「魔物」
すまない!
また、短くなってしまった。
「フゥ〜…こんなもんかな…」
魔族がバルバッハを襲ってから数日が経った。
まだまだ、村が完全に復活するまでは時間が掛かるようで、村の大人達はせっせと働いている。
ちなみに、午前は一人で素振りをしていた。父さんも中々に忙しいようだった。
で、俺は今いつものように森の中で魔法の鍛錬というわけだ。
「まあ、今までとは違うんだがな……」
俺が今やっているのは魔力の増加の鍛錬だけではなく、新しく覚えた【スキル】の力などをしっかりと調整できるように試す事だ。
これがなぁ……中々に難しいということが分かった。
覚えたてだからか又は自分の今の力では扱いきれないのか、よくは分からないが上手く使えなかった。
「けど、まあ、コツというものはあるわけだし……」
自道にコツコツと……やはりそれが近道だろう。
だが、扱いきれないと言っても能力自体はある程度把握はできた。
じゃあ、少しやってみせるとしよう。
「「死の覇気」」
そう俺が言ったあとに俺の周りに漆黒のドス黒いオーラが広がった。
ちなみに【スキル】などの特殊能力系の力は何も言わないで使用できるものとそうでないものがあった。
常時発動の【スキル】と自発的な【スキル】でこれは分かれていた。
これはやはり【スキル】は魔法とは違う特殊な能力だからなのだろうかと思ったがよく分からなかった。
そして、今、俺は普通にこの【スキル】を使えれているように思えるが実は全然違う。
この【スキル】は加減というものが全然出来ていなかった、制御不能だ。
この力は相手への威圧効果をを目的とした【スキル】だ。
それも最高クラスのな。
なので、今俺の近くに小動物や普通の村人などがいた場合、すぐに皆気絶していくことだろう。
父さんがギリギリで耐えられたのはこの国でもかなりの強さだったからだ。
それでも最初は動けないでいたようだがな。
十分に規格外すぎるということが良くわかる。
でも、規格外な【スキル】はこれだけじゃないんだよなぁ〜。
次はホントに危険な【スキル】だ。
「「暴食の闇」」
俺はもう一つの【スキル】の名前を言った。
と、直後に俺の周りに漆黒の闇が溢れ出てくる。
ここまではいいんだ……だが___
溢れ出た闇は俺の周りにある木々を波のように飲み込んでいった。
「うぁぁ………」
そして、闇の勢いがおさまり、闇が俺の体の中に戻ってきた。
この戻ってくる時も気持ち悪いんだよな……。
今、この【スキル】がやったのは「暴食の闇」の効果にある全てを異空間に吸い込む力だ。
そして、この【スキル】が危険な理由がこれだ。
自分の周りにあるあらゆる物をこんなに簡単に飲み込んでしまう。
厄介この上ない事だ、もしかしたらこの【スキル】が一番扱うのが難しいようだ。
「そりゃあそうか……最初っからなんてことはあるわけないか…」
チートを最初っから理解出来ているって方がおかしいからな。
と、最後の一つだが……
「まずはっと……」
「 |自動反射防衛闇属性能力」だが、これは常時発動の【スキル】ということと、完全な魔法防御ということしか分かってない。
他にも使い道がありそうなんだがな………考えすぎか。
さて、「 |自動反射防衛闇属性能力」を確かめるには自分に魔法が放たれていなくてはならない。
つまり、どうするかと言うと自分の魔法を自分に放つ。
俺はバスケットボールぐらいの闇属性の魔力弾を作る、それを自分に向けて放つ。
これも鍛錬の成果だな、これぐらいの魔力操作なら簡単になってきたな。
そして、魔力弾が自分のすぐ目の前まで迫ってきた時、俺の眼の前に闇の壁がどこからともなく形成された。
そして、それが魔力弾と当たり物凄い音が辺りに響いた。
「魔力弾の威力も中々で……順調だな」
まあ、普通ならこんな状況で自分の力の分析なんてしてる暇はないんだろうが、この【スキル】を甘くみてはいけない。
目の前にはあの威力の魔力弾を受けたというのにピクリともしていない闇の壁があったのだ。
この防御力だけでもすごいのに常時発動って………ハハハッ!!流石は最高クラスのチート【スキル】というわけか、ありがたやぁありがたやぁ……。
だがしかし!これだけの力があるにも関わらず扱いきれていないのはまさに宝の持ち腐れだ。
一刻も早く、この力を使いこなせるようにならなければ……。
と、その時いつもよりも遅くアレが来たのだった。
「よう……エリー、いつもより遅いなぁ…」
「ごめん、ごめん!…ちょっと母さんと一緒に村の人達の手伝いをしてて………って「いつもより遅い」って言った……?!それってぇ……しんぱ__ 」
「……………」
「何よ!その「あぁ、やっぱりうるさいな」って顔はっ!!!」
