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旅の者

ポイントがブクマがコメントが………グフフフ


 バルバッハ村。

 そこはルーミン・アーク王国の領土内にある村。

 ルーミン・アーク王国は国の中で一番南の地にある国である。

 そして、そこから更に南方にあるのがバルバッハである。

 だが、昔この南の地は人が住めるような場所ではなかった。

 それは世界を分け隔てる山脈「パールティングヴェルト」その麓にある大樹の大森林から魔物が溢れ出てきて周辺の森を住処にしていたからだ。

 それに怯えた人間達、人族(ヒューマン)は自分たちの土地を捨ててまで後退を繰り返していた。

 だが、このままでいけないと人間達の一部の者は立ち上がった。

 そして、更なる魔物の進行を防ぐべく一部の人達の手によって人々が暮らす場所の一番南の地に要塞と壁を築いた。

 それが最古の建築物にして数百年前まで魔物の進行を防いだ鉄壁の要塞「ウルク」だった。

 そして、その一部の人達はウルクの守護兵としてそこに住み、そのままその者達によってウルクから少し離れたところに国が造られた。

 それが現在のルーミン・アーク王国である。

 

 だが、現在、要塞ウルクは無人の要塞となっており更にその役目を果たしていない。

 魔物は世界各地に生息してしまった。

 ある時を境にウルクは突破された。

 その理由は分かっていない、ただ要塞は今は脆く古びていて鉄壁だった時の要塞は無くなっている。

 あるのは壊れた建物だけだ、ただ時代は移り変わっている。

 今は魔石と呼ばれる石によって出来る結界などで魔物の侵入を防げるようになっている。

 そして、遂に人間達は安寧の地を手に入れたのだろう。

 人類すべてが安全に暮らせるようにと願って死に物狂いで頑張って要塞を造り上げた彼らの事など忘れて………。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 「何か最後に重くしてくるなこの本……歴史どこいった…」

 

 そう言ってアルレットは家の中でゴロゴロとしながら本を閉じた。

 

 「あら?珍しいわねぇアルが家にいるなんて」

 「それだけ聞くと俺が変な人に聞こえてくるからやめてほしい……」

 「……?」

 

 一瞬だけ首を傾げたあとにアレクシアはアルレットが手に持っている本に視線を移す。

 

 「アル、貴方が本を読むなんてそれも珍しいわね?」

 「あ、あぁいや何となく…」

 「それ何の本なの?……」

 「この国の歴史」

 「え?そんな本あったかしら?」

 「父さんが持ってた」

 

 この本はアルレットがロマンに頼んで貸してもらった歴史本である。

 だが、意味もなくアルレットが本を読むなんてことはなくちょっとした理由があったからなのだが……

 

 「国の歴史ぐらいじゃぁ…出てこないか…」

 

 国の色々な歴史が載る本ならば、とアルレットは思ったが知りたい情報は載っていなかった。

 もっと関係性の高い本を探すか、とアルレットは考える。

 

 「どうしたの?」

 「いや、何でもない……午後の鍛錬に行ってくるよ母さん」

 「ホント、よく飽きないわね」

 「これしかやりたいことがないからね…」

 「そう、気をつけてねぇ〜」

 「いってきます」

 

 そう言ってアルレットをその場で見送ったアレクシアは家事に移ろうとした時アルレットがテーブルの上に本を置きっぱなしにしているのに気付いた。

 

 「はぁ……父さんから貸してもらった物でしょ……もう」

 

 そう言いつつもロマンの部屋に自分が返してくるか、と思いアレクシアが本を持ったその時、中から何かが落ちた。

 

 「あら…何かしら…」

 

 拾い上げるとそれはメモ書きのようなものだった。

 そして、そこには……

 

 「な…に…これ?アルレットが書いたの?……」

 

 アレクシアはメモ書きの内容を見た後、直ぐにロマンを探しに行くのだった。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 バルバッハの村外れ、森の中、そこで今、静かに気配を消して移動する人影が見えた。

 それは九歳ぐらいの男女二人ずつ、計四人の人影だった。

 その者達は誰かに気付かれないように移動している。

 

