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1ざまぁGET!

作者: 夏野 千尋

二時間クオリティです。さらに作者のリハビリ作品です。よろしければどうぞ

異世界転生か、転移にするか迷ったので、両方入れました




 はい!どーも!『愛は月影に揺れて』っていうわりとベタな乙女ゲームのヒロインでーす!

 え?転生者?

 残念!転生ではないんだなー。確かに原作知識ありで、乙女ゲー世界にいるっていうのは間違ってはないんだけど……どっちかっていうと、出向?出張?


 まあ、そこは置いておいて、現在の状況行ってみましょー!


「アイリーン、君にはもううんざりだ」


 嫌悪と軽蔑でぬりかためて、幾ばくかの正義感でコーティングした声色が私に向けられた。ここは謁見の間。国王は玉座から私たちを傍観し、玉座側に数人の男性と、一人の女性。男性は女性を守るように。扉側には私一人がたたずんでいた。


 紹介しよう!彼らはこの国の希望の星!王太子と腹違いの王子、宰相の息子と次期騎士団長、流行を生む美貌の伯爵に、最後はなんと、社交界の華、我らが侯爵令嬢である!


 そう。もうお分かりだろう。皆さんお待ちかねのざまぁタイムである。


 ざまぁーーーそれは高邁なる美学に包まれた、謎多き概念。ざまぁみろとかからきてるのかな?最近の人間は省略しすぎじゃないかと思う。マ?ってなに?最初わかんなすぎてジェネレーションギャップを感じた。音声にすると、マ(カットアウト+間)?って感じである。フルでいうのと時間は変わんないんじゃないかな?おっと、思考が脱線した。


 とにかく人気のあるざまぁ。これの必要条件を考えてほしい。

1ざまぁする側(主人公/ヒロイン)

2される側(悪役令嬢)

3ざまあする側につく付属物(イケメンとかされる側が求めてやまないもの)


 かつてはざまぁされるのは悪役令嬢であったが、転生が流行りだしてから立場が逆転している。悪役令嬢はヒロインだし、ヒロインは悪役令嬢である。


 大抵悪役令嬢や付属物のイケメンは、社会的立場や財力において、大いなるメリットが存在する。しかしヒロインはどうだろうか。


 プレイヤーの共感を得るためか、平民もしくは男爵子爵。見た目だって平凡なのがデフォルトだ。まあ、解釈により、めちゃくちゃ地味可愛いことが多いが。

 こんな世界線において、ざまぁされるヒロイン、されなくてもヒロインポジの悪役令嬢よりヒロインになりたいと思う人はいるだろうか………推して図るべきである。


 結果、悪役令嬢の需要と、ヒロインの供給が釣り合わなくなった。ちなみにそれまでは、天国の国営事業が行っていた。


 そこで!あなたのざまぁを応援する、(株)天界転生斡旋会社が発足したのである!


 というわけで、私たちの主な仕事は、女性向けのざまぁされるヒロインか、男性向けの、ギルドとかで主人公に絡んで即倒される雑魚キャラである。


 今回は私の初仕事!滅多にないテンプレートざまぁなので、新人の私に任されたのである。


 よーし!張り切っていこう!!


 私はアイリーン。男爵令嬢で、この春まで平民として暮らしていた。男爵の正妻が亡くなったことで、元メイドとの子供である私が貴族の仲間入りしたわけである。

 そこからが学園乙女ゲームの醍醐味である。


 平民らしい無邪気さで男性と親しくなり、結ばれ、仲良くなった攻略対象と共に、悪役令嬢や、その親である黒幕を倒す、そんなストーリーであるが、転生ヒロインはひと味違う!平民らしい無邪気を装った媚態で男性を誘うものの相手にされず、誘惑しようにも顔は良いが貴族会の常識と胸がない。狙うのは高貴なる方々過ぎて、誰も落ちない。相手にされない残念系ヒロインである。

 他にもお花畑系とか、計略系とか、いろいろあるが、初仕事であるため、やや難易度の低い残念系が採用された。


「君がやったことはわかっている。フェネルメシアに罪を着せ、自分が虐められたと嘘をついたな」


 王太子が口火を切った。私は涙目で怯えた不利をして、精一杯媚びる。


「な、なんのことですか……?私、嘘なんてついてません!ほんとに、階段から突き落とされたり、教科書を破られたりしたんです……。フェネルメシアさまが破ってるのだって、見ました。フェネルメシアさまに、言ったらどうなるかって脅されたけど、それでも、勇気を出したのに……」


 もちろん嘘である。自作自演の証拠もつかませ済みである。これもざまぁのテンプレだね。


「あんたがやったこと、ぜーんぶ分かってるんだから。フェネルに水かけたり、フェネルの物盗んで、偽の証拠にしようとしたりね。仕舞いには、父ぎみである侯爵が汚職だって?面白いことをいうよねー。王弟で、15年前の大粛清では辣腕を発揮した侯爵が、汚職だなんて、馬鹿馬鹿しすぎていっそめっちゃ愉快」


 珍しく、宰相の息子がチャラ男だ。物言いは軽いが、めっちゃ怒ってる。凄い。瞳孔開きっぱなしでまばたきしない。怖い。ちなみに悪役令嬢は、無事原作改編済みであるようだ。なかなか気概のある女性で大変結構!


