第11話
1
翌日。朝食にて。
イリシア起床前
「はあーっ。」
僕は早々に、溜め息をついた。
「加賀谷くん、どうしたの?」
希里花さんが、可愛い瞳で僕を見つめて言ってくる。
その質問に対し、僕は、
「いや、ちょっと嫌な夢見てさ。」
と返した。
「なになに? どんな夢?」
僕はその質問に、
「希里花さんが出てきてさ。それで……。」
『周りの女子にいじめを受けてた。』と言おうとしたところ、希里花さんからまた問いかけられた。
「ちょっと待った。つまりその嫌な事は私って事かな?」
「違うよ! むしろ逆だし……。」
僕は最後の言葉を空気に滲ませるように、かつ希里花さんに聞こえないように言った。
「そう。……最後何か言った?」
「いっ、言ってねーよ!」
僕はそう返した。
「そうなの? ……そういえば、その夢って、どんな夢だったの?」
……!!
どうしよう。
この場合、言った方が良いのだろうか。
しかし彼女を傷つけるかも知れない。
どうしよう。どうしよう。どうしよう……!
「加賀谷くん?」
希里花さんが肩を叩いてくれて、僕は意識を再び現実に戻し、それとともにステータス画面が僕の視界を邪魔した。
僕は自分で肩を叩いてステータス画面を戻し、希里花さんへと目を向けた。
「ごっ、ごめん加賀谷くん! ……聞かないほうが良かった?」
「う、うん。僕の為にも、希里花さんの為にも……。」
2
イリシア起床後
「うっわあー! 美味しそ~う!」
「この料理って、何ですか?」
「当宿屋自慢の、鬼魚のマンドラゴラドレッシングがけでございます。ごゆっくりどうぞ。」
ピラニア!? ピラニアって、あの、アマゾンとかに住んでる肉食魚!?
めっちゃモンスターの味しそうなんだが。
そう思いながらも、俺は鬼魚を口に含んだ。
「……!? なんだこれ! めっちゃうまい!」
意外にも味は良かった。
そう思い、僕と希里花が安心した次の瞬間。
ブスッ。
「ウワッダアアアアアアア!」
鬼魚の歯が、舌に突き刺さった。
「加賀谷くん!? どうしよう。宿屋の人を呼ばなきゃ!」
3
「本当に申し訳ありませんでした! この事は、何かお詫びをさせて頂きます! なんなら、斬首でも!」
「いや、良いですよ。もう治癒もしてもらったし。」
「そうですか。ありがとうございます。では、今後この旅館を利用するときは無償でというのは……。お願いします! 何かお詫びしなければこちらも我慢が出来ません!」
「……ああもう。それでいいですよ!いいから手を離して下さい!」
「これまたご迷惑をおかけしました!何かお詫びを!」
「だから、もう良いですってば~~~っ!」
……
「それじゃ、そろそろクエストに行くか。」
「そうね。」
そして僕たちは、出口へと向かった。
チェックアウト時。
「お客様。」
「はい?」
「こちら、無償で利用する際のカードです。先程は申し訳ありませんでした……。」
「あ、いえいえ。別に良いんですよ。……これからも、この宿屋を利用させて頂きますね。」
「良い1日を。」
とまあ、一連のやり取りが終わった後。
僕はドアを開け、外に出た。
その時。同じくらいの女子が、ぶつかって来て、お互いに後ろに倒れた。
そして。
「グハッ! う、っだだだだだだだだ。すみません――ってあれ?加賀谷くん?」
その女子は、僕の名前を呼んだ。