 「そっちは?」

 「大丈夫……」

 「行けるんじゃない…!」

 「ダメ……慎重に行かないと」

 

 四人がそれぞれ話し出した時、目の前の木々が突如として現れた闇に飲み込まれていった。

 

 「っ!!」

 「静かに!…こっち!」

 

 四人の中の一人、女の子がほかの三人をまとめて別の道に誘導させる。

 だが、それでも彼らの行動は読まれていた。

 彼らの周りを闇が取り囲んだ。

 

 「あっ!」

 「はぁ……」

 「終わった〜…」

 「ヌググ……」

 

 「はい、ゲームオーバー…終了」

 

 そう言って闇をすり抜けて一人の少年が出てくる。

 

 「お前ら頭使った?」

 

 アルレットだ。

 そして、彼が話しかけた四人は…

 

 「どうやったってムリじゃないですか?!」

 

 四人はアルレットの弟子。

 そして、抗議をしたのはエリーナの妹、レイナだった。

 

 「正直、鬼畜です…」

 

 そう言ったのは四人の中で一番の苦労人とアルレットに思われている、サアラだった。

 

 「オレは…良くわかんないです!」

 

 脳筋のような発言をしたのがアレクだ。

 

 「少しは頭を使いなさい!」

 「強ければそれでいい!」

 「はぁ……」

 

 まあ、一理あるよな……そう思いながらアルレットはアレクを見ていた。

 

 「で、でも……この練習には何か意味があると……思う…よ?」

 

 気弱そうに話したのがエドウェルだ。

 

 「そうだな……エドウェルの言う通りだ…ただ俺に捕まらずに逃げ切る練習なわけないだろ?それだけだったらただの鬼ごっこだろ?」

 「え?どういう事ですか?」

 「お前ら、どうせこのまま四人で組んでいくんだろ?」

 「多分…そうだと思いますよ?」

 

 レイナが肯定する。

 

 「じゃぁ皆で戦えるようにならなきゃ駄目だろ?……あぁとぅ…あれだ…チームワークってやつだよ?協力し合うのが大事」

 「なるほど…!」

 

 アレクが分かったように頷いている、あれは多分、分かってないな、とアルレットは思った。

 

 「だから今こうしてお前らのチームワークを鍛えてんだよ」

 「それにしてもやり方があると思いますよ?」

 「俺に出来るのはこれぐらいだ……あとは自分達で考えて動け」

 「うぅ……」

 「はい、そいじゃぁそろそろ個人の鍛錬に移れ……皆で手合わせしてもいいぞぅ〜…」

 「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 そう言って立ち去ろうとしていたアルレットの前にレイナが立ちふさがる。

 

 「何だよ?俺も早く自分の鍛錬に移りたいんだが…」

 「もっといろいろと指摘してはくれないんですか?!もっと次に活かせるよう指摘を貰えないんですか?!これじゃぁ……何も…」

 「おいレイナ」

 

 レイナが喋り終える前にアルレットが口を開く。

 

 「お前の姉さんはお前から見てどうだった?」

 「え?どういう事で__ 」

 「いいから」

 

 レイナはわけがわからないと言った顔をするがそれでもアルレットの問に答える。

 

 

 「お姉ちゃんは…昔は一人ぼっちで外にいる時のお姉ちゃんはとても悲しそうに見えました……」

 

 レイナは呟くように言った。

 

 「でもアルレット様に会ってから見違えるようでした、そして、お姉ちゃんは魔法もすごい使えるようになってた……羨ましくて自分もそうなりたいと思った…」

 

 レイナは段々と早口になっていく、話しているうちに気持ちが高ぶってきているようだった。

 

 「だから!………アルレット様に教えてもらえば私も……」

 

 レイナはいつの間にか涙目になった目をアルレットに向けていた。

 それに気付いたアルレットは軽い気持ちで質問したんだけどな、と思いつつも駄目なことを聞いてしまったかとちょっと後悔した。

 

 「お姉ちゃんにはいろんな事を教えてたんじゃないんですか?」

 「エリーには何も教えてない」

 

 アルレットがレイナの言葉をさえぎってピシャリと言う。

 

