疑問
あと少しで一万文字
惜しかった。
「___ と、こういう理由でして…」
「そうだったのねぇ……大変ね、それはぁ」
昨日、俺は魔族についていろいろと調べてみたのだが、分かったことは何も無かった。
パールティングヴェルトを境目にして南の向こう側に住む魔族。
彼らは今、何をしようとしているのか?俺に会いに来たあの魔族は何をするつもりか?分からない………それにここじゃぁ情報もないし……いや、そもそも「魔族」について語られている書物とかあるのか?この国だと違法になるんじゃなかったっけが?調べるのって………いや、今はまだ何も出来ないのだから考えてもしょうがない……今はとりあえず……
「何でその人が家にいるのか聞きたいんだけど……」
「どこにも行く場所がないんだから仕方ないじゃない……それにここら辺じゃ、ここぐらいしか人を止める場所がないんだから」
「いや、まあ…そうなんだけど…」
そう……今はこっちが問題だろう。
今、母さんと話していたのは昨日俺が会った女の人だ。
あの後俺はこの人を家まで連れて行って皆に紹介し、今日だけということで泊まったのだが……
「昨日は泊まったらすぐ出ていくっていう事じゃなかったぁ?……」
「だって…話を聞いていたら可哀想で……」
「はぁ…」
ローブを来ている女の人…確かアルマだったか?彼女は記憶がないとかではないらしい。
アルマさんが暮らしていたのはここよりももっと南の方に行った森の中だそうで、ひっそりと両親と暮らしていたらしい。
だが、小さい頃に両親が魔物に襲われそのまま帰らぬ人になったと、それでその時からずっと一人で暮らしていたが、ある時その家も魔物に襲われたらしい。
まあ、そりゃあ何も魔物避けの対策をしてなければそうなるだろうな。
と、まあそんな訳で家を出て北の方へと旅をしているのだと。
この話を聞いた時は怪しいなんてもんじゃなかったが母さんは……
『 うぅ……ぐすっ…そ、そん事が…』
まさかの号泣。
これには父さんもやれやれと頭を抱えた。
そして、今はさらにアルマさんがここに来るまでの経緯を話していた。
それでまた母さんは泣いていた。
「大丈夫よ、アルマさんは……」
「すまないな…迷惑をかけて…」
「迷惑だなんてそんな!……何でも言ってください私たちに出来ることならしてあげたいんです!」
母さんらしいというかなんというか……どんな人でも助けようとする、それが良くても悪くても……。
「そう言ってもらえると有難い……では、ひとつ…村を見て回りたいと思うのだか…」
「あらっそれなら丁度良かった!アル」
「なに?」
「貴方…午後これから森に行くでしょ?」
「え〜…」
「まだ何も言ってないじゃない…」
「村の案内でしょ?…」
「いいじゃない〜たまには…」
なんて面倒な事を……
「いや、でも俺じゃなくても…」
「行ってきなさい」
「だから…」
「行ってらっしゃ〜い」
「…でも__ 」
「じゃあね」
「えぇ……」
◆◇◆◇
「ハッハッハ!!」
「笑い事じゃあないんだけど……」
あの後ほぼ強制的にと言っていいぐらいの母さんの言葉に渋々負けて俺は村の案内人を任された。
そして、今は玄関の前でアルマさんを待っているところだ。
「いいじゃねぇかたまには…お前毎日、鍛錬鍛錬だからな」
「これでも足りないぐらいだよ…」
「ん?何だって?」
「いや……というか父さんは村の見回りは?魔物とか大丈夫なの?」
「あ〜それが今日は……「冒険者組合」から冒険者がここに派遣されて来るんだとよ……」
