弟子にしてください!
話の区切れ?的なところとか視点の
切り替えの部分を記号?的なのに変えました。
アルレットがエリートを見送った後、バルバッハ村の入口前。
近くの木々の茂みの中らから一人、少女が出てきた。
「初めて見たなぁ……あの人がアルレット様かぁ……」
その少女は目を潤ませて頬を紅くしながらアルレットが帰って行った方向を見る。
まるで恋する乙女のように………
「どうしてここにいたかは知らないけど………やっぱり頼んでみないことには始まらないよね……よしっ!皆に早く言わなきゃっ……」
少女は村の方へと走り出した。
他の村の子にも教える為、だが、それだけではない。
少女の本当の目的…否、少女とその親友たちの目的の為に。
◆◇◆◇
エリーが村を出発してから一日が経った。
俺はいつも通り日課の鍛錬だ。
だが、いつものように父さんと鍛錬をしていたのだが、その途中で父さんが俺に言ってきたのだった。
「アル……いつの間にそんなに上達したんだ……?!」
「え?」
そんなに剣術の腕を上げただろうか?
前とあまり変わらない気がするが…。でも、父さんが感じたのは多分【スキル】の力だろう。
それが多分「完全剣術補正」だと思う。
この【スキル】も馬鹿げている、剣術の腕に少し補正が関わる訳じゃない……そう、完全に補正がかかるのだ。
あ〜例えば今の父さんとの木刀での戦闘の時は相手から光の筋が見えるのだ。
そして、その光の筋に沿って相手は剣を振ってくるわけだ。
相手の剣の太刀筋を見る力にも補正がかかりまくったおかげだ。
後は反射防御のようなことが出来たことだ。
戦闘時に相手の攻撃を脳ではもう、防げないとわかっている状態でも勝手に【スキル】の力が体を動かして防御してくれるのだ。
これには正直驚いたが……あまり、頼りたくないものだな、とも思った。
まあ、自分の【スキル】の効果なので結局は自分の力ではあるのだがな……。
と、まあ…こんな感じでの【スキル】であるわけで俺自身で見れば剣術の腕はまだまだと言う感じである。
父さんが感じたのはあくまでも【スキル】の力である……俺の力じゃない。
なので……
「【スキル】のおかげかな…」
そう返すしかない。
「そ、そうか……」
それから少し鍛錬を続けていたが昼時になったので今日はここまでである。
まだまだ剣術の腕は父さんにはかなわなかった。
「何〜アル、父さんから聞いたわよ、剣術の腕上げたみたいね!」
「自分的にはあまり剣術の腕が上がったとは思えないんだけど……」
「父さんが褒めてくれたんだから上がってるわよ!」
「……ん〜…」
やっぱりしっくりこないな、と思う。
「それじゃぁ……行ってくるよ」
「あら、もう、行くの?」
「うん?弁当も持ったし行くよ」
「ホントに毎日飽きないわね〜、少し休んだら?」
「今のうちから鍛えとかないと後から大変だと思うから」
「そぅ……」
そう言ってアルレットは家を出た。
だが、そこでいつもの日常が変わっている事に改めて気付く。
「あ〜そういやエリーの奴、行っちまったんだったか…」
アルレットは今頃エリーは何をしているだろうかと思う。
そして、自分も負けていられないとも思う。
皆を守る事にこそ自分が強くなる意味があると、だからこそ休んでいる暇はないのだ。
それから家を出た後村を歩きながらいつもの森の方へ歩いていると不意に声を掛けられた。
「君、アルレット君だろ?」
「え?……あ、はいそうですけど…?」
アルレットに声をかけてきたのは30代ぐらいの男だった。
え?……誰だろうこの人?
