その16"学習"
ジークから勝負を挑まれ、
承諾した俺は移動し下に降りる。
降りる途中ちらちらとジークがこっちを見てくる
気づいていないふりをしていたがなんなんだ?
フォースアイを使えば一発でわかるが
このスキルはむやみに使わないようにしている。
なんせ、人の心を読むなんて
普通に考えて良い事じゃないし
読まれる立場の事を考えれば
使わないのが適格だと思う。
さて、下に到着し
まだシャルロット騎士団長は
ジークにやめるように言っている
が、自分から挑んだ勝負をやめるのは
ジーク自身のプライドが許さないだろう。
(それにしても、シャルロット騎士団長は
どうしてあそこまで反対するのか
俺がジークの相手にならず
怪我でもさせたら困る、とかだったらどうしよう
まぁ、シャルロット騎士団長が
そんな事言うとは思ってないが)
下に着いてから大体5分はたっている。
話が終わるまでの時間暇なので
訓練用の武器を眺め手に取り少し振ってみる
やはり槍は両手が塞がってしまい動きにくい
しかし
「あれ?案外簡単だな」
初めて使ったとは思えないほど
動けてそれほど使いにくくはなかった
すると周りから驚きの声がした
それに気づき槍を置きすぐに言った
「なんでそんなに驚いているんですか」
「だって、そんなに
軽々と槍を使う人を見る事が無いので」
(軽々と?まさか)
おもむろに個人証を見るとやはりそこには
新たなスキル、槍術+4と書いてあった
(やっぱり習得はこういうスキルか
確認できて良かった
これだけでここに来た甲斐があった)
その後も予想どうり
どの武器を使っても歓声がおき
その都度個人証を確認した。
結果、シャルロット騎士団長とジークが
話し合いをしている間に
剣術、槍術、双剣術、斧術、弓術
それぞれ+値4で得てしまった。
それにしても遅いな、と思っていると
「待たせたな」とジークが来た
「ようやく
シャルロット騎士団長を説得させたのか」
「余計なことは要らない
早速だが勝負といこう」
どうやら、ジークは完全に戦闘モードらしい
奥にいるシャルロット騎士団長を見れば
渋々了承した感じに思える
どうしてここまで話が長引いたのかは知らないが
受けた勝負は本気でやらなくては
と、言いたいが実際武器を用いた戦いは
ユーリカを助けようとしたときの
盗賊との戦いが初めてだし
戦い方を知っている訳ではないからな
グダグダになるかもしれない
「俺が話してる間
色々武器を使ってたみたいだし
好きな武器を選べよ」
「そう言われてもね
俺はこういう事したこと無いから
どうすればいいかわからな········」
その瞬間俺の目に映った
それはシャルロット騎士団長が
腰に携えた武器"レイピア"
「あれだ!」
「大丈夫か?」
取り乱した俺を見て
ジークは小馬鹿にするように言った
「大丈夫だ、俺の理想に近い武器があってね」
軽く動きやすい
そして片手で使えてリーチもそこそこある。
何故今まで思いつかなかったのか
レイピアこそ俺の理想に一番近い武器だった
「理想?で、どうするんだよ」
(武器が見つかった今
ここに長居する必要がなくなったし
出来る限り早く終わらせよう)
「ん?武器なら······剣で良いよ」
そう言うと団員の一人が持ってきてくれた。
その時
「訓練用なので刃は落としていますが
やり過ぎないようにしてくださいね」
と言って渡してくれた。
やり過ぎ?力加減はできる、たぶん
とりあえず最初は相手の出方を探らないと
勝負は情報が無ければ勝てないからね。
準備は出来た
円形の線の内側に立ち向かい合う
「審判は私、王国騎士団団長
キング.シャルロットが行う。
早速ルール説明をする
その1魔法の使用を禁止する
その2敗北条件は相手の降伏か
相手を線の外に出す事
その3審判に従うこと
そして、ルールを破ったら
その時点で敗北とみなす
両者異論はあるか?」
「ありません」「大丈夫です」
「最後に1つ、死ななければどんな傷も直せる
両者己の力を最大に発揮し存分に戦ってくれ」
(ルールに魔法の使用禁止はあるけど
スキルの使用禁止は言われていない
とすると、ジークは矛砕で
武器破壊を狙ってる可能性があるな)
