1話
本命の作品のリハビリ用に書きました。
仕事中に思いついた内容をテキトーに書いています。
書くのは2ヶ月半ぶり。
その日、世界に3つの異変が起きた。
最初の異変が起きたのは四月半ば。
時刻は夜が明ける少し前、午前4時。
春だというのに雪が降った。
いや、よく見ればそれは青白い雪のようなものだった。
触れようとしても、肌に触れたと思ったら冷たくもなく、感触もなく、空気に解けるように薄い光をさらに薄めていった。
意味もなく夜更かしをして、ベランダから空を見上げていた俺はそれを見て、まるで風に吹かれた綿毛のようだと思った。
なんてことをぼんやり考えていたら、一際大きく、光の強い光球が不規則に落ちてきた。
欠伸をしながらその様を見ていたのが間違いだった。
いや、今思えば必然だったのかもしれない。
光球は吸い込まれるように、タイミング悪く大きく開いた口の中に入り、
そして
吸気に合わせ体の中に吸い込まれていった。
「ゔっ⁉︎ゔぇぇぇえ‼︎」
瞬間、酷い吐き気と倦怠感、目眩が俺を襲った。
まるで拳大の石が喉を無理矢理通り過ぎたような圧迫感があり、あまりの痛みで俺は気を失った。
次の異変は、ベランダで気絶していた俺が母親に起こされ、去年から通っている高校で授業を受けている時。
2限目が始まった頃。時計の針は10時を指していた。
またしても季節外れの雪。
違うのは俺が飲み込んだ光が青白かったのに対し、色が赤かった。
それに規模も。
夜中に見た青白い雪は市内の何割かという程度だったのに対し、赤い雪は、辺り一面見渡す限り降っていた。雲ひとつない青空を赤に染めるほどに。
その光景を見た担任もクラスメイトもただただ言葉を失い、外を見ていた。
気付けば隣のクラスからも、その隣からも音は消えていた。
多分この学校だけでなく、この街、この国、もしかしたらこの星からその瞬間は音がなくなったのかもしれない。
この異変を見て人は、綺麗だの、怖いだの、感動したり恐怖したりしたのだろう。
しかし俺はその光景を見て強烈な吐き気を催した。
どこから湧いたのか分からない僅かな怒りと憎しみも。
吐き気は夜更けに光球を飲んだ時よりもずっとずっと強く。
思わず立ち上がってしまった程の怒りと憎しみを瞬く間に忘れるほどに強く
本能が意識を手放すほどに
気持ちが悪く
そして俺は2度目の気絶をした。
今回は幸いにも、フラついた俺を隣のクラスメイトが体を支えた衝撃で、すぐに意識を取り戻した。
「おい!大丈夫か!」
ぼんやりした頭で目についた時計の長針は5の少し手前。
「おいってば!」
窓の外を再び見ると、赤く染められた空は何も無かったかのように青空に戻り
「おいっ……!」
日常が戻った。
「返事をしろ!」
バチーン!
「痛ぁぁ!
何すんだよ!俺が何したってんだ!」
頬の痛みで頭は完全に覚醒した。そんでもって痛みの原因を非難する。
「少なくともシカトはしたよな。
いきなり倒れたがどこか悪いのか?」
「ほっぺたが痛い」
「なら、問題無さそうだな。…って冗談は置いといて。
本当にどこも悪くないんだな?」
ビンタの件はスルーされた。まぁ、別にいいけど。
「いや……特には。
支えてくれてありがとう」
「おう、気にすんな。
しかし、さっきのは何だったんだろうな…。
スゲー綺麗だったけど。異常気象か?」
「綺麗……か?そう、か……」
きっと自分の感じ方がおかしいのだろう。
「ん?どうかしたか?」
「いや、なんでも」
「というか、あっちでも女子が倒れたみたいだな。あれは……貞子か?」
貞子と呼ばれた女子は、胴の高さまで伸びた髪に顔を隠すほど長い前髪、滅多に喋らないことからそう呼ばれている。
顔も名前も覚えていない女子だ。
俺以外に倒れた人がいることに気にはなりつつも、先ほどの光景を思い出そうとしたが、
「はいはい!静かに!授業やるぞー!」
『えぇ〜〜!?』
担任とクラスメイトの声に気を取られ意識から外れて、次第に忘れた。
因みに倒れた俺らはスルーされた。
そして恙無く授業は進み、昼休みに入って昼食をとっていた時に3つ目の異変が起きた。
ちょうど、1時から放送部のやるラジオコーナーが始まった時刻。
身体の内側に鳥肌が立つような。
無数の虫が身体の中を這うような。
何者かが中身を弄るような。
堪え難いおぞましさが身体中を駆け巡り。
その跡をなぞるように、今まで体験したことのない激痛が俺を襲った。
「があああああああああ‼︎」
「いやああああああああ‼︎」
『きゃああああああああ‼︎』
痛みの中のたうち回りながら俺は、どこか冷静な頭で貞子にも何かが起きていることを悟った。
クラスメイトの悲鳴
教師の怒号
心配そうな眼差しの中で
自分の身に何が起きているのか状況判断に努める。
しかし、その思考を激痛が上書きする。
「ぐううぅぅぁぁああああ‼︎」
自分の絶叫に紛れて体から異音がする。
バキバキッ
骨の折れる音
グチャグチャッ
肉のこねくり回される音
ビチャビチャッ
体液の噴き出す音
「がああああああああああ!」
気絶するほどの痛みは意識を失う前に強制的に意識を覚醒させる。
結果、激痛の中、異音の中、自身の血反吐の水溜りの中で
それらに耐えて
耐えて
耐えて
それらが終わる頃に
ようやく俺は意識を手放せた。
だが
最初に言ったように
3つ目の異変は、俺やクラスメイトの女子の2人にでは無く
街に
国に
この星に
異変が
それも
今後の歴史を変えるほどの異変が起きた
俺がそれを知るのはそう遠くない未来
具体的にはワールドクロックが14:00を示す頃だった。