ちょ、やべ初対面の人なんだけど……
「この前はどうもありがとう!村を救ってくれて!」
その一言でアルレットは「あぁ」と、声を漏らした。
少し前にロマンが帰宅後に村に魔物が入ってきたことがあった、それを倒したのがアルレットだ。
いや、でも……そんなに強い魔物でもなかったしな〜。
お礼を言われるほどかと言われればそんなんでもない気がするんだが……。
「いや〜ビックリしたよ【ロードウルフ】を倒しちゃうんだもんな!流石はロマンさんの息子だ!」
「ど、どうも…」
「これからもどうか力を貸してくれよ!」
「は、はぁ……」
その後も森に行く途中で何人かの人に声をかけられたのだった。
俺にとっては些細なことでも村の人たちからすればすごく重大な事だったんだな。
ちなみに、父さんは俺が狩った後すぐに寝ぼけたままの状態で話を聞いていたが魔物が入ってきたと言ったあとのあの顔ほど焦っている父さんは見たことがなかった。
まあ、そりゃあ焦るわな。
だが、その後すぐに俺が倒したと言ったら安堵するとともに驚きといった表情を見せたのだった。
『お前が倒したのか……? 』
『 だから、言ってるじゃん倒したって…』
『ちなみになんて言う奴だ? 』
『あ〜えっと、村の人達は【ロードウルフ】 て言ってたけど…』
『なっ?!【ロードウルフ】 だと?!…』
ホントに……驚きっぱなしだったな。
さてさて、考え事もここまでにしてと……。
俺は森の中まで来ると最初に近くに横たわっている丸太に腰を下ろして母さんから貰った弁当を出す。
「うん、美味い!」
やっぱり、母さんの作る物はホントに美味いな〜モグモグ…。
そう思いながら昼ご飯を堪能していると、目の前の木々の間から人影がチラチラと、こちらを見ているのが見えたのだ。
それも1人ではない、2、3……4人はいるだろうか?
見ているだけで出てこようとはしていない。
「ん〜ひとまず、待っててもらえるかな?…昼ご飯まだだからさ……」
「っ?!……」
と言ってからアルレットは再び食事を開始する。
というか、驚いたよね?今?完全にバレていないだろうみたいな感じで、俺に用があるならでてくればいいのに……。(モグモグ)
すると、木々の所でこちらを見ていた者達は一人、一人と姿を現した。
四人は全員アルレットの前まで来ると何かを言いたげにこちらを見ていた。
え?……仲間になりたそうこちらを___ っと。
俺よりも年下だったのか……えぇっと、九歳ぐらいか。
そう、そこにはアルレットよりも年下の男の子二人に女の子が二人、全員九歳ぐらいの年の子だった。
何故そんな子達がアルレットに用があるのか。
そして、その四人は端にいる女の子を他の三人が見つめた後に意を決したように息を揃えて言葉を発した。
それは__
「「「「弟子にしてください!!!!!!」」」」
「ブフォァア!!!ッゴォホ!オエッ!!」
その言葉にアルレットは盛大に噎せたのだった。
◆◇◆◇
「ふぅ……ご馳走様でした」
森の中でしっかりと手を合わせて食事を終えたアルレットは自分の前に並ぶ四人組を見た。
正直に言ってどう追い返そうか、それしか頭に浮かばない。
自分にとってもこれからが大切な時期、自分の事にだけ集中したいというのに弟子にしてくれと四人もこうして来ている。
「はぁ〜……」
何だって俺の弟子になりたいなんぞ考えたのか。
「なぁ……よく考えろって…俺なんかよりも上手く教えれる人なんて探せばいるだろぅ…」
「アルレット様がいいです!!」
「えぇ……」
様付けで呼んできたのは四人の中でもリーダー的存在の女の子だった。
元気いっぱいといった感じか、どことなく雰囲気はエリーに似ている感じがする。
「その、どうして俺がいいのか理由を……」
「アルレット様じゃないと嫌だと私たちが思ったらからです!!」
「理由になってないよぅ〜……」
ホントにどうしようかと、悩む。
幸いにも全員のステータスを見たがさほど悪いものでもなかった。
けど、それだけで自分には何のメリットも感じないのだが。
無理に抱え込むような問題でもないなと、アルレットは思った。
「すまん……弟子というのは無理だ…」
「っ!!!…ど、どうしてですか?!」
ズイっとリーダー的存在の女の子が顔を近づけてくる。
あ〜近い近い……まずは離れよう〜。
「俺自身もまだまだ強い訳でもないし、教えることに自身はない、もし、教えることになったとして君達全員の力を伸ばせるから正直いって分からない、という訳で他をあたってくれ、この村にもいるだろ?そういう人が」
そういう人、つまり教師のような人か。
まあ、今言ったことは事実だし、誰しもが強くなれる訳では無い、昔の俺のようにな。
さて、現実は伝わったかなと思い、見てみると………あ、あれ?
