第12話
前回までのあらすじ
初めてのクエストを終え、宿屋に泊まった夜。
大好きな元クラスメート・須賀 希里花に魔王であるという衝撃的な事実を伝えられた主人公・加賀谷 勇一は、とある嫌な夢を見た。
そんな事を抱えながらも、昼食を終え、クエストに行こうと、ドアを開けると、勇一はある少女と衝突。
するとその少女は勇一の名前を呼んできて……?
1
「加賀谷くん? なんでこんなところに……。希里花さんまで。」
え? この娘誰? 髪で隠れて顔見えないんだけど。
んー。でも、どこかで見たことあるような。
と、その瞬間。髪がなびき、顔が見える。
「もっ、もしかして、お前、華宮か!?」
「……フッ。そう、私はあなたのクラスメート、華宮結衣奈よ。」
「なっ、なにいっ!? ……で。なんでお前こんな所に居るんだ。」
「……へへっ。」
……
宿屋のフロント。
一旦希里花も中にいれ、彼女のアニオタ本能が炸裂しないよう、見張らせておき、荷物をおろした彼女と話をした。
「そうか。書店に突っ込んで来たトラックに轢かれて……。」
「そのとーり! ポックリいっちゃったの!」
「ポックリって……。お前めっちゃ軽く言うな。もう少し落ち込んだらどうだ。」
「だってー。異世界に来れたんだよ。興奮モノじゃん!」
2
華宮結衣奈。
希里花と同じく、僕のクラスメートで、それでいて幼なじみである。
両親は既に死んでいて、今は違うが、親戚の家に居座っていた。
教室ではいつも異世界もののラノベばかり読んでいて、「ぐふふ……。ぐふっ。ぐふふふふ! ふふっ!」と気持ち悪い笑い方をしていたので、クラスのみんなは恐怖を感じて、彼女に近付くことさえなかったが、実は彼女、顔だけ見ればかなりの美少女なのだ。
俺が断言する。
顔だけは、顔だけはかなりの美少女であると。
「ところで加賀谷くんは何でこんな所にいるの?」
彼女はそう聞いてきた。
僕はその質問に、顔を赤らめ、「それは……。それはだな。」と、あたふたしていると。
彼女は僕の耳に口を近付け囁く。
「希里花さんを追って来たの?」
その囁きに僕の表情は赤らみを増し、やかんでお湯も沸けるくらいの熱が出た。
「なっ、なななっ、なんでその事を知ってっ……。」
「部屋にあれだけの写真があれば気付くわよ。」
そして僕の感情は爆発した。
「うわあ~ッ!」
そして僕は逃げ出した。
結局その日、僕は恥ずかしさで引きこもり、クエストに行くことはなかった。
……クエストはまた、明日に行こう。




