表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/59

第10話

1


広い――広い、街中。

その道中を横切る黒い影が見つめ、狙うのは、地震から逃げ惑う魔王――否、“美少女”希里花の一行であった。

影である者――女は、その中の希里花だけを捕らえるため、逃げ惑う彼女らに向け、魔法攻撃を繰り出す。

「ドナークーゲル・ダ・ドンケルヘイト。」

刹那、突如何もない空間から放出されたのは、電気を帯びた毒々しい色の球だった。

その球は、希里花達に向かって投げ出され――



―地面に激突した。

「チッ」

女は舌打ちをして、また魔法攻撃の構えを整える。

「あいつあんな魔法使えるのかよ!?やべえ位異世界らしくていいな!」

勇一は一番に声を上げた。

「こんな状況にあんた何言ってんの!?」

その場にいた四人全員が、勇一に向けてツッこんだ。

「おっト、余所見、いけませんヨ? 」

女の声が聞こえ、希里花は気付いた。

「ちょっト、目ヲ、離しタ、その隙ニ、捕まっちゃウ、からネ。」

希里花を『捕獲した』女はその豊満な胸に彼女を(いだ)きながら言った。

如何にもイリシアが妬みそうなシチュだが、勿論、イリシアはここにいない。

ましてや、そんな事をゆっくり考えている余裕がある訳も無かった。

「希里花さん!今、助けますか……」

刹那、勇一の声は女の声に遮られ。

「小僧如きガ、何ヲ、考えてるのカ、知りませんガ、ひょっとしテ、仲間のパーティノ、少女ガ、この状況ヲ、妬むだろウ、とでモ、考えていたん、ですカ?」

その言葉に、勇一は叫んだ。

「お前どんだけ心読めんの!?」

勇一の言葉を聞き入れ、彼女は次のように彼を容赦なく罵る。

「あァ、やはリ。……この状況の下、無意味ニ、そんな事ヲ。私はアナタ、嫌いでハ、ありませン。……ガ、ご主人様にハ、到底及ばなイ、ご主人様ノ、言葉、デ、言うとこロ、ノ、なろう系主人公ノ、愚味ノ、極みト、言ったとこロ、かナ?」

「――っ!?」

勇一は彼女の言葉――否、その一部に戸惑い、思考を高速で回転させた。

その言葉の一連からして、彼女の主人である殺人鬼は、吸血鬼であり、その上日本人である、その事実が勇一を混乱させる。

同世界からの訪問者としての馴れ合いが、なんとかして出来ないだろうか。

だがしかし、殺人鬼と対話を広げるというのも気が引ける。

だがそれでも、対話はするべきだろう。

勇一の心に強い信念が宿っていた。

それ以前に、今まで考えなかったが、殺人鬼の自宅として公表されていたあの場所は、本当に自宅だったのだろうか。

つまり、真実を掴むにはあの女に道しるべをして貰わなくてはならない。

「何ヲ、考えテ、いるカ、知らなイ、けド、主人ニ、害は与えさせなイ。」

言った彼女は、再び魔法攻撃を繰り出した。

「ドンクラー・フレイム」

繰り出された紫色の炎球は、その炎が街の至るところに引火し、闇の光を生み出す。

それは轟々と燃え盛り、紅の町並みを丸呑みにして行く。





……狂走。




それは何のために行われている物か、今では両者共々情報が混雑しすぎてよく分からなくなっていた。




――そんな茶番に終止符を打ったのは、希里花本人だった。

「ちょっといいかしら。」


ちょっと遅くなってしまいましたすみませんすみません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