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儀式の方法は至極簡単なものである。
まず協会の方に名を呼ばれ、部屋へ導かれて配置された水晶玉に手を翳す。
その水晶玉が放つ光によって、自らの持つ魔力のLvを知ることになる。
Lvは1~5まであり、1~3は国民の八割を占めると言う。
残り二割はLv4。精霊の加護持ち。
そして、稀に、Lv5の精霊の恩恵を授かるものが居るが、ほんとーっに稀なのだ。
まあ、今現在に六人現れているのだが…
何度も言う。
Lv5は滅多に現れない。六人も現れる時点で異常事態であるのだ。もう現れないだろうと言われていた。自身も精々勝手がいいLv4だったらなと思っていた。だと言うのに。
これは、どういう事なのだろう。
協会の方に、まず名を呼ばれたのはクリスティナだった。
じいっと此方を見つめてくるシーアに微笑んで、案内された部屋に入った。
説明を受けた通りに何もない室内に、ど真ん中に置かれた水晶玉。
側に控えていた教祖様に促されて、逸る心臓を落ち着かせてクリスティナは水晶玉に手を翳した。
瞬間、水晶玉が強い光を放ったのだ。
目を開くには眩しすぎる程の強い光。
淡く、美しい水縹色の優しい光。
それが落ち着くと、クリスティナは呆然と翳していた手を退けた。
何だかふわふわしていて、不思議な心地だった。
まるで自分が自分ではないような…
その時、教祖様が恭しく膝をつき、頭を垂れて言葉を発した。
「よくぞお越し下さいました。我が国の者を選んでいただき、感謝致します。僭越ながら、あなた様の名をお聞かせくださいませ」
名?
疑問に思うも、私の口は、勝手に動いていた。
「"エナ"」
ーーマリエナーー
「クリスティナ=エナ=カインズロッド」
教祖様は、それ以降口を開かず、しばらく頭を伏せて畏まっていた。
私は動けなかった。
何となく、分かる。分かってしまった。
私は精霊の恩恵を受けたのだ。
つまり、愛し子となった。
私に恩恵を与えてくれたのは【守】の精霊
マリエナ。
恐らくその真名は私にしか解らない。
まさか、私が。
「クリスティナ様、おめでとうございます」
「教祖様」
「貴女の行く末に、幸あらんことをーー…」
クリスティナ=エナ=カインズロッド
こうして私は、七人目の愛し子となった。
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