「ん?……ギルド?…冒険者?」
「何だ知らなかったのか?」
「知らなかったも何もそんな団体があるの?国の騎士とかいるのに…」
「まあ……冒険者っていうのは騎士とか魔法士とかとはちょっと違うからなぁ……そもそも冒険者組合自体がこの国のだけの団体じゃないからなぁ」
「どういう事?」
「冒険者組合は他国にもあってな……協働団体って感じだ……」
この世界にも冒険者がいたのか………いや、まあいない方がおかしいのだが……だって異世界って言ってそういうのが無いとね〜……雰囲気大事、雰囲気ね……。
「まあ、傭兵みたいなもんだな……」
「派遣ってことは国から任されたってこと?何で冒険者が?」
「さぁな…こういう仕事は冒険者に任されるのがお決まりだ……騎士とかの仕事じゃないってな…国から冒険者組合に依頼が来て今回ここに派遣されてくるんだと……俺はその冒険者と一緒に今日は見回りだよ」
「へぇ〜……」
「ま、冒険者組合に興味があったら行ってみるといいぞ〜」
「は?……何でそんな話になるんだよ…」
「なんだぁ?…興味なかったか…」
「いや、入るとは言ってないだろ…」
「俺入ってるぞ…冒険者組合…」
「は?」
「だから俺、冒険者だって」
「……ちょ、どういう__ 」
「ごめんなさいねアル!遅くなっちゃったかしら?」
「………」
くそ……タイミング悪い……どういう意味だ?父さんが冒険者?騎士なんじゃないのか?何なんだよ……。
「いや〜大分遅かったけど何してたんだ?」
「んふふ……つい夢中になっちゃった」
玄関の前には母さんとローブではなく母さんの私服を借りた、アルマさんの姿があった。
「……」
「何見とれてんだよっ」
「まあ、見とれてなかったと言えば嘘になるね……」
「お前、面白くねぇなぁ……」
ただの私服だというのにアルマさんが着ればとても上品で気持ちよく見える、そして、服の色がほぼ暗い色で整えられていて綺麗な金髪の髪とあって自然と顔に目線がいく。
その顔もローブ被っていて見えなかったがとても綺麗な顔立ちだ、普通に街を歩けば男がよって集りそうだな。
服はあまり目立ちそうにないが、しなやかで豊満な肢体が輪郭線を強調していて、その姿に扇情的な印象を与えていた。
まあ、一言で言えば似合ってる。
「……ねぇ村の案内だけだよね?……」
「いいじゃない、アルマさんもいいって言ってくれたし…」
「ありがとうございます…こんなに着飾ったのは初めてなので…」
確かに森の中じゃぁ……そんな余裕もないか……って違う違う、あの人の言ってることが本当かどうかまだ怪しいんだから、落ち着け……母さんみたいになるな…ふぅ〜。
「じゃぁ行きましょうか…」
「よろしく頼むアルレット殿」
「何ですか、殿って…普通にアルレットでいいですよ」
「そ、そうか」
「いってらっしゃ〜い」
「しっかり案内してこいよう〜……さて、俺も冒険者の出向きがあるから行ってきますか〜」
「大丈夫?その人達…」
「冒険者なんてどいつもこいつもまともじゃないから気にしてもしょうがない…」
「じゃぁ貴方もまともじゃないわね」
「……泣いてもいい…?」
◆◇◆◇
「__ てなワケで先に森に行っといてくれ」
「わ、わかりました……」
俺は今、急なアルマさんの村案内人役として一緒に行動しないといけない為、弟子の皆に案内が終わってから森に行くと伝えていた。
はぁ……村の案内とか自分で殺ればいいのに……あの人は……てかそもそも紹介できるような場所なくないか?