 「アイツには魔力を制御するところしか見せていないしこういうことをすれば上手くなる、などと言ったこともない」

 

 レイナは何も言わずにアルレットを見つめる。

 

 「それどころか俺はエリーといる時に、エリーの魔力を制御しているところを全然見ていない……そして気付いたらあんなに魔法を使えるようになってた……何の助言もしていない」

 

 そう言ってまたアルレットは歩き出した、そしてレイナの横を通り過ぎる瞬間アルレットは後ろを向いて更に一言…

 

 「俺がお前らに出来るのはチームワークの練習の相手になる事だけだ、それか手合わせのな……」

 

 それから「何かあったら知らせてくれ、じゃな」そう言ってアルレットは森の中に消えていき、それを四人はただ見つめるだけであった。

 四人の間に変な沈黙が訪れる。

 聞こえるのは木々がざわつく音だけ……それでもそんな沈黙を破る者がいた。

 

 「エド」

 

 そう言ってエドウェルに話し掛けたのはアレクだった。

 

 「な、何アレク……」

 「魔法の練習に付き合ってくれ、魔力の制御もな〜…」

 「え?え……い、いいけど…」

 

 エドウェルはチラリとレイナとサアラの方を見る。

 このままにしていいのかという気持ちがあったためだ。

 

 「待ってアレク…」

 

 そう言ったのはサアラだった。

 

 「お、どうした?…」

 「アレクは何も感じなかったの?さっきの事…」

 「あ〜少しでもアドバイスとか欲しいよなぁ〜」

 「なっ……」

 

 この男はホントにどうしたらいいのだろうかとサアラはその場で頭を抱えたくなった。

 さっきのアルレットの言葉は少しなら付き合うけど指導はしない、という事ならこれは自分達を放棄していることに何ら変わりはないということだ。

 自分達はちゃんと弟子として見てもらえているのだろうかと不安を覚えるぐらいだ。

 なのにアレクは平然としてる。

 

 「ここで立ってても魔法は上手くならねぇからオレは練習する〜…」

 

 サアラが考えてることなど何でもないようにアレクは練習をするためにエドウェルを連れて歩いていく。

 

 「アレク!…」

 「あ!なぁなぁ…知ってるかぁ?!」

 

 サアラが声を荒らげてアレクを呼ぶと同時にクルっとサアラ達の方を向いて笑いながらアレクは話し出す。

 

 「レイナの姉ちゃんがここを出ていく前に森の中でアルレットさんとレイナの姉ちゃんが戦ってるのを見たやつがいるんだよ」

 「っ!!…」

 

 それは誰もが知らない事だった。

 

 「もしかしたらさぁ…オレらも力付けて認めてもらったら戦えるかもしれないぜ?そしたら何か助言とか貰えるかもな〜」

 

 そう言ってアレクは一人でウンウンと頷く。

 

 「ほんじゃぁまた後でなぁ〜」

 

 そうしてアレクはエドウェルを連れて去っていった。

 その場にはサアラとレイナが残っていた。

 

 「アイツ…考えてるんだか考えてないんだか…」

 「ねぇサアラ…」

 「何レイナ…」

 「私も頑張れば認めてもらえるかな…?」

 「認めてもらえるかどうかは分からないけど動かなかったら何も変わらないんじゃない?」

 

 レイナは先程までと違うやる気に満ちた顔に変わっていく。

 

 「こんな事で落ち込んでられない!私ちょっと頑張ってくる!」

 「うん、行ってらっしゃい…」

 

 そして、レイナは走って森の中に消えて行った。

 

 「みんなも頑張ってるんだから私も頑張らなきゃ…」

 

 

_______

 

 

 「あ〜何か強く言いすぎたかなぁ〜いやでも……ホントのことだしなぁ〜今度いろいろと教える?いやいや…そもそも俺教えるの上手くねぇだろ……あ〜…弟子を鍛えるって難し過ぎだろ……はぁどっか教える者の心得とかそんな感じの本とか落ちてないかなぁ〜……やっぱ〜助言大事ぃ?……でもやっぱりこういうの考えさせるのがいいとか…えぇと…自立だ!自立…うんやっぱ自立してかなきゃ人は成長しなよなぁ〜……それでもあそこはもうちょっと上手く言え___ 」

