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【魔法】の威力

よしゃァァあああ!

早い!これは早い〜!!


 「そういや〜今日から弟子と一緒か?」

 

 楽しげに俺の父さん、ロマンは俺に話し掛ける。

 昨日、俺は弟子を持つことになった。

 正直に言って厄介この上ないというのが本音ではある。

 

 「そうだよ……はぁ…まあ、ゆっくりと魔法について教えていくよ」

 「ハハハハ!!忙しくなるなぁ!!まあ、頑張れよっ」

 

 誰のせいでこんなことになっているんだ!と言いそうになったものの出かかった言葉を飲み込む。

 それは自分の本音とは裏腹にロマンの昨日の言葉が自分の心に深く入ってきたからだろう。

 あんな事を言われてしまった後にお願いされたら断りづらいというものだ。

 しかし、それでも自然と弟子の事を了承してしまった事は失敗だったとも思ってしまう。

 エリーが育成所へ行った今、自分自身を鍛えぬく最高の時間、それが今なのだ、正直言ってエリーが近くにいたからこそ無茶な鍛錬が出来なかったというのも理由の一つではある。

 

 そして、そんな自分を強化したい時に弟子である。

 思わずため息が出るほどのタイミングの悪さだ。

 

 「やっぱり弟子はまずかったかなぁ……」

 

 家から出た後俺は独り言のように呟く。

 今、俺が向かっているのは森ではなく家が並ぶ村の中だ。

 何故かって?

 弟子達を迎えに行く為。

 

 俺も何でそんなことしなきゃいけないんだって思った。

 だが……

 

 『イイじゃねぇか……村を見て回った方が、お前が弟子を育てたいと思うような何かが見つかるかもしれないからなっ! 』

 

 との事で俺はこうして四人の元へ向かっている。

 「育てたいと思う何か」ねぇ……。

 あるわけが無い………とも言いきれない。

 あの父さんのことだ…絶対に何か俺に見せたいに決まってる。

 そう思いながらも俺は村の広場の辺りまでやってきた。

 事前に四人とも待ち合わせ場所や時刻を確認している為間違いはないが……早く着きすぎたか、少し昼時から後の時間で待ち合わせをしているためかもな、と思う。

 

 「……………………仕方ない、そこら辺をぶらつくか」

 

 ただ待っていてもしょうがないので俺は周辺を歩き、見渡すことにした。

 周りは至って普通という感じだが、俺からしたら違う。

 「異世界の村」それは俺という存在、いや、漫画やゲーム、アニメをこよなく愛する者からしたら夢のような場所だ。

 俺はこんな至って普通の村を見渡すだけで感動が押し寄せてくる。

 それぐらい異世界と言うのは漫画やゲーム、アニメを愛する俺達にとって興奮する場所なのだ。

 

 そうして、少し村を見て周り歩いていると何人かの子供達が遊んでいるのが見えた。

 

 「元気なもんだ……」

 

 俺も小さい頃はあんな風に遊んでいたのだろうか?

 ………やめよ、前の世界の事を思い出してもいい事なんてないのだから。

 俺は少しの間、彼らの声に耳を傾けながら待ち時間を潰そうとした。

 

 「なあなあ!昨日話しただろ?オレの父さんが国の騎士として働いてるの」

 「あぁ、聞いたよ、それでどうしたの?」

 「お〜話されたねぇ〜んで〜どうかしたの〜?」

 「……ふふふ……オレも父さんみたいな騎士になる!!」

 「「おおっ?!?!」」

 

 やはり、ここら辺の子供たちの夢は国のために働く騎士団や魔法士団に入って騎士や魔術士になることか?………

 

 「いいなぁ〜僕も騎士になりたいけど………僕は魔術士かな」

 

 騎士よりも魔術士になりたいと言ったのは騎士になると宣言した子の話を聞いていた子の一人だ。

 

 騎士よりも魔術士になりたいと………さてさて、理由は、と……

 