「始め!」
シャルロット騎士団長の掛け声で始まった
するとジークは正面から攻めてきた、
「おらっ」
攻撃を躱し距離をあける
(剣術+4の力見せてやる)
体勢を建て直し再び攻めてくる
今度は避けずに受け止める
力強い一撃だが俺も負けてはいられない
さすがに、年下にはどんな勝負も負けたくない。
「君は少々自分の力を過信しすぎだ」
「お前には言われたくないな」
「俺はこう見えて、過信したのは一度だけだ」
そう言って、横に薙ぎ払うがジークはうまく躱す
「どうだ······?」
ジークの表情は余裕から驚きに変わっていった
何故ならそう言ったジークの視界には
すでに俺の姿が映っていないから
「!」俺の気配に気づいたのか振り向き剣を構える
「こうかな?」
俺が剣を降り下ろした瞬間
ジークの剣は折れジークは膝をつく
「これは!」
気づいたか、矛砕って
(うまくいった
矛砕はなかなか使えるスキルだな)
「まだやるか?」
今まで余裕の表情が一変
今は悔しげな表情を浮かべる
「俺の負け、です」
(です?急に敬語になったな
ようやく負けを認めたのか?)
「そこまで!勝者カガミ.セイト」
シャルロット騎士団長の一声で決着がつき
俺の勝ちとなった
周りの団員の歓声がうるさいほど聞こえる
「大丈夫か?」
まだ地面に膝をつき
俯いているジークに手を差し伸べる
「何故、ですか?」
俯いたままジークは言った
「何故?無礼な態度をとった上に勝負を挑み
負けたのに手を差し伸べるのか、かな?」
「はい」
「さっきも言ったけど
俺の事を認めていない人がいるのは知ってる
だから君の気持ちはわかる
それにそこまで怒ってないしね」
「えっ?」
驚きながら俺を見る
そんなに驚くことか?
てか俺がそんなに怒ってる様に見えたのか?
確かにあの態度はムカついた
けどそんなに責めるほどではない
「ジーク、君は強いけど
自分の力を過信しすぎている
だから、なにも考えずに攻めてきたんだろ?
その結果、俺の矛砕で武器が壊れた。
自分を過信せずに鍛練を続けな
そうすれば、君はもっと強くなれる」
「カガミ殿この度は
ジークが多大なご迷惑を
平にご容赦ください」
シャルロット騎士団長はまた頭を下げた
「別に良いですよ
私も良い勉強になりましたし」
この人、今日頭をよく下げるなと思いながら
そう言った。
「確か、武器を探しにこられたのですよね」
「ええ、そうですよ」
「何か見つかりましたか?」
「はい、とても良いものが」
「それは良かった」
「では私はそろそろ行きますね
あなたの活躍を今後も期待してます」
「はい、シャルロット騎士団長も頑張ってください」
こうして訓練場を後にした。
少し疲れて部屋でごろごろしてると
凄い勢いで扉が開きそこには
クリティカとユーリカがいた。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ
あなた今日ジークと戦って勝ったそうね」
「そうだけど」
「セイトさん怪我は大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
「なんでそんなに呑気なの?」
「逆になんでそんなに慌ててるの?」
クリティカが慌てている理由がまるでわからない
「ジークのように名の知れた騎士を倒したら
騎士団に入れられるかもしれないの」
ユーリカも曇った表情をしている
(それは困る、まぁ言われても断るつもりだけど)
「その事は安心して
二人からは絶対に離れないから
どんな手を使ってもね」
「セイトさん」「セイト·····」
てか俺が騎士団入るって、ないな
場合によっては足手まといになるかも。
どっちみち、騎士団に入る気はないし
ユーリカとクリティカから離れる気もない
より一段と君達を守る決意をした所で
「夕食にしない?お腹すいちゃった」
「やっぱりセイトさんの婚約者になって
良かったですね、クリティカさん」
「そ、そうね」
「行こうか」
今日のご飯は疲れてるせいかいつもより楽しみだ。
今回も読んで頂きありがとうございます
私が言うのもあれですけど
あっさり勝ってしまいましたね




