精霊の恩恵
シンシアとの出会いから早いことにもう二年。
私とシンシアは七歳になった。
この世界は七つを迎えるとある節目を迎える。まず前提として、この世界には魔法が存在しているのだ。
そして魔法を使うに当たって、絶対条件は精霊との相性である。
その相性や恩恵を受けるための儀式を七つになる子供は協会で受けるのだ。
この世界に存在する精霊は、全部で11の属性を持っている。
火、水、風、木、土、雷、氷、光、闇…そして、生と守。
生と守に関しては、文献や伝説で語られる夢物語の様なもので、手にした人間と言うのも片手で収まりほど。そして最後にその存在が確認されたのは百年近く前だと言う。
長くなったが、この世界で魔法を使うには精霊の恩恵を受けなければならない。
その強さは1~5まであり、今までLv4「加護持ち」はほどほどに居るが、Lv5「愛し子」はここ数百年居なかったと聞く。
しかし二年前、私達の誕生日パーティーの後に行われた儀式で愛し子が六人現れた為、この国は勿論他国でも大騒ぎになった。
同時に愛し子が六人も現れたことは、国が出来て以来初めての、異例のことだったのだ
「ティナ?準備は出来た?」
「あっはい。シータお兄様」
「ふふ、もう七つか…早いね」
「ありがとうございます!」
ニコニコ笑って、兄にぎゅうっと抱きついた。
淑女としてはいけない事だが、今日は多めに見て欲しい。
シータお兄様
他でもない。
二年前現れた愛し子の一人なのだ。
精霊にはそれぞれ名前があり、愛し子は恩恵を受けた精霊の名の一部を、自身の名に組み込む事が許される。
シータお兄様に恩恵を与えたのは【氷】の精霊
シダルタ=シル=カインズロッド
今のお兄様の正式な名だ。
「クリスティナ、シダルタ」
「父上」
「お父様…」
「迎えが来たようだ。準備はいいかい?」
今年七つになる子供の屋敷に、王宮からの使者が迎えに来る。
貴族から平民まで集めるのが大変そうである
「…大丈夫かい?やはり、私もついていった方が…」
「父上、同伴は認められていませんよ」
「解ってはいるが…いるのだが…!」
「ふふっお父様、心配は無用ですわ。シーアも居るのですから」
そう、この儀式には同い年のシンシアも一緒なのだ。何も不安に思うことはない。
儀式が終わって初めて魔法を使えるようになる。
とても楽しみだ。
因みにシンシアの兄、ルシードも愛し子であり、"ナギ"と言う名を戴いているそうだ。
「行こう。ティナ」
「はい」
優しい両親と兄に見送られ、乗り込んだ馬車にはすでに見知らぬ貴族の子供が数人と、シンシアが乗っていた。
挨拶を交わし、席に着くと馬車は協会に向かって進み始めたーー…
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