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裏切り

すみません、書き直しをしていたら遅くなりました。



 会議が終わり魔王にルノーの事についての報告を終えたエルネストは一人城内を歩いていた。

 

 「さて……俺もそろそろ戻らねばな……」

 

 そう言ってエルネストは歩を進める。

 会議が終わった今、もうこの場に用はない。

 ならば少しでも早く自分の部隊に戻らねばならない。

 一から八まである八魔公軍の中でエルネストが持つ部隊は【第五部隊】である。

 エルネスト同様に背中に翼の生えた魔族達の部隊である。

 この部隊は空も自由に移動できるため、敵の背後を突いたり、また空からの遠距離攻撃など様々な戦略で敵を翻弄するのが得意な部隊である。

 エルネストとは日々自軍のために部隊の兵士の育成や戦略の指導などでとても忙しいのだ。

 八魔公と言えどもただ単に部下に命令を下す訳では無い。

 自分が敵役になり強者との戦闘を学ばせる経験をさせたり先に説明した通りのことを何度も教え込んでいるのだ。

 八魔公は意外とやる事が多く忙しいのだ。

 そんな中で招集を掛けられたのだ、エルネストからすれば面倒臭いの一言である。

 逆によくルノーやアルマは何回も会議を出来ているなという感じである。


 「こんな時に俺達を呼び寄せるとは全く………いや、逆にこれが目的か……?」

 

 エルネストは不意に出た考えに思考を巡らせる。

 

 先程まではただ単に全員を招集した理由が我々が探していた人間が見つかったことだと思っていた。

 だが、例の子が見つかったというのならわざわざ自分達を呼び寄せる必要などどこにもない。

 それに見つかったことを言いたければ部下、或いは魔法などで見つかった事、今後の方針についてを報告すればいいだけだ。

 では、何故自分達を呼ぶ必要があったかなのだが、それは、ルノーが全員に今後の方針は監視と偽り自分は何かしら仕込むことだと思っていた。

 だが、もしルノーが俺達を呼び寄せる事自体も目的としていたなら……

 ルノーは既に行動を起こしている可能性が高いと言える。

 

 「だが、まだ予想でしかない……魔王様に一応の報告をするか?…」

 

 エルネストが悩みこんでいると不意に脳内に声が響いた。

 

 『 八魔公は至急、王座の間に集まってくれ、魔王様より大事な話がある』

 

 脳内に直接話しかけてきたのはアルマだった。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 「皆、集まったようだな……」

 

 魔城ディス・カステッロ王座の間にて再び八魔公呼び集められていた。

 だが……

 

 「あら?ルノーの姿がないわね…」

 

 そう言ったのはジェルソミナ=スクラッチだ。

 そして、確かにとエルネストとは思った。

 さっきまでの考えがあったためこの場に来てルノーに話をしようとしていたのだがそのルノーが1人だけいない。

 エルネストは嫌な感じを覚えつつも膝を着き王の言葉を待っていた。

 

 「魔王様、全員集まったようです」

 「あぁ…」

 「?」

 

 ルノーがいないのに全員集まった?

 どういう事だとエルネストは思いつつも静かに次の言葉を待つ。

 

 「先程……ルノー率いる八魔公軍【第一部隊】が忽然と姿を消した」

 「っ!………」

 「なっ!」

 「そりゃあぁぁやべぇぇことになったなぁァ」

 「え、ルノーが?嘘…」

 

 自分の考えは当たっていたのかとエルネストは思った。

 それは可能性に過ぎなかった事だった……まさかホントにルノーが行動を起こすとは思ってもいなかったのだ。

 

 「それでルノーは今どこに?……」

 

 そう言ったのはボイディ=ゲンガーだった。

 普段通りにしているように見えるがその怒りは隠せないでいるように見える。

 

 「それは分からん……ルノーが見つけたと言っていた人間の村に行った可能性はあるがいきなり部隊ごと消えるのは不自然だ」

 「どこかに潜伏していると?」

 「そうだな……なりを潜ませていることは大いにありえる」

 「ではどう致しますか?」

 

 アルマが魔王に尋ねる。

 