「お、お前…?!読心術かなんかの【スキル】持ってるのか…?!……ハッ!!…ま、まさか…魔法の類か……?!いつの間に?!」
「顔に出過ぎてるっってのーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
◆◇◆◇
さて、さっきはチートな【スキル】をいろいろとやったが何も【スキル】だけがチートになっていたわけじゃない。
【魔法】もかなりのチートになっていたわけだ。
さて、【魔法】もやってみせるとしよう…………と、思ったが普通にやったらやばいことになりそうな【魔法】もあるのでここは……
「なあ、エリー、ちょっと協力してくれないか?【魔法】の、確認をしたいんだ」
「…………(ムッスゥゥ)」
「そんなに怒るなよ……ちょっとからかっただけだって……な?」
「別にぃ……これぐらいで怒ってないもん」
それを起こってるって言わないのか?……いや、よそう…これ以上何か言うとさらに怒りそうだからな。
「ホントにスマンと思ってるよ」
「じゃあ、さっき、私が言いそびれたことに答えたらいいよ」
うっわ、めんどくさッ!………あ、いかんいかん。
「お、おう……いいぞ」
「さっき「いつもより遅い」って言ってたでしょ?それって……その…心配してくれてたの?」
自分で言って顔赤くすんなよ……。
てか、そんなことだったのか、何を当たり前のことを……。
「いや、心配してないわけないだろ……こんな事あったあとじゃぁ……まだ何かあるかもしれないしな、当たり前のことを聞くな」
そう言って俺はエリーの頭にポンポンと手を置いた。
それでエリーはと言うと……
「っ!!……そ、そっか…ありがと……へへ」
顔をダルマのように赤くして笑っていた。
鈍感系じゃないのでその笑顔はやめてください、お願いします。
ま、まあ…でも機嫌が直ってくれたようでなにより、頑張って臭いセリフ言ったかいがあったな。
で、だ。やっと本題に入れるが俺の【魔法】は【スキル】同等のチート、規格外だった。
全く、力のコントロールが出来なかった。
それではやってみせよう。
「エリー、ちょっと俺の真正面に立ってくれ」
「えへへ〜…当たり前だってぇ…当たり前って……ぁゎゎ…」
「エリー?」
「えっ?!あっはい?!まだ心の準備が!!」
「………………何を言っとるんだお前さんは」
「えっ?……」
「俺の鍛錬に協力してくれるんだろ?」
「あっ!ごめんごめん!………で、どうするの?」
はぁ〜……全く……。
「そこに立ってくれ」
「ここでいいの?」
「あぁ」
「ここで何すればいいの?」
「俺に向かってなんでもいいから【魔法】を放て」
「えっ?………ホントに撃っていいの?」
「あぁ」
「大丈夫?ホントにホントにいいの?」
「大丈夫だ、思いっきりこい」
エリーは少しどうしようかと迷っていたが魔法を放つことに決めたようだった。
「ホントにいくよっ!どうなっても知らないよ!」
「あぁ」
「風属性魔法【爆風弾】!!」
そうエリーが言ったあとにエリーの前に風が集まりだしそれが矢のような鋭さになった。
かなりの殺傷能力があると分かる。
もっと、弱い魔法で来るかと思ったんだけどな。
というか、エリーはもう、これぐらいの魔法を使えるようになっていたのか、いつの間に……。
「これぐらい、アルにはなんてことないでしょー!!」
「まぁ、そうなんだけどな……」
さてさて、俺も【魔法】を放つとしよう。
俺は新しくというか進化した?【魔法】の火属性「黒炎」魔法を放った。
まあ、ただの魔力弾だがな。
それでも威力は十分、漆黒に燃える黒炎はエリーの風の矢に当たりその直後に全てを燃やし尽くしたのだ。
明らかにおかし過ぎる威力だ。
それにこの【魔法】の魔法の階級を表すところが表示されていなかった。
何故かと言われれば今のこれを見れば分かるというもの。
威力がいかれすぎてこの世界では測れないということだ。
それにしてもエリーの【魔法】も強力だったな……どれどれ。
<<ステータス>>
【エリーナ=ヴァオラルシア】
種族 : 人間
性別 : 女
レベル : Lv.1
【能力値】
魔力 : 3046
攻撃力 : 258
防御力 : 200
俊敏力 : 1500
【スキル】
「風の精霊の加護」
「風の囁き」
【魔法】
風属性魔法(中位上級): 適正値 1000%
火属性魔法(上級): 適正値 150%
水属性魔法(上級): 適正値 300%
【称号スキル】
・風の子
こいつも普通にチートしてやがる。
俺がいなかったら間違いなく村一番だろうな。
風属性魔法の適正値がいかれてやがるな、まあ、俺はもっといっちゃってるんだけどな。
それに【能力値】も中々に高いしな。
これなら同年代のやつにエリーに勝てるやつはいないだろう。