 「なんでだよ?」

 「僕、剣術の才能がないんだよ……それよりも魔法の才能があるみたいなんだ……」

 

 目線を落として悲しそうにその子は語る。

 

 「だから……今のうちから魔法の練習をしろって……父さんに言われたんだ……だから僕は魔術士かな」

 

 彼はそう言って偽りの笑顔で前の二人に見せた。

 前の二人はそんなに彼になんと声をかけたらいいか分からなかったのだろう、それから少しの間、三人の間に沈黙が降りた。

 俺がこの世界に来てから失念していた考え、才能の有無で自分の価値や将来の夢が決まる事。

 それはこの世界では当たり前で誰にでも起こり得ることだと俺はこの時思った。

 ただ……それでも彼はまだいい方なのだろう……この世界には何の才能もない人がいるかもしれないのだから。

 

 それから三人の中の一人が沈黙を破り言葉を発した。

 

 「オ、オレは……!誰にでも得意不得意があると思う……!」

 「お、おぉ……?」

 

 それはまだ自分の夢を語っていない三人の中の一人だった。

 

 「でも、オレはそれをそのままにするのはダメだと思う!」

 「おお!!…おおぉぉおおぉぉ……??」

 「じゃぁ……どうするのさ?」

 

 魔術士になると言った子が不機嫌そうに聞き返した。

 

 「努力し続けてやるさ……!!……そして、オレは剣術も魔法もどっちも苦手だが……………魔術騎士になるっ!!!」

 

 彼がそう言うと二人は驚愕と言ったふうに彼を凝視した。

 彼が言った言葉、その言葉の中にはどんな意味があったのか。

 

 「お前……本気か?」

 「あぁ!!」

 「ホントになるの……?魔術騎士に……?!」

 「あぁっ!!!」

 「そう…なんだ…」

 

 彼の宣言にもう一人の子は自分もそうしたいといった顔を見せる。

 そして、彼が思いついたようにその子に話し掛ける。

 

 「あっ!……じゃあさ!二人でなってやろうぜ!!魔術騎士に!」

 「えっ!……できるかな僕に?」

 「そうじゃあねぇよ!なってやるんだよ何がなんでも!努力は裏切らないって言うだろ?!」

 「う〜〜ん」

 「いいんじゃねぇか?やってみろよ?」

 

 彼の提案に頭を悩ませる子に騎士になりたいと言った子が賛成を示した。

 

 「………わ、わかった僕もな、なる!魔術騎士になるよ!」

 「そう来なくっちゃ!」

 「決まったな……!」

 

 そうして三人のうち一人が騎士にもう二人が魔術騎士になる夢を誓った。

 

 「てか、お前さ、魔法の才能あるんだろ?!」

 

 そして、騎士になりたい子が魔術騎士になりたい子に顔を近づけて言った。

 

 「う、うん」

 「じゃあちょっと見せてくれよ……!」

 「えぇ……ただ他の人より少し扱えるだけだよ……?」

 

 俺はこの時、あの弟子になってしまった四人について考えた。

 アイツらの魔法の才能はどれぐらいなのだろう?と…。

 俺から見たら四人はあの年にしては使えているなと思う程度である。

 ではあの四人以外の子はどれぐらい魔法が使えるのか?

 俺はふと気になってしまいその子の魔法を打つ瞬間を隠れながら見ようとした。

 

 「えっと……使えるのは火属性魔法だよ」

 「へぇ…!火か!かっけぇぇなぁ……!」

 「だよな〜」

 

 火属性………アレクと同じか……確かアレクは【火炎球(ファイア・ボール)】だったな使ったのはあれでもかなりの威力はあった。

 あれぐらいは普通に使えるという事だろうか?