 「今はまだ警戒を強めておくしかなかろう……それとエルネスト」

 「はっ……何でしょうか?」

 「貴様の部隊で例の子の村の警戒にあたれ……今はそれしか出来ることは無いな」

 「ハっ!」

 「他の者も警戒を怠るな!何としてもルノーの好きにはさせるな!…それと部隊を各地に散らばせてルノーの動きを探れ!」

 「「ハッ!!」」

 「あ…あの魔王様!質問いいでしょうか?」

 「む?……何だ?ジェルソミナ」

 「そ、そのルノーはホントにその人間に攻撃を仕掛けに行ったのですか?」

 「その可能性が高い……正直に言ってルノーは、もはや裏切りとも言える行為に走っている、部隊ごと消えるなど何かしら企んでるとしか言えん……先程も言ったが警戒はしておくべきだな……場合によっては必ず殺す」

 

 最後の一瞬だけ魔王の目付きが冷酷なものに変わる。

 ルノーが怪しい行動を少しでも取れば直ぐにでも殺しかねない勢いだ。

 

 「さてと……また呼び出してしまって申し訳ない、皆の者行動に移ってくれ」

 「いえ、お呼びとあれば我らは直ぐにでも駆けつけます」

 「ハハっ!そうかそれは(わらわ)も助かるな」

 「では……」

 

 そうして八魔公達は王座の間から出ていく。

 そして、八魔公が出てからすぐに王座の間に爆音が響いた。

 魔王が壁に拳を叩き込んだのだ。

 壁は天井まで亀裂が入りあと少し魔王の拳の威力が高ければこの部屋が崩れていた、絶妙な力加減だ。

 

 「ルノーならばやりかねんな…………殺す以外の選択肢無し……!」

 

 魔王は何も無い空を睨みながらブツブツと独り言を言い続けるのだった。

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 魔城ディス・カステッロその地下その最奥にはでかく、それでいて錆び付いているような大門があった。

 それは各八魔公達の部隊がある根城へと続いている。

 転移門と呼ばれる門である。

 魔城から遠い場所に根城を持っている者達はここを通ってここにやってくる。

 エルネストもその一人である。

 そして、エルネストともう一人リュドヴィックは地下を歩きながら大門を目指していた。

 

 「アイツ……遂にやりやがったなぁァ…」

 「嫌な予感が当たってしまった…」

 

 ルノーは相当人間を敵視している。

 奴にこれ以上好き勝手動かれては例の子に魔族を敵視されかねない。

 それは……それだけはあってはならないのだ。

 

 「必ず探し出すさ…」

 「おしえてやんねぇぇとなぁァルノゥにはよぅ」

 

 二人が大門の前まで来ると静かに、ゆっくりと門が開いていった。

 中は禍々しい闇のオーラで満たされたように歪んでいた。

 二人は躊躇なくその中に足を踏み入れて入っていく。

 そして、門はゆっくりと閉まっていった。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 人間の地と魔族の地との狭間にある山脈「パールティングヴェルト」。

 それはこの世界が出来た時からあったわけではなかった。

 この世界を創造し造り上げた存在、この世界の創造主によって後から造られたと言われている。

 

 その山脈の頂上付近、そこに八魔公軍【第五部隊】の根城はあった。

 それは城砦のようでひっそりと佇んでいた。

 そして、城塞は山の壁から飛び出したように造られていた。

 よく観察しなければわからないレベルだ。

 

 魔族の軍といえども決して魔族の住む地内にあるわけではない、エルネストの部隊もその一つである。

 そして、その城砦の最下層、そこに魔城の地下と同じような大門がひとつあったのだ。

 その大門が今、ゆっくりと開いていく、その中からはエルネストが歩いて出てきたのだ。

 

 「お帰りなさいませエルネスト様」

 「あぁ、代理ご苦労だったな」

 

 そう言って頭を下げたのがエルネストが部隊を指揮する者の代理として任せていた男の魔族だった。

 

 「シュナイダー至急、部隊の全員を集めろ言うことがある」

 「ハッ……」

 

 直ぐにシュナイダーと呼ばれた代理の男は去っていく。

 そして、エルネストも皆が集まる場所まで階層を上がって行く。

 エルネストが向かったのは城塞の中の開けた空間だった。

 それから直ぐにシュナイダーがエルネストの前に現れる。

 

