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内省随筆  作者: 近藤 回
番外

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9/9

b、宇宙、素粒子、人体

 私たちは三次元の中に存在しているが、この宇宙は九次元であるらしい。四次元から先は認識できず、まずその概念が理解できないが、そのことを考え出し、突き止めた科学者たちに感心する。原子よりもさらにちいさな素粒子を見付けたことも驚きだ。


 映像作品である「九次元から来た男」を見たとき、マクロとミクロ、宇宙と細胞というのは似ているという誰かの考えを思い出した。銀河系の集まりは脳の神経細胞であるニューロンに似ているように感じたし、私は所詮、地球という存在の一細胞に過ぎないのだろうとも思った。

 私は、この世界は、誰かの本の中の出来事であるかもしれない。胡蝶の夢と同じで、それを証明する手立てを持ち合わせていない以上、疑問は解消されない。科学者というのは、その可能性に気付き、「自分たちが本の中にいるとして、何故本の中から出られないのか?」という疑問に果てしなく向き合う者なのだろう。


 万物は原子、分子の結合によって形を成してはいるが、わかっていることは、それらはなにかしらの働き、動きがあることだけで、何故それが存在しているのかは永遠の謎である。自分は何故生きるのか、という疑問と同じように。すでに存在しているものの存在を疑うことは、時に不毛なものになる。それでも見付けたいと思うのは、物事の内側に目を向ける者の癖だと言える。

 原子や素粒子にも、そういったことを考えているものがいるのだろうか。私の考えがおおよそ及ばない方法でそれをしているのかもしれないし、それは人間の思う“考える”という行為でもなく、もっと別の働きをしているかもしれない。そもそも人間の思う概念に当てはめること自体が変だろう。が、ナノミクロの世界でもそういった捻くれたものがいるかもしれないと思うのも面白い。


 先日、最先端のデジタルアートを体感してきた。屋内に作られたその空間は、暗い空間にカラフルな映像を投影し、見る者をその世界へと没入させていく。

 巨大な箱の中に、意図的な暗闇を作り出すことの、なんと贅沢なことか。すべてを光りで表現すること、未だかつてない壮大さを伴う映像作品群を前にして思ったことは、回り巡って結局自分のことであった。周りのひとびとは興奮に突き動かされ、本当に楽しんでいたが、私はというと、自分がいかに内向的でインドア派であるかを客観的に知ることになっただけ。わざわざ足を向けたのに、考えることはいつもと変わらない。もちろん作品を体感し、自分なりに楽しんでのことである。


 帰途についてから、ある作品のことばかり考えていた。調べてみると「時空が交差する場所には新たな時空が生まれる」という作品で、第一印象は屏風絵のよう。しかしその絵も形をある程度保っておきながら刻一刻と変化していく不思議な映像だった。白い枯れ木のようなものは、骨にも見え、映像は常にバクテリアか微生物が動いているかのようでもあった。

 私は、その映像を見ながら、原子や分子のこと、ひいては人体のことを考えていた。分子は常に動いていて、それが体温あるいは熱となって感じることができる。兼ねてから疑問に思っていたが、どうして物体は形を変えずにそれを保つことができるのだろうか。分子は動いているのにもかかわらず、自分の手を掴むことができる。単純に考えるならば、この腕は掴もうとしたところから崩れ、形が変わってもおかしくないはずだ。あれが接着剤の役割をしているとか、これが形を留める役割をしているとか、理由はあるのだろうが、やはり疑問なのである。動的平衡も本当に不可思議なものだ。三ヶ月後には体組織がすべて外から摂取した別のものに入れ替わっているというのも、原子、分子単位で入れ替わっているからで、そうなるとやはりちゃんとした形のあるものなどないようにも思えるのである。

二年も前に書いた文章ですが、もったいないので蔵出しを。

文章を書くと、書いた内容はぼんやり覚えていますが、どのような文章を書いたのか覚えていないことが多いので、今回の文章は本当に自分が書いたのかなと不思議な感じがします。

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