「すっげぇ美人だなぁ……」
「そそそうだね…」
アレクとエドウェルが動揺しまくってる。
まあ、そりゃあそうなるよな、誰だって見とれるよ、こんな人。
レイナやサアラもアルマさんをチラチラ見ては顔を赤らめてるしな。
そして、アレクやエドウェルの視線に気がついたのかアルマさんは二人を見てニコッと笑顔を見せた。
うあー……。
「い、いい!い…今笑った…こっち見ながら…あわ、ぁゎゎ…」
「お、落ち着こうよアレクぅ……」
駄目だエドウェル、奴は既に手遅れだ……。
「それじゃぁ行こっか」
そう言ってサアラが皆を連れて森へと行こうとする。
「め、目が離れない……!!ど、どうしたら…?!」
「何わけわかんないこと言ってるの!行くよ!」
「イダダダッ!ごめん分かったって!」
そう言ってアレクはサアラに引きづられるように森の中へと消えて行った。
その途中でも何やらアレクが騒いでいたようだが気にする必要は無いな。
「さて、行きますか…」
「あぁ……中々に楽しそうな者達だったな……」
「そうですかぁ?」
「アルレットとあの者達の関係は?」
「師匠と弟子ですよ……何も師匠らしいところはないですけど」
「それにしては慕われているようだったが…」
「俺は何かした覚えはないですけどね…」
まあ、強いて言うなら魔族の襲撃事件だろうがな…。
「まあ、まずは見て回りましょうか」
「あぁ」
そう言って俺達は村のいろいろな場所を周り歩いた。
だが、ここで分かった新事実。
村には俺の知らない事が多かったということだ。
普段あんまり村を出歩いて見るなんてことしてなかったからなんだがな。
例えば商人達が物を売る店の前を通り過ぎた時なのだが、そこには何と多種多様な種類の品が置かれていてとても見ていて興味を持ってしまったことだ。
危うく案内人としての仕事を忘れて見入ってしまうところだった。
「と、まあ大体こんな感じですけど、どうですか?」
「いい村だな……自然に溢れていて何よりも人々が幸せそうだ……」
「そうですか…」
さて、もうそろそろアイツらの方にも行くか……
「アルマさん、自分はこれから弟子達の方へ行きますが貴方は?」
「もう少し村を見て回たいと思う」
「さっき見てきた以外はあまり目立ちそうな場所はありませんよ?」
「いや、大丈夫だ…」
「では、俺はこれで…」
「助かった、すまないな…」
そして、俺が森へと走り出した時、反対側の方から村の人達の大きな声が聞こえてきた。
一瞬、何だ?、とも思ったが朝、父さんに冒険者の人達が来ると聞いていた事を、思い出して納得した。
「冒険者って人気なんだな…」
そう言いながら俺は振り向くことなくその場を後にした。
だが、俺はこの時気が付かなかった。
村人達の声が冒険者が来たことによる歓喜の声ではなく悲鳴であったことに……。
◆◇◆◇
走り去っていくアルレットの後ろ姿を眺めながらアルマはこれからの事を考えていた。
「ふむ……まだ子供とは言え中身は違うか……確かに少し大人びて見える部分もあるが……さて……どうするか…」
アルマはこの時魔王に言われたことを思い出していた。
『ん〜そうじゃなぁ〜…あ奴もこっちに来る前は妾と同じだよとか何とか言っておったからなぁ…年は離れてないと思うぞ! 』
「んん?……さすがに魔王様とアルレットだとアルレットの方が大人に見えるのだが…………………あぁそうか魔王様の精神年齢が低過ぎるだけか…」
と、アルマはふと思った疑問に勝手に自己解決をした。
そして、アルレットにはあのように言ったがもう覚えた景色をまた見るなどつまらないなと思いアルレット達の様子を見に行くか、とアルマは考えた。
「アルレットの強さも見てみたいものだしな…」
だが、ここでアルマがいる場所とは反対側の村の方から村人達の大声が聞こえた。
