その26"マニル①"
この度は6ヶ月もの間投稿できずに申し訳ありませんでした。
今後も間が空いてしまうかもしれませんがご理解のほどよろしくお願いいたします。
その26"マニル"
ユーリカが朝ご飯を作っている間にマニルへの道順を再確認するため机の上に地図を広げる
今俺達がいるのは森の手前の方、このまま森を進むと草原に出る。
マニルまで続く広い草原だが平らな道のりで何もなければ遅くても夕方には到着できる。
(マニルに着いたら宿を探して、次の町への・・・)
「できましたよ」
朝ご飯ができたようでお皿に乗せて机に置いた、
「何を作ったの?」
「サンドイッチです」
ユーリカお手製のサンドイッチを持ち口の運ぶと思わず
「おいしい」
とみんな口を揃えて言った。とてもおいしくてあっという間にお皿が空になった。
(月影達の食欲には驚くよ)
洗い物や机の片づけを済ませて出発の準備に取り掛かる。
手始めに月影に森の出口まで、安全かどうか確認に行ってもらっている。
日が昇っていれば魔物は少ないし、食料調達の時にも確認したが
念には念を入れて確認をしておきたい。
ユーリカ達はすでに馬車に乗っている、後は月影からの連絡を待つだけ。
{主、問題ありません}
{わかった、今から向かうから少し待っててくれ}
{承知致しました}
月影の連絡を受け、馬車に乗り走らせる。
朝の森は鳥の透き通った鳴き声が響いていて、とても心が落ち着く
が、よく耳を澄ませば魔物の鳴き声に戦っているであろう冒険者たちの声が聞こえる、
恐らくこの森で命を落とした者もいる、美しく良い森だが人によっては恐怖そのものだろう
きっとここはそう言う場所なんだと、つい物思いにふけってしまう。
(これも俺の悪い癖なのかな、他の人とは違った観点を持ってしまう
だけど、表だけを見れば本当に美しい森だ)
そんな事を考えていると目に映っていた景色が木々だらけの森から涼し気な広い草原に変わる。
待っていた月影は鳥の姿になっていて
気持ち良さそうに空を飛んでいたが、しばらくして俺の肩にとまった。
「すごいですね」
「ホントね」
景色を見たユーリカが呟き、それに続くようにクリティカも呟いた
実際そう思う、こんな景色は産まれてから一度も見たことが無い
この世界に来てから、今までに感じたことの無い感覚や忘れていた感情を与えてくれる。
それが良いのかはわからないが、確実に俺は変わりつつある。
パストラル王国、王都クエンツェルより北東にある町で
ギルドなどの中枢機関がある建物を中心として広がり、周りを壁で囲っている。
かつては要塞として使われていたそうだが今では戦いの面影は無く、
商人の往来が盛んで活気のある町、それがマニル。
道中は何もなく、気持ちの良い風に当たっていると到着していた。
門では検問があり、入るためには必要な事なのだそうだ。
馬車の列に並び、順番が来るのを待つ。
馬車の検問は普通の検問とは違って荷物も確認するため時間が掛かる、
人員は多いようだが商売が盛んなだけに商人の馬車が多く
とても足りているようには見えなかった。
待つのは別に構わないが、どうせなら商人の馬車と一般の馬車で別けてほしいものだ、
(実際その方が、作業効率が上がる気がするんだが)
見た限り俺たちの前にある馬車の数は3台
そのうち2台は商人のもので残り1台は妙な雰囲気で外見からは想像がつかない
第四の目を使えば何とかなるが、好奇心だけでやって良い事じゃないし
これでもし変なやつらだったとして、事件に巻き込まれるのも困る。
しかし長時間待たされていたせいなのか、ちょっとした好奇心に負け覗いてしまう
最近になって気づいた事だか、第四の目は相手の心を見るだけで無く
物も見ることができたようで、簡単に言えば透視。
(第四の目)
第四の目を唱えて、荷台を覗く。
すると、見えてきたのは布に包まれた何か、より集中して見ると布から手足が出ていた。
一瞬で理解する事ができた、奴隷、人としての名誉、権利、自由がなく
人として扱われない・・・ふざけるな。
俺は昔から差別や不平等が大嫌いで、どんな状況だろうと守ってきた。
そんな俺は当然、奴隷制度と言う存在そのものが嫌いで、
奴隷を目の当たりにして、いつものような冷静さは無かった。
だが頭ではわかっていた、いくら助けたくても助けた後の事も考えなければならないが
現状、今の俺ではどうすることもできない。
(助けたくても助けられない、俺が無力な証だな)
そう思う反面この世界だと常識的なことなのかもしれないと考える自分もいた
もとの世界でも奴隷制度は無くても差別はあたりまえのようにあった、
その点において俺自身も完璧な平等などただの夢物語だと思ってしまう。
「どうかしたんですか?そんな険しい顔して」
ユーリカの声で目が覚める。そんなユーリカは不思議そうにこちら見ている
対してクリティカは何かを言いたそうにしているが、口を開こうとはしなかった。
結果的にあの後30分ほど待たされて無事にマニルに入る事ができた。
検問で個人証を提示した時、門番はものすごく驚いていた、
つまり俺の事はすでに出回っていると言う事になる。
目立つのは避けたいのだが、なにもしないわけにはいかない。
今後のためにも集められる情報は集めておきたい。
やる事を全て終わらせ宿の自室にて月明りに照らされながら考え事をしていた。
俺を襲ったあいつは黒の塔と名乗った、それも"俺たち"と言っていた。
と言う事は、黒の塔は組織の名前となる。
(それにあいつは、上はお前が気になっている、とも言っていた
この世界きて一番目立った事をしたのは・・・)
俺がこの世界に来て一番目立った事、それは王女であるユーリカを救った事
しかしそれだと動機がわからない、あれはルイスが勝手にやったことで
組織ぐるみの犯行には思えない。かと言ってそれ以外に名が知られる事はしてない
つまり王城でユーリカとクリティカが攫われてから助け出すまでの流れの中に
答えがあるはず。
(もし、あの場に第三者がいたとして、それが俺ならどこを気にする?)
そう考えると自然と答えが見えてきた。
あの時の事を考えるときに一つだけ忘れていた事がある。
それは・・・
(ルイスが邪神の力を使った事、そして俺が勝った事か)
それしかない、俺のレベルが100なのを知っているのはユーリカやクリティカ、
カサブランカ王を除いて、ごく少数。
第三者だった奴は知らなかった、その上で邪神の力を持つルイスを倒したとこを見ていた。
そう考えれば俺の事を気にする理由も納得できる。
ルイスが国を追放された後、黒の塔に邪神の力を与えられた、そしてユーリカを攫いに来た所、
俺に倒され、それを見ていた奴が上に報告した。
(一連の流れはこんな所か、狙われているのが俺なのが不幸中の幸いと言ったところか)
しかし邪神の力を使う組織に狙われているのも事実、二人が人質にされないとも限らない。
警戒は怠れないし、より多くの力が必要になる。
「明日も動くし、とりあえず考えもまとまったし、寝よう」
こうして眠りについた。
まだ、やるべき事は多いし油断もしてはいけない。
だが、なにがあっても仲間は守る。
再度言わせていただきますが、
長らく投稿をできずにいたこと、誠に申し訳ありませんでした。
まだ続きますので宜しければ読んでください




