第12話
1
彼女がこの世界に来たのは、わずか二年前の事だった。
彼女はいわゆる結衣奈と同じ、アニメオタクだったそう。
ただその事を、彼女の母親はよく思っていなかった。
そしてある時彼女の母親は、彼女を束縛の呪印へと貶めた。
シンデレラ、という童話があるが、それで例えると序盤のシンデレラがこき使われていた某シーンのような束縛だった。
彼女はその間、こき使われたままの服装で学校へ通い同級生からの虐めも受けた。
彼女の身の回りで起こった大半の出来事を、彼女は自分のせいにされたことを、彼女は今も忘れない――
……それから時が経ち、社会人となった彼女は、夢を叶えて作家となり、底辺でありながらも、なんら苦のない幸せな日々を送っていた。
だがそんな、ある日の事だった。
彼女の母親が、事故で《《死んでしまった》》。
勿論、母親が死んだことはむしろ、彼女にとっても喜ばしい事であった。
だが。
彼女が独り立ちしてからというもの、彼女の母親は闇金に手を染め、その金をもってパチンコで豪遊、そして、保証人に彼女を、自分の娘を許可も取らずに勝手に登録していたことを。
借金取りは躊躇なく彼女から全てを毟り取り、尚も彼女を責め立てた。
追い詰められた彼女はついに決意をし、生きることの悲しみに終止符を打った。
だがしかし、終止符の先の異世界転移で、その闇に囚われ、転移と同時に彼女は死に、吸血鬼となった。
そんなこんなで、説明も端折って始めよう。
彼女の、物語の続きを。
2
「――なるほど。つまり私の依頼主は殺人鬼で、私達が依頼された『美少女狩り』は、美少女を殺すために依頼している、と。」
彼女は――相野 早咲は言った。その言葉に、勇一は答える。
「美少女狩りって言い方だとアレですが、まあそんな感じです。」
勇一の言葉に、一時早咲は俯きながら、考えを深め――言う。
「分かった。一つ、あなたの言葉を信じてみるわ。ただし……」
言葉の切れた瞬間、この直前の響きに緊張が走り、勇一は身を震わせながら言った。
「ただし……?」
(……血を飲ませてとかではないよな!?)
彼女は言葉を紡ぐと共に、勇一の言葉に答えるように言った。
「ただし、私も連れて行ってくれないかしら!」
予想が外れ、パーティーの仲間達が安堵する。
「え、良いですけど……一体何故?」
勇一が聞くと、彼女は胸を貼り、キメ顔で答えた。
「当然っ……私のスーパーパワーを見せつけるためよっ!」
本当は依頼主が本当に殺人鬼か確認するためという意味が主であったのだが、彼女はそれを言わなかった為、その場にいた勇一達にこう思われた。
(この人、中二病かぁ〜っ)