「む?…何だ?アルレットは言ってなかったが今日は何か祭り的な何かがあったりするのか?」
アルレットはこの音に興味を示さなかったがアルマは少し音のする方へ行ってみようかと歩を進めた。
さらに近づいたところで声の雰囲気が祭りなどの楽しそうな声ではないことに気付いた。
それは悲鳴のような甲高い声が一瞬響き渡ったからだ。
「なに?……まさか魔族が?!ならばこれはルノーか!」
アルマは一気にその場から駆け出す。
それから、ようやく村人達の姿が見えてきた。
そこには逃げ惑う人々や悲鳴をただ上げ続けるものや泣き崩れるものなど負の感情で満ちていた。
「さて、これはどういう事か……」
逃げ惑う人達の間をすり抜けてアルマはこの騒ぎの元凶を見つけようとする。
「お、おい?!アンタ、そっちへ行っちゃァ駄目だ!魔物が大量に出てきやがったんだ!」
魔物?何故魔物が出たぐらいでそんなに怯えるのかとアルマは思った。
ただこの考え方は人間にとっては異常ともいうべき考え方で魔族にとっては普通の考え方だ。
「そうか、魔物か」
それだけ言うとアルマは直ぐにまた駆け出して行った。
「あ!おいっ!……行っちまったよ」
アルマにとって魔物とは蟻も同然、ただ少し力を加えれば簡単に死ぬ生き物だ。
アルマならば人間が何十時間もかけて倒す魔物を秒すら経過せずに倒すだろう。
そして、そんなアルマが今この現状を見て思ったことが…
「なんて弱い生き物なのだろうな……人間というのは」
弱い、それだけだった。
魔族とでは力の差がありすぎる、魔物が出たぐらいでこのザマなのだ。
これを見てからではアルレットへの期待など薄くなってしまう、魔王が探していた者だとはいえそこまでの強さをアルレットが持っているとは思えなかった。
それでも人間にも人の域を超えた者がたまにいる。
アルレットも、そういう者達と同じなのだろうとアルマは思った。
そして考えているうちにさらに悲鳴は増していく。
「む?1匹ではないのか……」
アルマがついた頃には目を覆いたくなるような光景が広がっていた。
家の壁から地面まで至る所に血の跡がべっとりと付いていた。
その中で何人もの男が壁にもたれかかって倒れていたり、地面に倒れていた。
「ふむ……傷口は?」
アルマは壁にもたれかかっている一人に近づき傷口がどこかを見た。
彼は胸を三本の爪で抉られるようにバッサリと裂かれていた。
これはもう助からないな……そう思いアルマは魔物を探しに行こうと歩きだそうとした時、不意にアルマは手を掴まれ、後ろを振り向く。
アルマの手を掴んだ彼を改めて見ると動けているのも不思議なぐらいの重傷だった。
「それ以上動くと胸の傷が開いて死ぬぞ」
「…ゴハッ……ハァ…」
彼はただぼんやりとアルマを見つめていた。
頭からの出血もあるためか彼は今気絶する寸前であろうことがわかる。
ただそれでも必死に意識を保って誰かも見分けがつかなくなっている目でアルマを見ていた。
「…ま…だ……ハンナが……」
「もう喋るな」
そう言ってアルマは掴まれていた手を無理矢理離す。
そして、何も言わずにアルマはその場から再び駆け出して行った。
その姿を彼は安心したように見つめていた。
自分の言いたかったことが十分伝わったから。
そして、彼は目を閉じてその場に崩れ落ちていった。
アルマは走りながらも先程のことを思い出していた。
彼は意識が朦朧としていたにも関わらず助けを求めるでもなくただ自分の恋人の心配をしていた。
アルマにとって人間のもっとも不思議な部分であろう。
「やはり人間とは非力で脆く不思議な生き物だ」
だが、魔族にとっては「自分よりも他人」という意識が唯一人間に劣っている部分であろうとアルマは思う。
自分もあまり良く理解できないその感情それはどうしたら芽生えるのかアルマには分からなかった。