「すごい……やっぱりアルには勝てないなぁ……」
「お前、自分のチートっぷりに気付いてないんだな…」
「えっ?ち、チートって何が?…」
「いや、何でもない」
俺も早く力を使いこなさないとな……こんなに強力な力を持ってるのに使えてないのは無いのと同じだからな。
エリーに負けてられねぇな。
「て、アル、そろそろ戻らないと……」
「?……あぁ、もうそんな時間か……」
エリーが言ったのは門限とかそんな事ではなく最近ここら辺には夜に近づくにつれて「魔物」と呼ばれる生物が出現するのだ。
俺的にはなんかこう興奮するものがあるのだが村の人達からすれば恐怖しかない。
魔物はどれも凶暴で強いのだとか、例えば能力値が一つだけ飛び抜けたヤバいやつがいるとか、とにかく恐ろしい生物らしい、というかそういう認識らしい。
で、何で今それがここに出没するのかと言うと原因は魔族襲撃事件である。
アイツらはここへ来る前に村の周りに張り巡らされている、「魔石」をいくつか壊してからここへ来たのだ。
「魔石」とは主に魔力を帯びている石のことを言う。
魔石は魔物を狩った際や鉱物として出てくるのだ。
村ではその魔石を村の周りに張り巡らせて村を囲み結界を作っていたのだ。
だが、その結界が壊れた、つまり魔物を寄せ付けないようにしていた結界がなくなったのだ。
当然、魔物はこの村に入ってくる。村の外は決して安全ではないのだ。
「でも、魔物って弱いイメージの奴もいるのんだけど〜……」
「何言ってんの?!どの魔物も危険だって言われたよね?!」
「まあ、そうなんだけどさぁ〜……ん〜」
ほらなんかいるじゃんゴブリンとかゴブリンとかゴブリンとかゴブリンとかさ〜……
「いいから村の中に入るよ!!」
「わかったわかった〜」
村とはいえ意外と広く森があるため村の集落がある所まで行けば大丈夫らしい。
こんなに警戒するほど強いのだろうかとやはり思ってしまう。
ちなみに俺の父さんも夜は村の周りを村の人達と巡回しているそうだ。
まあ、父さんがいれば安心できるというもの。
そこら辺にいそうなゴブリンぐらいなんてことないってか弱すぎるぐらいだろ。
「ん?そういえばエリーは見たことあるのか?魔物」
「え?え〜とないと思うけど……」
「じゃあ何をそんなに怖がって__ 」
「別に直接見たわけじゃないから怖いって気持ちはあんまりないけど、お母さんが言ってたの、魔物には「異常種」がいるって」
「異常種……?」
「たまにね突然変異って言うやつ?が起こって普通のよりも強く生まれてくる魔物がいるって」
「ほぅ〜……それでも警戒しすぎじゃないか?」
「でも、普通のよりも明らかに強いらしいんだって」
まあ、そんなに魔物は厄介で危険な存在って言ってるのにこの村に出没するのがゴブリンだったら笑えるな。
と、話ながら歩いていたら俺の家の前まで来ていた。
「それじゃぁなエリー」
「あ!うん、じゃあねアル!」
そうして俺たちは俺の家の前で分かれたのだった。
そして、俺が家へ入ろうとした時に父さんも帰ってきたのだ。
「あれっ?父さん、どうしてここに…今日は夜もずっと巡回じゃぁ……」
「あぁ、けど剣を忘れちまってな!」
「あぁ、なるほど」
そう言ってすぐに家へ入ろうとする父さんに俺は話しかけた。
「ねぇ、父さん!」
「ん?どうした?」
「魔物ってそんなに危険で強いの……?」
と、俺が質問するなり父さんはかなり真面目な顔になった。
な、何かまずいことを言っただろうか?
しばらくの間二人で見つめあっていると父さんが口を開いた。
「アル…魔物を甘く見たらいけないぞっ……アイツらは強いからな!……ハハハッ!」
そう言って家の中に入っていった。
結局何が言いたかったのかよくわからなかった。
そして、すぐに父さんはまた夜の巡回に戻って行った。
その後俺は母さんにも夕食中に聞いてみた。
「母さんは魔物にあったことはある?」
「え?どうしたのアル、急にそんなこと聞いてきて」
「いや、ちょっと魔物ってどれぐらいの強さなのだろうかと思って」
「知らない方がいいわよ、魔物は強いから」
「ふぅ〜ん………」
なんだ、皆して魔物は強いとか言ってあのゴブリン(それしか頭にない)を強いとか言って魔物ってそんなに強かったのか?
と、俺が考え込んでいると母さんが不意に言ったのだ。
「そういえば明後日はエリーちゃんにとって大事な日ね!」
「え?何の事?あれ……明後日はエリーの誕生日だっけが?」
「なに、アル、エリーちゃんから聞いてないの?」
「ん〜なんも言ってこなかったしな〜」
「今日、マルナさんから聞いたの、明後日、エリーちゃん魔術騎士育成所へ向けて出発するらしいわよ!」
「え?………」
また、一日1回投稿できる日は何時なのだろうか……