第7話
1
……見覚えのある、丸い魔方陣。
そこから降りてきた、白い羽衣を纏ったその彼女はこう言った。
「今回は私が助けてあげましょう。でも、この戦いが終わったら、また冒険を見せて下さいね。」
……は?
いきなり見ず知らずの人に言われても意味分からねえんだが。
でも、どこかで見覚えはあるような顔立ち。
うーん誰だったっけ。
僕がそう思っていると、希里花さんが「うーん」と耳打ちをし、こう呟いた。
「……女神、さま?」
そうそう。
女神さまだ、女神さま。
「……って、ええ!? 女神さま!?」
思わず僕はそう叫んでしまった。
「女神さま……女神さま!?」
僕の叫びを先頭に、その驚きは他の三人にも伝わっていった。
「女神さま。あれが――。」
とグリネア。
「女神さん、随分とまた胸が……。顔をあそこに沈めたい。」
とイリシア。
ってかまだレズってんのかイリシア。
「女神さまがなんでここに?」
と結衣奈。
もちろん、イリシアを除く三人の疑問の答えは僕にも分からない。
なぜ、女神さまがいるのか。
その真相は、本人に聞いた方が早いだろう。
いや、本人より、本神のほうがいいか。
……まあ、どっちにしろ、今は無理そうだが。
「|リ・ゲラ・フラッシュ《re getup frush》!」
それにしても、女神さま。
凄すぎです。
2
……結局、リュレスタ討伐は全て女神さまがやり遂げた。
とりあえずメイアンたちの状態異常を希里花さんに解かせて、女神さまに話しかける。
「あの……、ラブコメって、なんの話ですか?」
僕がそう聞くと女神さまが、「それはね……」と言い、続けてこう僕に囁いた。
「あなた、希里花ちゃんのこと、好きでしょ。」
「……!」
「あははやっぱり!」
彼女はそう言って、楽しげに笑った。
「ど、どうしたんですか?」
そんな彼女を見て、希里花さんは彼女にそう聞いた。
「ああ。勇一くんがね。」
彼女はそう言って、ニマッ。といたずらに笑った。
「ちょ……。」
僕は(恋愛的な意味で)危機感を感じ、それを止めようとした。
しかし彼女が次に発した言葉は、意外なものだった。
「希里花さんが魔王になっちゃったけど、お願いだから倒さないで欲しいって。」
……は?
なにそれ。僕はそんなこと、一言も言ってないぞ。
そうか。女神だから見透かしてやがんのか。
「……加賀谷くん。」
……ま、希里花さんの声のトーン的には、評価が上がったみたいだしまあ、よしとするか。
「まあ、とにかく、今言ったことだけは、必ず守ってね。」
女神さまは、最後にそう言って、天界へと帰って行った。