 「全員、呼び寄せました」

 

 それとほぼ同時に第五部隊の魔族の兵士が全員エルネストの前に現れる。

 

 「エルネスト様よりお言葉がある!!」

 

 そう言ってシュナイダーは再びエルネストを見る。

 

 「まずお前らに言うことは三つ、一つは我々がこれまで探していた人物が見つかった事」

 

 エルネストがそう言うと周りからは「おぉ!!」という声が聞こえてくる。

 

 「二つ目はルノーの裏切り……の可能性があるだけだが」

 「なっ!」

 「あのルノー様が裏切りを?!」

 「八魔公が……そんな」

 「可能性に過ぎんがな……三つ目はその人物が見つかった村の警戒だ」

 「何と……!」

 

 シュナイダーが驚きの声をあげる。

 

 「後で隊を編成する……それまで準備を整えておけ…そして、これは魔王様に直々の命令だ!気を引き締めろ!」

 「「ハッ!!」」

 

 それからエルネストは城砦の自室でシュナイダーと隊の編成をしていた。

 

 「攻撃力はほしい、一班と三班を、入れる」

 「警戒をさせるなら感知系の魔法を使える者を行かせれば良いでしょう……そうなると五班ですか?」

 「あぁ、それに加えて通信魔法と防御系魔法を使える奴を入れろ」

 「そのように致します」

 「直ぐにバルバッハへ行くように伝えろ」

 「ハッ!」

 

 そして、バルバッハ監視チームが結成されその部隊はバルバッハへと飛び立っていったのであった。


 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 バルバッハ、村外れの森の中。

 

 「アルレットさん!まだオレいけます!」

 「ちょ、ちょタンマ!休憩させてくれ」

 

 アルレットは弟子のアレクに若さとは怖いものだと学ばされながら彼らを鍛え上げていた。

 

 「くっそ……あいつらやる気も体力もありすぎだろ……まあ、その分早くアイツらを鍛える事が出来るのだが……」

 

 アルレットはそう言いながら一人弟子と離れた場所で休憩をしていた。

 と、その時…

 

 「全く……部隊ごと消えたからと言って騒ぎすぎなのですよ……私は魔族の未来を見据えて行動しているというのに…貴方もそう思いませんか?」

 「あいにく、一人でブツブツ呟いてる奴と一緒に話をする趣味は俺にはないんだ…」

 「そうでしたか……これは失礼」

 

 そう言って現れたのは全身をローブで包み少しばかりか背が低い男だった。

 

 「アンタは何もんなんだ?ここら辺の人にしちゃぁ合わない服装だよな?」

 「えぇ、当然です…人間と一緒にしないで欲しいものです」

 「はぁ?」

 「自分、魔族ですから」

 「………」

 「そう殺気立てないでください……こっちは話をしに来たんですよ」

 「話……だと?」

 

 そう言ってアルレットはルノーの言葉に耳を傾けながらも警戒心を強める。

 

 「貴方にとって魔族とはなんですか?」

 「はぁ?……いきなり何だお前?」

 「お答えして頂けるだけでいいんですがねぇ」

 「はぁ……人間にとって嫌な存在」

 「貴方、と私は言ったのですが……」

 「俺は魔族とか関係ない……お前ら以上に強いやつはいそうだしな、そいつらに負けなければ問題ない」

 「フフフ……」

 

 ルノーはアルレットの答えを聞いて薄く笑う。

 

 「本当に関係ないと……?」

 「あぁ!来ても俺がもう守れる……って何なんだよ、アンタは?」

 「貴方の大事な人が襲われてもですか?」

 「お前、殺すぞ…」

 

 その場の空気が一気に肌寒くなる。

 アルレットの、体から魔力が溢れ出す。

 

 「おぉ……やはり凄まじい魔力だ…魔王様が探していただけはある…」

 「失せろ……」

 「えぇ、そうさせていただきます、これ以上ここにいるとチリにされそうだ」

 

 そして、ルノーは空を見上げる。

 

 「そろそろ来る頃ですかね……」

 「何を言って___ 」

 

 アルレットが言いかけた瞬間ルノーの体が光に包まれた、そして、その後にその場にはアルレットだけしかいなかった。

 