 

 誰にでも悩み事はある…結局はそういう事。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 時は経ち日が沈む夕暮れ時。

 

 「お、もうこんな時間か…」

 

 アルレットは夕日を見ながら自分の前にぶっ倒れる四人に話しかける。

 

 「おいお前らいつまで寝てるんだ?早く帰らねぇと日、沈むぞ?」

 「も、もうダメ……」

 

 レイナは倒れながら呟く。

 

 あの後、魔法の練習の後、今までずっと四人は素振りをし続けていた。

 アルレット曰く魔術騎士になりたいなら魔法だけに時間をかけるな、とのこと。

 

 「たった何千回か素振りした程度だろ…」

 「き、鬼畜すぎる……」

 

 しばらくの間四人は倒れたまま動かなかった。

 四人がようやく立ち上がって歩く頃には日は沈んでいた。

 

 「じゃぁお前ら気をつけて帰れよ…」

 

 そう言ってアルレットは四人と別れる。

 今日は少し遅いなと思ったアルレットは走って家まで帰った____

 

 

 「ん?」

 

 だが、アルレットは家の近くまで来た時に家の前に何かあるのが見えた。

 それは段々ハッキリと見えてくる。

 

 それはアルレットがこの人生の中で見るのは初めてかもしれない異世界の移動手段で定番中の定番。

 

 「おぉ……馬車じゃないか?……」

 

 そう馬車が家の前に止まっていたのだ。

 一応この村にも馬車に乗った商人達は来ることはある。

 だが、アルレットの生活から分かるように午後は森にいるため見る機会がなかったのである。

 

 「誰か来てるのか?」

 

 家の前の門を通り、玄関のドアに手を掛けて開く。

 

 「ただいま〜…」

 

 それから直ぐにアレクシアが台所の方から歩いてくる。

 ただ、雰囲気がいつもの違うのをアルレットは感じ取った。

 

 「おかえり…アル、父さんから話があるわ」

 「え?…わ、わかった……」

 

 そう言ってアレクシアの後ろを歩きながら連れられていくとそこにはロマンともう二人、全身を鎧で包み腕を組みながら座る騎士のような男達がいた。

 ここに来てアルレットは家の前に止まっていた馬車はこの人達が乗ってきたものだということに気付いた。

 そして、彼らの視線がアルレットに向く。

 

 「君がぁ……アルレット君、かな?」

 「は、はい……そうですが…」

 

 騎士の一人が訪ねてくる。

 

 「私達がここに居ることについて何か心当たりは?」

 「ありませんが……?」

 「そうか……」

 

 そう言って一瞬目を瞑った騎士の一人が直ぐに目を開いてロマンを睨む。

 

 「お前は息子に何を教えていたのだ?……お前の息子がしようとしていたことは違法行為だぞ?……子供だからと言って許されれるとでも思っているのか?」

 

 だが、その言葉にロマンは…

 

 「何の理由もなしにアルレットが動くはずがない」

 

 表情を変えずにロマンは言った。

 

 「まだ12にもならん子供がか……」

 「そうだ……」

 

 はぁ…と騎士の一人が溜め息をしてからアルレットの方を向く。

 

 「君は今日……本で国の歴史について調べていたそうだね?」

 「え、はい…調べてました…?」

 「だが、その本の中から君がメモ書きをしたものとされる紙が見つかったんだよ」

 

 そう言えば書いたな、とアルレットは思う。

 

 「そこには魔族についていろいろとメモ書きがされていたのだが……何を調べているんだい……?」

 「え?…」

 

 そんな事を聞いてどうするのか?アルレットは困惑した。

 まさかこれが違法行為?魔族について知ろうと思うことこそ大罪という事なのか?