四人は誰一人としてその場から離れようとしていなかったのだ。
「帰りません!おねがいします!弟子にしてください!」
リーダー的存在の女の子の後に続いて他の子も俺に頼んできた。
「俺の話聞いてた?……」
何がなんでも断りたいので俺は少し強めに言う。
「うっ……で、でも……でも!お姉ちゃんには教えてた!!」
「あ〜……」
そっかそっか、お姉ちゃんだけズルいとかそんな感じだったということか、まあ、それはよくある嫉妬心だが………。
……………………………………………え?………
「お、お、お〜……おぉおぉぉおおおねぇぇちゃぁぁん????」
お姉ちゃん?……おねえちゃん?……オネエチャン?…とは?
……………あ、えっと確か「姉さん」は通常は日本語で、傍系2親等の年長の女性すなわち姉に当たる女性に対して、彼女の弟や妹が呼びかける際の最も一般的な呼称だったな!……………。
「お姉ちゃん…とは?? (理解できていない)」
「エリーナお姉ちゃんには教えてたんじゃないんですか?!」
「嘘だろーーー!!!」
あ、あいつ……妹がいたのか……いや、それよりも今までどこにいたんだ……?!
あれ、俺たしかにエリーの家に行ったことあったよな?
いや、まあ、でも、たまたまいなかったってことだってあるしな。
誰も何も言ってこなかったしな〜どうゆこと?
「ごめんお姉ちゃんって誰??」
「アルレット様こそ聞いてたんですか?!」
さて、お姉ちゃんがどうとかはまず、一旦置いとこう。
これで、断ったら何か言われるよなぁ〜……絶対マルナさんがなんか言ってくるな……。
はぁ〜……だから似てたのかステータスとか色々。
「ふぅ…エリーが一緒にいたのは別に教えるためじゃない、単に友達として__ いや、親友として過ごしていただけだ、魔法とかはエリーが勝手に独学でやってただけだ」
まあ、ちょくちょく教えたりもしたが……。
「………で、でも…」
あ〜駄目だこれ何言っても帰ってくれないや。
どうしようか………
「わかったわかった……じゃあぁ……お前達魔法は使えるか?」
そう言うと、前の四人は全員頷いたのだ。
お〜一応魔法は使えると……へ〜。
「それじゃぁ明日、全員の魔法を見てみて弟子にするかを確認する…」
と、偉そうに言ってみたものの………やってしまったと思う。
まあ、言ってしまったのはしょうがない。
「明日ですね!約束ですよ!」
「あ、あぁ…わかったわかった…」
それから四人はやっと森から村へ帰ってくれた。
「はぁ……厄介な」
ひとまず【スキル】の鍛錬をしてからその日は1日を終えた。
◆◇◆◇
「そんなことがあったのか?」
あれから家に帰ってきた俺は午後の事を父さんに話していた。
「めんどくさいことこの上ないんだけど……」
「ハハハハ!!!いいじゃないか別に、弟子にしてくれだなんてお前が憧れを持たれてる証拠じゃないか!」
「いらん憧れだ……」
そもそもと俺は思う。
父さんのいろいろな不注意のせいでこうなってるんじゃないか。
それで俺がいろいろと出張ってしまう形になったんだ、全くこんな形で目立つとは。
「おいおい……冷たいなぁ…もっと優しさを持てよ…」
「こっちにもやることがあるんだよ……弟子とか持ってる場合じゃない」
ただ正直言って厄介だし面倒臭いのが一番だが。
「まぁ……どう思うかは自由だがいいと思うぜ?俺は。そりゃあ教えるってことは簡単じゃないけど、周りに慕ってくれる者達がいるってのは悪くないぜ?」
「……それ、どういう意味?……」
「さぁな………ただ頼もしい部下を持てるのはいい事だぞ」
「部下じゃない…弟子だろ」
それからしばらく沈黙が続く、父さんは酒の入ったグラスを持ったまましばらく目を瞑っていた。
聞こえるのは母さんがキッチンで立てる音だけだった。
「なぁ、アル、人に頼るってことも大事だぞ……何でもかんでも自分で守ろうとするれば躓く……」
それは、とても悲しげな声だった。
何かを思い出したのか、それとも今の俺の状態を思って言った言葉なのか、俺には分からなかった。
その後も俺は部屋に戻った後も父さんの言葉を思い出していた。
この世界に来て誰にも頼ることなく今まで過ごしてきたアルレットにとって、先の言葉は考えさせられるものだった。
『 人に頼る』
それはアルレット=エジェロワールにとってとても難しく、よく分からない行動だった。
ちょ、短かったですね今回は………頑張りますね。
文章力ってやつですよ。
あ、さりげなく新キャラたちですね。




