表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
内省随筆  作者: 近藤 回
本章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/9

3、資料探し、資料作り

 私の中の最初の資料は、登場人物のイラストであることが多い。イラストは創作意欲と目的意識がないと描くのが難しいが、あるととても便利だ。容姿の描写もそれを頼りにできるし、小説の中で動いてもらうときも想像がしやすい。

 ……はずなのだが、実際私の頭の中では、あまりはっきりと彼らの容姿を想像できていない。何故かはわからないが、はっきりと彼らの容姿を想像しようとすると、ぼんやりしたり形が定まらなかったり、なにか余計なものが混ざってしまうこともある。加えて文章を書いているとき、先に文章を書いてからその場面を想像するときがある。ふつうは逆のはずなのに、想像よりも先に文章が存在するときがある。


 参考にしようと町の人口について調べたとき、町や村には定義があって、それに照らし合わせると、

「この町は、“町”というよりは“村”なのでは?」

 という問題が出た。これは架空の世界の話だし、語感が“町”のほうがいいという理由で変更しなかった。この語感はもちろん、頭の中で音読したときの“音”だ。あとは町に対する自分の勝手なイメージもある。だが「ミネルバ」の町のモデルにしたイギリスのカッスルクームは村であったりする。複雑。

 それから大きな組織に必要な部署とはどういうものがあるのかを調べたり、ヨーロッパの教育機関や基礎教育を調べたりもした。


 「ミネルバ」の資料探しにおいて一番に力を入れたのは、主要な建物のモデルだった。間取り図があることを必須条件にして探したが、あれもいいこれもいいで、目移りが過ぎ、決めるまでにやや時間がかかった。

 第七地区警備隊の本部は、「Yelford Manor」というマナーハウス。本当に青いソファーがあり、個人宅になっているのであまり資料がないのが惜しいところ。資料は血眼になって探し、間取り図もなんとか入手。うしろにも建物が広がっていたことには驚いた(2014‐2016にかけて大規模な改修工事をした模様)。

 領主邸は「Hardwick Hall」という邸で世界遺産。三階の画廊がものすごい長く、天井が高い。邸の右側の階段がどうなってるのか本当にわからなくて、映像資料を見てようやく納得した。映像を見るまで間取り図が本当に理解できなかった。

 ウェイデン邸は「Belton House」。建物右側の階段が非常に素敵で、床がチェスボードのよう。しかし間取り図を見ても、なんだかよくわからない部屋がぽつぽつある。英語、読めない。

 警備隊の最本部は「Waddesdon Manor」。とても豪華で城のような建物。しかし二階部分がよくわからない。娯楽室や午前に使う部屋もあり、モデルにしたところすべてに言えるが、広すぎる。

 酒場にもモデルがあり、「Ye Olde Mitre」というパブ。結構有名な店で、これらの建物をPinterestやGoogle Earthで見ては執筆そっちのけで楽しんでいた。特にパブはGoogle Earthが大いに参考になった。モデルにした上記の建物はすべてイギリスにある。著作権などの関係上、画像や間取り図をここに載せられないのが至極残念だ。


 建物を調べているときに知った映画「プライドと偏見(Pride & Prejudice)」(2005、イギリス、監督ジョー・ライト)も映像資料としてかなり参考になった。キーラ・ナイトレイ女史が美人で、登場人物のひとりは彼女をイメージしてイラストを起こした。わざわざ借りたかいがあった。原作小説「高慢と偏見」(1994、岩波文庫、ジェーン・オースティン著、富田彬翻訳)を先に読んだが、特に大きな事件があるわけでもないのに面白かった。ただ翻訳が古いものを読んだのでさらっとは読めず、登場人物のセリフも地の文も言い回しがまどろっこしくて読みにくかったのが難点だった。読みやすい翻訳のものを選ぶのも大事だと思った。


 ナイトレイ女史に触発されてデザインされた登場人物、ライラ。

挿絵(By みてみん)

 残念ながらそれほど似ていない。


 あと特に気になったのがオイルランプ。いまは電気で電灯の時代なので、ランプがどういう仕組みなのか、部品の名前もよくわからなかったが、どういった形状のものがあるのか知るのは大変に興味をそそられた。あの花の蕾のようなホヤ(風除けのガラス部分)の形や、油壷の形状や彩りの多様さには溜め息が出る。実際に購入して、どれくらいの間火が灯るのかとか、どういうオイルを使うのかとか、重さや形を見て自分がどう感じるのか知りたかったが、未だ購入には至っていない。


 ランプのスケッチ。

挿絵(By みてみん)


 資料作りにおいて見る度に自分を褒めたくなるのが、登場人物の行動カレンダーである。資料作りは概ねアナログで、マスカレンダー風にノートに書いているときはものすごい楽しく、登場人物たちの行動が日付ごとに一目でわかるのでかなり利便性があった。日付の経過が明確で細かい話だったので、作って大正解。自己満足であることは否めないが、調子に乗って部ごとに相関図を作った。楽しい、の一言に尽きる。


 行動カレンダーの一部(「ミネルバ」第二部)。

挿絵(By みてみん)

 左上の数字は日付。


 話がある程度進んだときの相関図(「ミネルバ」第一部)。

挿絵(By みてみん)

 例によってアナログ。


 それからこれは資料というか、話が詰まったときに調べたのが「三角関係の解決法」。いまとなっては笑い話だが、話がにっちもさっちもいかなくなり、登場人物のそのときの心境も相まって本当に苦しかった。ジェンダーやイデオロギーや価値観をめぐり、私の中でさまざまな考えが浮かんでは消え、この話ってそこまで真面目なことを書いていただろうかと混乱。いや、真面目な話を書くスタイルではあるのだが。

「架空の三角関係にどうしてここまで苦しまねばならないのか」

 このとき本気で、すこし苦笑も交えて思った。ある意味とばっちりだ。私にとってとても大事な小説の最後の話だったこともあって、とにかく彼らにとって良い方向に!と願っていた。正直に言うとすこしばかり引っかかるところもあるが、あれはあれでよかったのだと思う。


 ほかの随筆でも書いたが、資料探しや資料作りが楽しいのは自明の理のように思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