 

 「それじゃぁいくよ…!【火炎球(ファイア・ボール)】!!」

 

 放たれたのはやはり定番中の定番火の球だった…………のだが、ここで疑問が生じた。

 

 威力が違いすぎる。

 

 アレクが撃った火の球とあの子が撃った火の球ではあまりにも違いすぎたのだ。

 あの子が撃ったものよりはアレクの方がより大きい火の球であったし、何よりも火の火力が小さ過ぎる。

 正直に言ってそれでホントに才能があると………果たして言えるだろうかというレベルであった。

 

 これは〜………流石にあの二人も動揺するだろう……

 

 そう思いながらもあっちの様子を見守っていたのだが……

 

 「すげぇぇなぁ!!やっぱり才能があるとあんな魔法が撃てんだな!!」

 

 はっ?………

 まさか予想だにしていないような展開である。

 すごい……?……どこが…?あれのどこに凄みがあったというのか。

 もう、一人の方もやたらと驚いたと言わんばかりの表情で固まっていた。

 いや、嘘だろ……?

 これではあまりにもアレクと差がありすぎるではないかと。

 年の差でここまで違うのか?

 いやいやそれこそありえない、あの三人は四人とさほど年は離れていないように感じるせめて二、三?歳程度の差である。

 それともホントに歳の差?

 だが、ここで俺の疑問に対する答えが三人の口から言い放たれたのである。

 

 「でもさぁ〜……あのいつも一緒にいる四人組はすごいと思わねぇか?」

 「確かにそうだね……あの人達はここら辺でいえばすごいと思うよ」

 「た、確かにそうだな……」

 

 四人……?四人というと俺はあの弟子にしてくれと頼みに来たあの四人しか、思い浮かばねぇぞ。

 

 「でも、あの人達は違うよ……持って生まれた才能が違いすぎる、最初に覚えるべき魔法であの威力だ……」

 「あぁ……それも全員って言うのも凄いよなぁ……」

 

 やはりあの四人とはレイナ達で間違いなさそうだな。

 それにしても………才能の有無で変わるかもしれないとはいえ、あり過ぎるとあぁなるわけか……。

 そりゃああの年にしたら強いなと思った訳だ。

 やっと納得。

 

 「多分、あの人たちなら剣術の腕だって練習すればすごいんじゃないかなぁ…?」

 「だと思うぞ」

 「はぁ〜……すごいなぁ…」

 

 あ〜あ、あんなに目をキラキラと輝かせちゃってまあ……。

 アイツらもホントはもう憧れの存在になってるんじゃね?

 

 「それよりもあの四人組アルレットさんに弟子入りしたんだって〜」

 「え?……アルレットっていうと………っ!あのりょうしゅ様の家の?!」

 「そうらしいぞ……」

 

 あれ?……いつの間にか変な話に変わってね……?

 それに君達、その年で噂話なんてそんなトーク技術どこで覚えたんだい……??

 

 「何でもアルレットさんって剣術の腕も魔法もどっちも才能が有るみたいなんだ…」

 「うわ〜マジかよ…やばっ」

 「それで前に村に魔物が入ってきた時あるだろ?」

 「うん」

 「それを一人で倒しちゃったんだってよ」

 「すげえぇぇぇぇ!!」

 

 おいおい……やめてくれよ魔物退治ぐらいで騒がないでくれ。

 これ以上はここにいても俺の話だけだろうし、何か変な事を言われてたりしたところを聞きたくもないし、それにそろそろアイツらも来るだろうし行くかな。

 

 そうして俺は逃げるようにその場から立ち去った。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 「遅刻ですよ〜〜!!」

 「だからごめんって……」

 

 あの後俺は待ち合わせの場所に時間通りに来たつもりだったがどうやら子供達の会話に夢中になり過ぎていたため少し遅れてしまっていたようだった。

 そのため今こうしてレイナに注意を受けていた。

 

 「まあまあこれが最初だし……それに私達が森に初めからいればいいところをこうして来てくれてるわけだし……ね、レイナ」

 「おぉ……!!」

 

 さっすが四人組の中でも苦労人の地位にいるだけはあるねぇ…。

 俺は心の中でしっかりとサアラにお礼を言った。

 

