第3.5話
1
「クエストに行くぞーっ!」
勇一はそう言って、無邪気にも走り出す。
「待って!」
……と、勇一を希里花が止めた。
「なんで!? 脚でも怪我したんですか?」
勇一が問う。
「いやいや、そうじゃないよ。」
希里花は勇一の疑問にそう答えた。
「……じゃあ、なんで?」
すると希里花は少し怒鳴った声で勇一に言った。
「っあ~! もう! 加賀谷くん完全に忘れてたの!?」
そんな希里花の声に、勇一が問う。
「……何をですか?」
希里花は「はあ。」とため息をつき、再び怒鳴り口調で勇一に言った。
「もう! RPGとかで戦う時大体使うでしょ!」
「いや、だから何を?」
勇一は首を傾げる――
「武器だよ!」
2
武器屋にて。
「へー。クラスごとに種類が有るのか。えーと。双剣士クラス24用の剣は何処だ? あ、あったあった。」
武器屋は、大体30畳位の広さで、天井までの高さはキリンの子供の身長の2倍位の高さ。上からは、短冊のように、下にある商品の種類が書かれた紙がぶら下げてあった。
「『キャプチャーソード』? こんなんしか無いのか。どれどれ。」
“製品名:双剣”
“材質:ダークドラゴンの爪、ダークドラゴンの骨、ダークドラゴンの鱗。”
“使用法:使用時は柄に付いてあるボタンを押して下さい。すると刃が出ます。押している間のみ刃が出るので、長時間使用する場合はボタンを押し続けて下さい。本製品は使用時、同時に半径10メートル以内で魔法を使っていると、その魔法の効果をコピーして巻き込みます。魔法がコピーされた後、魔法の効果を取り消す場合、刃をしまって下さい。”
“使用上の注意:使用時はなるべく怪我をしないようにご注意下さい。”
“回復系魔法、肉体強化魔法の使用中、この剣を敵に当てると敵が回復・強化してしまう可能性もあるので、使用時はあまり周りで回復系・強化系の魔法は使わないようにしてください。”
“本体価格:300000chrom 税込306000chrom”
「は? どゆこと? まあ、いいや。これしかないし買っとこ。」
つーか、異世界でも税金あるのか。
お互い大変ですね。
3
「おー! きたきた。何買ったの!?」
「なんとかソード。」
「キャプチャーソード! これはすごいね! ……前にこれで自分を間違ってちょっと刺して死んだ人いるけど。」
最後の方は聞こえなかったが、どうやらこれは凄い武器らしい。
今後の活躍に期待だな。
「あ、これボタンを押してる間だけ、刃が出るらしいぜ。これなら安心だろ! それに双剣入れも貰ったんだ。」
「お~! それは良かったね! ……でもずっとボタン押してるの疲れない?」
「あ。」
こうして勇一のクエストの準備は終わった。