魔族にないものを持っているそれが人間、人族というもの種族なのだろう。
「おっ?あれは……なるほど」
アルマが走り出してからそう遠くない場所でその魔物を見つけた。
その魔物はその手であの男を襲ったであろう長く鋭い鉤爪が付いておりそこには血がべっとりとついていた。
体は全身体毛に覆われ手入るものの筋肉質にも見える、その姿は人間と猫科の生物が合わさった外見をしている。
「【キャットフォーク】とは…また雑魚いのが出てきたな」
キャットフォークはアルマに気付くと低い唸り声をあげて威嚇をしてきた。
だが、アルマは余裕の笑みを絶やさずキャットフォークに近づいていく。
「どうした?先程の村人達みたいに切り刻んだらどうだ?」
アルマの言葉を理解してか、声を荒らげながらキャットフォークはアルマに襲いかかる。
「ふむ…さすがに魔物の中では速いな…」
「っ!!!」
キャットフォークという魔物はその優れた敏捷性と鋭い鉤爪で相手の死角を的確に突いてくる魔物だ。
魔族といえども素手での戦闘能力なら自信を持って勝てるとは言えないだろう。
だが、アルマは魔族の中で魔王の次に強い者だ。
キャットフォークの速さなど、遅すぎてゆっくりを通り越して止まっているかのように錯覚してしまうほどだ。
「だが、……私にとっては遅すぎて話にならんな…」
「ギャァアッ?!?!」
アルマはキャットフォークの首を鷲掴みにすると勢いよく地面に叩きつけた。
その破壊力は留まることなく地面に亀裂が入り割れていく。
「あ……後で謝っとくか…しかし片手でこれとは……力加減が難しいな」
叩きつけられたキャットフォークはピクリとも動かない、叩きつけられた時の威力もだが、アルマの手の握力だけで首の骨が粉々に砕けていたのだ。
即死だ。
「む?あぁ……そうだったなまだいたのか…」
アルマの周りにはいつの間にかキャットフォークが数体、アルマを囲むように群がっていた。
キャットフォークは基本的には群れで行動する魔物だ、そして、キャットフォークは死に際にキャットフォーク達にしか聞こえない特殊な断末魔を上げる、その断末魔で自分の居場所をおしえるのだ。
そして、アルマはそのせいで囲まれているのだが……
「雑魚は雑魚でしかないな……今度は数か?くだらん」
来いよ、という目でアルマはキャットフォーク達を見る。
そして、キャットフォーク達は一斉にその場から消える様にアルマに襲いかかっていった。
◆◇◆◇
時間は少し遡り、ここはバルバッハ村、入口。
そこに一人の男が立っていた、ロマンである。
彼は今から来るであろう冒険者を出向くためここで待っているところなのだ。
「はぁ…やっぱり冒険者はやめて欲しいよな……俺の部下とか大歓迎なんだけどな」
などと愚痴りながらロマンが待つこと数分後、遠くに馬車が一台こちらに向かってくるのが見えた。
「来たか………ケッ」
人を出向く側の顔がそれでいいのかと言われてしまうようなレベルで前の馬車を睨むロマンだったが馬車が近づくにつれ真顔になっていった、まさにリアルスローモーションである。
「お待ちしておりました冒険者方、私がここの当主ロマン=エジェロワールです」
先程までその者達を睨んでいた者とは思えないようなしっかりとしたあいさつをロマンは気品溢れる笑みで言った。
「これは…こちらこそよろしくお願いします私の名前はフランツ=ラトゥール と言います、そして、こっちが…」
「ジョエル=ゲラン だ、まあ、よろしく頼むぜ領主の旦那!」
意外にまともな奴らか?、とロマンは思った。
最初に自己紹介してきた男、彼は落ち着いていてしっかりした者のように見えた、胸板は厚く、背筋が伸びていた。
誠実さを感じさせる眼差しのせいか大人びた安定感があった。
もう1人の男はニヤけた表情でどこか気のぬけた雰囲気で軽そうな男に見える。