 それから、俺達はいつもの俺の午後の鍛錬の場所、森に来ていた。

 さて、これから色々と教えていく訳だがその前に……

 

 「よしっと……じゃあ、まず皆に言っておきたいことがあるんだがいいか?」

 「?……はい、別にいいですけど?」

 「お前ら将来の夢はなんだ?」

 「えっ?そんなこと聞いてどうするんですか?」

 「いいからいいから」

 

 これは聞いておくべきだろう、教える立場の者として。

 

 「アレクは何だ?」

 「え?オレですか?……えぇと…まあ、魔術騎士ですかね」

 

 確かにアレクなら魔術騎士と言った感じか。

 

 「次、エドウェル」

 「は、はい!……ぼ、僕はそのアレクと同じで……」

 「なに……?」

 「え!!あっと、い、いえ……その………僕もアレクと同じで魔術騎士に!……な、なりたい…で…す」

 「ほぅ……」

 

 エドウェルまでそういうとは思わなかったな。

 まあ、人にはそれぞれ得意不得意があると言ってもなりたいもの思うものも人それぞれだしな。

 

 「サアラは?」

 「私も魔術騎士ですかね……えへへ」

 「レイナ」

 「勿論!お姉ちゃんと一緒です!」

 「………」

 

 類は友を呼ぶ………か。

 一人一人違った夢があったのならそれに合わせようかななんて思っていたが……その必要はなさそうだな。

 

 「さて、皆の夢はわかった………俺も大体お前らと一緒さ」

 「大体……?」

 「みんなの目標が一つならやる事も多くはない」

 「おおっ!」

 

 アレクが何をやるのか楽しみといった感じでこちらを見てかるが最初っから楽しい鍛錬なんてあるわけないだろ。

 俺はポイッと四人の目の前に木の刀を放り投げた。

 

 「これはお前達用に用意した木の刀、木刀だ、これからは毎日ずっと鍛錬の最初にはこれを二百回素振りしてもらうもちろん素振りの型通りに……な」

 「に、にひゃく………」

 「ま、毎日ですか……?」

 「おいおい……弟子になりたいっていうからこっちもそれなりに弟子の為を思って考えて言っているんだがな……嫌ならやめていいぞぅ〜……」

 

 そう言って俺は人の悪い笑みを浮かべる。

 我ながらすっごい非道っぷりだと思う。

 まあ、こんな事で()を上げられちゃあコイツらを頼りになんて出来っこないしな。

 父さんにはしっかりと教えろよなんてことは言われたが「教え方」までは言われてはいない。

 俺なりにコイツらをしっかりと鍛え上げてやるよ。

 

 と、まあそんな感じで最初っからぶっ飛ばしたが……

 

 「いいえ!嫌じゃないです!」

 「弟子としてしっかりとついて行きます!」

 「がっ………頑張ります!」

 「よっしゃぁぁ!!やってやらァァああ!」

 「……いいぞ〜その意気だぞーお前らー (棒) 」

 

 よし、師匠としてコイツらに熱の篭った声援を送れたことだし後は素振りし終わるまで自分の鍛錬、鍛錬。

 あっ!……とそうだった、素振りの仕方も教えねぇとやっぱり基本はしっかりと教えなきゃな。

 

 「おい、お前ら素振りの仕方を教えるからこっち来い」

 

 __________ 。

 

 

 

 

 

 

 こうして俺の弟子達の育成の日々が始まったのだ。

 

 「あれ?これ、下手したら俺の鍛錬の時間めっちゃ食われるんじゃね?………はぁ、やっぱり弟子はまずかったかなぁ……………………おいっ!馬鹿アレク!木刀でも刀身である方を持ってどうする?!?!逆に何でそんな持ち方をしちゃったんだよ!!意味わかんねぇよ!」

 

 

 だが、その日々は平和に過ごすには少々難しいようであった。

 

 

 

 

でも、あまり話進みませんでしたね。

すいません……。

でも、次回はついに魔族の話です!………多分!

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