 なんて馬鹿げたルールだろう、とアルレットは思う。

 

 「いえ……前にこの村が魔族に襲われたことでこのままでは駄目だなと思って調べていただけです」

 「何を調べていたんだい?……」

 「人間と魔族との間に起こった事でどのようにして魔族からこの地を守ったのか調べてました」

 

 騎士の人達は疑いの目を緩めることなくアルレットを見つめる。

 何をそんなに警戒しているのか?アルレットに分からなかった。

 

 「本当かい?それは……」

 「はぁ……」

 

 いい加減本当の事を言うかとアルレットは諦める。

 それにちょうど国から騎士が来ているんだ、チャンスかもしれない。

 

 「数日前にまた魔族の人が来ましたよバルバッハに…」

 「なっ!!……」

 

 それはこの場にいるアルレット以外誰も知らない事であった。

 シンとその場が静まり返る。

 一回ならまだしも二回もこの村にも魔族が来たのだ。

 異常とも言える事態だ。

 そして、アルレットはその魔族と会ってどんな事を話したか、などを細かく話した。

 

 「なるほど………それで君は王都が危ないと?」

 「はい、必ずアイツらはエリーを攻撃してくる警戒を強めた方がいいと思います」

 

 アイツは俺の大事な人が襲うような口振りだった。

 それでもこの村にいる母さんや父さんは達は襲われないだろう。

 俺の手の届く位置にいるのだから、つまり奴らが仕掛けるのはエリーのいる王都しかない。

 

 「そうか……分かった育成所の警戒を強めておこう」

 「頼みます」

 「それと………さっきはいろいろとすまなかった、そんな事があったとは思っていなかったこの件に関してはコチラに非がある」

 「気にしなくていいですよ〜?自分もそういう決まりがあるの知らなかったですから」

 「あぁ…」

 

 そう言って騎士の人達との話は何とか丸く収まった。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 騎士の人達との話が終わった後、俺は村の入口まで見送りをすることになった。

 騎士の人達は大丈夫と言っていたがそれでも最後まで見送りをすることにした。

 

 「ホントに良かったのか?俺達は…」

 「だからいいですって……分かってくれたならもうどうでもいいですから……」

 「そ、そうか…」

 

 それから少し雑談しながらも村の入口までやってくる。

 

 「それじゃあさっきの事頼みましたよ…」

 「あぁ…分かった…」

 

 そう言って二人は馬車に乗り、この村を出ていった。

 しばらくの間馬車が見えなくなるまで俺はその場に立っていた。

 辺りはもう薄暗く唯一、空の月が常闇の夜を美しく照らしている。

 

 「異世界って何もかもが綺麗だよなぁ……」

 

 不意に言葉を呟いてしまうぐらいに夜空は綺麗だった。

 そして、俺がその場から立ち去ろうとしたその時…

 

 「あの……少しいいだろうか?」

 

 綺麗な声…それでいて少し男っぽい口調、背後から聞こえてきた声に俺は首だけ振り向いてその声の主を見る。

 

 今までどこかに隠れていたのだろうか、突然現れて話しかけてきた者。

 しかもこんな時間にこんな所で何をしていたのか?

 声の主はローブ被っており、顔は見えないがローブを羽織った上からでもわかる曲線の美しい胸部、スラッとした体型で女性だということがわかる。

 だが、それでもただならぬ雰囲気をその人物から感じる。

 

 だ、誰だ?この人……いつの間に…はぁ次から次へと。

 

 「なんですか?…」

 「あぁ…すまないここに村が見えたもので近寄ってみたのだ」

 

 ん?商人とかでもなさそうだな……

 

 「あの失礼ですけど貴方は一体……」

 「ああそうだったな…だが、私は自分の名前以外何も分からなくてな不審に思ってくれて構わない……ただ少しの間だけここにいさせてくるだけでいいんだ」

 「は、はぁ…」

 

 気の抜けてた返事をしてしまったが仕方ないことだろ、だって初めて記憶喪失の人に出会ったからな。

 え?そういう感じの人だろ?

 やっぱ異世界だな!……うんうん。

 

 「名乗るのが遅くなってしまったな私の名はアルマ=シャフ=べリッツ……そうだな私は旅の者という事にしてくれ」

 

 そう言ってローブを着た女性は俺の目の前まで来て「よろしく頼みたい」そう言ってきたのだ。

 

 

 

 

サブタイトル

最後の方でしか意味を成さなかった。

ほぎゃー

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