「嘘なんか、ついてないわ!そこの女が全部悪いのよ!みんな、騙されてるの!ミルくんは、わかってくれるわよね!?」


 唯一の年下キャラ、第二王子にすがるものの、けんもほろろ。


「フェネルメシア様は、僕の姉上になるお方です。幼い時分から、公正で慈悲深い方でした。騙されている?何をいうのです。出会ってたかだか数ヶ月しかないあなたと、15年彼女を見つめていた僕をいっしょにしないでください」


 片想い宣言来たー!ちらっと皆に隠された悪役令嬢を見れば、あきれたような、照れたような、申し訳ないようなそんな表情をしている。知ってた。悪役令嬢は王太子の婚約者で、この度めでたく両片想いから両思いになったんですよね!おめでとう!王太子になにか囁かれて頬を染めている。


 さて、そろそろボロが出てくる頃だ。


「何で!?その女のどこがいいっていうのよ!私はヒロインよ!愛されるべき存在なのよ!?どうして私を愛さないの!」


 騒がしいけど耳が痛くならない絶妙な声量で怒鳴れば、芸術に秀でた美貌の伯爵が、そのプラチナの髪を揺らして、ひどく美しい声で答えた。


「まず美しさ。そのつぎに教養。一番は心根。そのすべてで君は彼女に劣っている。君は彼女より、なにかひとつでも誇れる部分はあるの?」


 純粋に疑問として尋ねた伯爵の、その言葉が一番のダメージである。ちなみに伯爵は不思議系年上キャラだ。私はこのぼんやりした感じが結構好きだ。


「なによなによなによ!!あんただって、あんただってほんとはわかってるんでしょ!あたしがヒロインよ!あたしが正しいの!あんたなんかよりずっと!愛される存在なのに!あんたのせいで!ああああーーーー!!」


 振りかざすのは、銀のナイフ。悪役令嬢目指して突進するものの、すぐに体に衝撃を受けて、地面に押さえつけられた。


「いい加減にしろ。貴様は何をしたのかわかっているのか!」


 次期騎士団長の現在騎士である。今まで黙っていたが、職務には忠実であった。年上無口キャラだ。食いしん坊で無類の甘党。手作りの生焼け媚薬要りクッキーを差し入れたのはよい思い出だ。


 そのまま暴れようとしたものの、押さえつけられて動くことができない。そろそろ終幕か、と思ったところで、国王が声を発した。


「王族の殺害未遂、名誉毀損、窃盗、傷害、すべてに不敬罪が加味されるだろうな。ーーーアイリーンとやら、そなたの末路はひとつだ」


 国王が目線で示せば、騎士は後ろ手に腕を捻り上げたまま私を立ち上がらせる。衛兵が彼の代わりに私を拘束すると、騎士は元の立ち位置、フェネルメシアのそばに戻った。


「つれて行け。沙汰は追って知らせよう」


 私は乱れた髪をそのまま、失意のままに、衛兵に左右を捕まれ連れていかれる。まるで某宇宙人のように。


 謁見の間の扉が開き、私は連行されていく。


 ざまぁイベント、これにて終幕ーーーー。


 よし!終わった!初仕事大成功!


 脳内でグッとガッツポーズをして、私はアイリーンの役目を終えた。


















 1ざまぁGET!



















「うん。中々良い初仕事だったよー。あのあと悪役令嬢は無事王太子と結ばれて、他の攻略対象も活躍して国を栄えさせる。オッケーだね」


 じゃ、スタンプカード出して、と言われて私は人材派遣課の職員にスタンプカードを渡す。1ざまぁおめでとう!とかかれたスタンプをゲットした。

 うちはある程度なら労働時間も加味するが、基本的に歩合制なので、このスタンプが給料の目安なのである。

 あとでタイムカードを押したら、家に帰ってご飯食べて寝るのだ。また明日から仕事だしな。


 次は何が良いかなーと雑談を始めた職員に、私は言う。


「ペーパーレスにしません?今時紙媒体だなんて流行りませんって」

「無理むりー。最近ヒロイン改心が流行ってて、コスパが悪いんだよね」


 説明しよう!ヒロイン改心とは、ヒロインが改心するため処刑までいかず、なんだかんだ一生何らかの付き合いをしなければならないパターンのことである!つまりベテランが必要で、さらに拘束時間が長いため、時間外労働が、残業代が……と働き方改革したいやつである。

 前途多難だね!


 とにもかくにも1ざまぁGET!





久々に文章を書きました。誤字脱字、文法のおかしな点等、ご容赦ください。

ありがとうございました。

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