボステムの市庁舎が吹き飛び、その後、ヴォーアムの王子が首謀者として処刑された。

 それは、オークによる半島統一の足掛かりであり、今や連合王国の宰相となったマスケスの陰謀そのものであった。

 王を失ったユガレスは、即座に吸収された。

 そして、魔王罪として王子を失い、流行り病で国民の半数が死んだヴォーアムもまた、1年と経たずにオークの手に落ちた。

 こうして半島は統一され、国号がユガレス吸収時の北ボアム連合王国からボアム半島連合王国に変わった。

 そして、爆心地であったオボステム市庁舎の跡地に新都の建設が始まった。

 人々はオークの技術力と共に、新しい時代の幕開けに心を躍らせていた。

 しかし、その陰で命を失ったシンクフォイルのことなど誰一人として知らない。

 そう、ジャニィや王子たち以外は。


「よし、シンクフォイルを連れて帰るぞ」

 ジャニィは、立ち上がると、持っていたスコップを王子の足元に投げた。

「そうだね」

 王子はスコップを拾うと、躊躇うことなく墓石の前に突き刺した。

 ポンコツ王子のオーちゃんと呼ばれていた面影はあるものの、今やたくましい青年となった王子は、あっという間に、墓を掘り返した。

 そして、無残にも骸となったシンクフォイルの胸元から、王家の紋章を取り出した。


「ジャニィ、あったよ! やっぱり、シンクフォイルが持ってたんだ! うん、『真王の証』も刻まれてないよ」

「そうか……シンクフォイルに感謝しないとだな。これで、お前が正式なヴォーアムの王になれば、マスケスの懐にも入り込めるな!」

「うん、もう僕は昔の僕じゃないんだ。ジャナル・V・ヴォーアムの名において、マスケスを裁いてやる」

 ジャニィは、王家の紋章を抱きしめている王子を見つめていた。


「そうだな、俺たちの手でマスケスを、魔王罪として処刑してやろうぜ!」


 決意を固めるジャニィと王子の姿を、ルリリカは不思議そうに眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