 「チッ……けっきょく何だったんだよ」

 「アルレットさ〜ん!そろそろ始めましょう〜!」

 「あぁ!」

 

 後ろに声を張り上げてさっきまで男がいた場所を眺めながらアルレットは弟子の元へ走っていった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 「なに?森の中で魔法の光を確認しただと…?」

 『はい、現地に向かった部下からの情報です 』

 「既に接触を図ったのか?」

 『分かりません、ただその場には少年一人だけしかいませんでした……恐らくは接触を図ったものと思われます 』

 「遅かったか……ルノーめ……」

 

 魔王は静かに息を吐く。

 ここに来てルノーと部下のこのような行動は想定外でしかない。

 ルノーは何かを吹き込んだだろうか?

 未だわからないことだらけである。

 

 「ヌゥゥゥ……そのまま警戒に当たれ……」

 

 ひとまずは警戒を怠らないことしか魔王にはできなかった。

 ルノーの居場所がわからないこの時に無闇に動いても相手に自分達の動きを見られている可能性だってあるのだ。

 気は引けない。

 

 「しかし気になるのはルノーの行動じゃ……何故一人でいる?……あ奴は何を考えておるのじゃ……予言では後3年後……時間はないな……」

 

 魔王はまたしても一人でブツブツと呟く。

 と、その時王座の間の扉が開き誰かが中へと入ってくる。

 

 「ん?…アルマか…どうしたのじゃ?」

 「いえ、部隊を各地に送ったことの報告と……主が悩んでいらっしゃるようでしたので…」

 「お(ヌシ)は妾専用の察知能力的なものを持っておるのか?」

 

 アルマはそのまま玉座の前まで来ると膝を着き頭を下げ……ようとして何かを見つける。

 その視線の先に何が映っているか分かった魔王は背筋に嫌な寒気さを感じながらアルマの視線に我関せずに真顔を貫いていた。

 

 「………」

 「………」


 しばらくの間沈黙が続いたが魔王は限界であった。

 

 「……魔王様」

 「ち、ちが!違うのじゃ!これは後ろの壁に虫がいたので叩き潰してやったら突然亀裂が入っての!妾のせいでは断じてない!」

 「はぁ……魔王様」

 「……な、何じゃ?…」

 

 有無を言わせないアルマの迫力に魔王は押し黙る。

 

 「魔城内は常に清潔、そして、美しくしております…そして、偉大なお方がおられる部屋に虫など入るはずがありません、そして…魔城は魔王様の力でしか壊すことができません!」

 「ヌググゥゥ……」

 

 魔王は何も言い返すことができなかった。

 そして、強まるアルマの圧力から逃れようと無理矢理魔王は話題を変えようとする。

 

 「そ、そう言えばアルマ、お主はここにただ報告をしに来ただけなのか?…」

 「あぁ…そう言えば…魔王様のせいで忘れていました」

 「アルマよ……」

 「冗談ですよ……話というのは我々も例の子に接触を図った方が宜しいかとという提案です」

 「ほぅ……エルネストから聞いたのか?」

 「はい」

 

 魔王は顎に手を当ててアルマの提案について考える。

 

 「……じゃがしかし危険ではないか?ルノーがどのように接触したのかわからん以上はコチラから接触していっても良いとは限らんぞ?」

 「えぇ……ですからこれ以上ルノーが彼の考え方を悪い方に悪化させないように一人ぐらいはコチラからも接触していった方が良いかと……」

 「ん〜…そう、じゃな……」

 

 魔王としてもこれ以上魔族への悪い印象を与えるワケにはいかない。

 

 「アルマ……いけるか?」

 「私で良ければ…」

 「ならば……任せる…頼んだぞ」

 「ハッ…」

 

 そうしてアルマは王座の間から出て行く。

 

 「何故ルノーの奴は魔族…いや世界を終わらせかねない危険なことを……チッ!…直ぐにでも探し出さねば」

 

 そう言って魔王は後ろの壁の亀裂を見る。

 

 「妾だけではない……自分達の世界を守る為に今一度冷静に考えて行動する必要があるな……」

 

 そう言って魔王は王座の間で今後どうするか、それを一人、考え続けるのだった。

 

短い………文章力がほしい

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