第14話⑥
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「……っ! このやろーっ!」
加賀谷くんが倒れたのを見て、真っ先に結衣奈ちゃんが飛び出し、呪文を唱え始める。
「結衣奈ちゃん!」
呪文を唱え終わったのか、軽く瞳を閉じ、手に神経を集中させているのが分かる。
「みんな! 3mくらい下がって!」
「……でも!」
「良いから!」
「……分かった。」
そして彼女は、一度、大きく息を吸う。
「メイクソード・アンドトランスファー!」
その瞬間、彼女の後ろから、複数の剣が飛び出し、その剣は、スライムの身体に降り注がれた。
まるで、剣の雨でも降っているかのような光景で、剣が床に次々と絶え間なく突き刺さっている衝撃もあってか、軽く床から振動を感じる。
そしてしばらく経つと、攻撃が終わったのか、床の僅かな振動が消えた。
「ふう。ふう。こんな感じで……、倒せたかな……?」
彼女はずいぶんとMPを消費したようで、少し脚がガクガクと震え、魔法の杖をに手をかけ、倒れないように体を支えていた。
そういえばキングスライムは倒せたんだろうか。
ベチャッ。ベチャッ。
……いや、まだ倒せてない。
まだHPは、50000もある。
「クソぉ……。絶対……。絶対許さない。」
「イリシアちゃん。それとグリちゃん。結衣奈ちゃんを岩陰に。」
「わ、わかりました。」
「わかったよー。」
「ふえっ? ちょ、イリシア!? グリ!? 何なの、どこに連れてくの! ちょっと待ってよ!」
「キングスライム……。私はあなたを、絶対に許さない。……まあ、後で再生出来るけど。……と、とにかくあなたを絶対に倒す。」
今ね私、加賀谷くんのマネして決め台詞言おうとしたんだけど、やっぱりダメだったわ。
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えー。
まず、一階と二階の攻撃方法を確認しておいた方がいいのかしら。
でも、確かどっちも、同じ攻撃方法だったような……。
まあいいわ。
そうだ。この機会だし、あの魔法使っておいた方が良いかも。
たしか属性は光の魔法。
とりあえず呪文を唱えましょう。
「re getta of the healing and bob resident」
それで、えっと、発動コマンド。
「デッド・レジデント!」
その瞬間、キングスライムは白く淡い光に包まれ、中で何が起こっているのかは分からないが、グチョッと音がして、光が消えた時には既にHPは6000程度まで減っていた。
大丈夫だ。これなら勝てる。
そう思った私は、いつも通りに、あの魔法を放った。
「ダークフレイム・ヴィントストーム!」
こうして合計67954ダメージを与え、約3時間にわたるクエストは終了を迎えたのだった。




