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第9話

1


「……。」

勇一は無垢の暗闇の中に堕とされていた。

それは記憶?

それとも……


……赤い鮮血がほとばしる心臓が並ぶ、部屋の光景が浮かび上がる。


一体、これは何なのか。

だか、その疑問を発する為の声は出ない。

理解が追いつかないまま、意識が遠のいて……

ナイフを手にした男と、ベッドの上で横たわる希里花の姿が見えたところで、意識は終焉を迎えた。



2



「夢、か……?」

真新しいベッドの上で、勇一は意識を覚醒させた。

夢だとしたらあれは、どのような意味を持つのだろうか。

だがしかし、夢にしてはあまりにも生々しい絵面だった。

ひとまず、勇一は新邸での最初の朝を迎えた。

自室の鏡を見て、髪のチェックを……寝癖が酷い。

「夢の件はともかくとして、洗顔と整髪するか……。」

他愛のない一言で始まった今日は、またどこに向かうのやら。


**********************


「あ、加賀谷くん起きた」

朝食。

テーブルの上に、多彩な料理が並ぶ。

可愛い上に料理も運動も勉強だって上手、という完璧ステータス持ちな希里花さんの手料理の品々である。

彼女の料理は全国高校生料理コンテストで一位を取った程だ。

「頂きます!」

そう元気に声を上げたのは百合ロリ――イリシアだった。

そんなことはさておき、料理の味である。

どういったものか……。

「――!!」

やべえ、めっちゃ旨え!

旨すぎて声に出せなかった。

もう一回。

「やべえ!めっちゃうめえぇぇ!!!」

僕が大声を上げた次の瞬間、僕は沈黙という名の攻撃にさいなまれた。

と、その場の空気を戻すため、僕は気付いた事を口にした。

「あれ?メイデンたちは?」



3



というわけで()、今日もギルドまでやってきた訳だが。

……生憎、うちのパーティーの最強5姉妹が相次いで熱を出し、イリシアがつきっきりで家で看病中。

あの百合ロリ、何かしでかしてなければいいが。

一先ず、ギルドのクエストのチラシを順番に視界に入れる。

「……ん。」

僕が気になったそのチラシには、こう書いてあった。

【殺人鬼の討伐依頼】

「討伐って……モンスターかよ……」

まあ、モンスターみたいなものか。

なんせ極悪非道な犯罪者なのだから。

僕はそのクエストを受けることに決めた。

――女の影が一つ、勇一達をただジッと見つめていた。

……その影の存在に勇一達が気付いたのは、もうまもなくの事だった。




4




「グリシー街3丁目の59……ここか。」

ボロボロの茶屋。

勇一の目にはそうとしか見えなかった。

(だが、ここは殺人鬼のマイホームってわけか。)

勇一が、そう思いながら扉に手を掛けた、その時。

「何故、私ノ、家、知ってル、ですカ?」

女の声が、勇一達に掛けられた。

その声に釣られ、勇一達は背後を振り返った。

色気を醸し出す服装の、痣だらけの顔の女。

その女の眼は、狂気に染まっていた。

「お前は……。」

「私ハ、あの方ノ、眷属。」

……眷属、ということは、吸血鬼が背景にいると見える。

やけに喋りが片言な女は、そう言うと希里花を指差し。

「そいつの心臓、もらいに来タ。」

狂気に染まった、あの日の夜。

その日を思い出しながら、勇一達は一心不乱に駆け出した。

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