顔は普通に整っていてイケメンではあるのだが、さっきのしっかりとした人物よりは真逆の印象を持つ。
「それでは屋敷まで案内させていただきます」
「そんなに畏まらないでください!私たちはただの冒険者という身ですので……」
「いえ、それでもこの村のために来てくださった方に失礼な態度はとれませんので…」
ついさっきまで態度が顔に出るぐらいだったのによく言ったものであるが、ロマンには過ぎたこと、気にしてもしょうがない。
「そうですか……それでなのですが…自分達はすぐにでも魔物の見回りに行こうと思うのですが…」
「このままですか?」
「えぇ、急ぎと聞いてますので…」
「それはありがたい事ですが……」
「旦那、俺達は依頼できてるんだぜぇ?なら最速で最善を尽くすのは俺達の仕事だ、しっかりと完璧に依頼をこなして報酬を貰うさ!」
「で、では、そうしましょうか…」
そう言って三人は村の方まで歩き出していく。
「魔物が現れるのは東の方が多いですね」
「そうですか……どうする?」
「森の中は二手に別れて言った方がいいよなぁ……そのまま索敵範囲を広げていけばいいだろ」
「よし、そうだな」
「………」
ロマンはこの時思った。
こいつら……できる、と。
「では、あちらから__ 」
ロマンが言葉を言い終わる前に突然村に爆音が響き渡ったのだ。
「?!…今のは?!」
「村の中からだな…」
「む?……あの辺は」
ロマンは爆音が響いた場所の近くにはアルレットがアルマを案内している場所も入っているかもしれないと思った。
「すみません!私に付いてきてください!」
ロマンは二人に大声を出して先導していく。
「了解しました!」
「はいよっ!」
ロマンは全速力で駆け抜ける。
一気に爆音がなった場所の近くにまで来たロマンは爆音の正体は何かと目を見開いてその場所を見る。
そこには正に地獄絵図と表現するに至る光景が広がっていた。
辺り一面血の海でそこら中に魔物の内蔵やら目やら部位がバラバラに散らばっていた。
散らばっている部位からどんな魔物か判断するのが難しいぐらいにグチャグチャになっていた。
だが、ロマンに追いついてやっとこの現状を理解したフランツが呟く。
「こ、これは【キャットフォーク】な…のか?」
「あぁ、コイツら全部キャットフォークだ…」
それに続いてジョエルがフランツの呟きを肯定する。
一体ここで何が起こったのか?どうしてこんな数のキャットフォークが無惨な姿になって散らばっているのか?
そこまでの考えてから血溜まりの中で一人、直立不動で佇む女性の姿がそこにはあった。
全身に血を浴びて唯一血がついていない部分からはその女性の服の色が元々暗い色であったことがわかる、髪も金色の髪に血が飛び散り、この場にはあまりにも相応しくない美しいという気持ちに一瞬思えてしまったのだ。
そして、ロマンには見た事のある服装だった。
「あ、アルマさんか?……」
「領主殿か……すまない…整備された村の地を壊してしまった」
「あぁ…それは……構わない…と…も…」
アルマは普通に話している時と何ら変わらず平然と返答した。
ロマンはただ反応するしかできなかった。
この光景を見て感じるものそれは恐怖しかなかった。
アルマというあの女性、彼女は一体何者なのか?
これは全て彼女がやったというのか?
やはり彼女についてしっかりと調べるべきだろうとロマンは思った。
ロマンがそんなことを考えている時後ろにいるフランツは一人後ろでブツブツと呟いていた。
「し、死の女王か……」
死の女王、確かにそう呼ぶに相応しく、その光景は余りにも人の域を超えた異形な光景だった。
その光景を三人はただ眺めることしかできなかった…いや、それぐらいしかこの場では許されていないかのような感覚にさえ三人は陥っていた。
すみません。
魔王の一人称を変えさせていただきました。




