【間話】父の感じた変化
間話なのでむっちゃ短いです。
はい………。
魔族襲撃から二日が経った日の朝、ロマンはアレクシアの部屋にいた。
勿論ここにいるのは看病の為、ロマンは一日のほとんどをここで過ごしていた。
「はぁ………」
魔族襲撃でこの村の領主として見事、魔族から村を守ったロマンであるが最初っから守っていた訳では無い。
1番貢献したのはアルレットだ。
それに自分が来た時にはもう、村も皆も甚大な被害を受けていた。
だからこそロマンはあの戦いでは自分は何も出来なかったと思っているのである。
だが、それでもあの場にロマンが現れなかったらそれこそ終わりだったわけではあるのだが………。
何にせよロマンは今回の件はアルレットが皆を守ってくれたおかげだと思い、アルレットに感謝を述べたのだが、あるレットは「自分は何も出来なかった」とそのような事を言ってきたのだ。
これにはロマンは驚かせられたのだった。
魔族という自分達とは違った存在でアルレットはまだどのような存在なのか知らなかったはずだ、なのにも関わらずいきなりの襲撃に冷静さを失わずに魔族と戦い俺が駆け付けるまでの間、戦い続けていたのだ。
それにアレクシアや、エリーナ、二人も守ってくれた。
本当にこれがまだ11歳という年齢の子どもに出来る事だろうか?
この時、ロマンは思ったのだ、アルレットは魔術騎士の育成所に行きたいと言っていたが、これなら簡単に魔術騎士になれてしまうだろうと。
いや、もっと上……魔導騎士クラスぐらいにはなるだろうと。
ともかく、これだけ村に貢献してくれたアルレットにロマンは感謝をしつつ、何も出来ていなかったなんてことは無いとロマンはアルレットに伝えたのだ。
「アルはもうちょっと自分に自信を持つべきだよな〜」
アルレットはロマンから見てももう、十分過ぎるぐらい強いと思うのだ。
アルレットと同年代の子の中では勝てる子はいないだろうと確信している。
11歳で魔族と戦えるのだから当たり前である。
だからこそ何故そんなにまで自分に自信を持ってないのかロマンは不思議だった。
「まあ、あっちに行ったら嫌でも自信がつくだろ……」
育成所に行けば14歳になってからではあるがそれでも勝てる子はいないだろうとロマンは思っているのである。
「まあ、そこそこなライバルが見つかればいいんだが…」
本気でアルレットに勝てる子がいなくても、まあ…そこそこのライバルがいてくれればいいだろう程度にロマンは思った。
と、ロマンがアルレットの事を考えていたその時、部屋のドアが開いたのだ。
入ってきたのはミーナだった。
「悪いね……二人の看病を任せちゃって……」
「いえ……使用人ですからこれしきの事は…」
ミーナは家の使用人でありながら魔術騎士で回復魔法の使い手でもある。
だからこそ二人の看病を手伝ってくれているのだ。
「じゃあアレクシアを頼むよ…俺はアルの方を見てくる」
「はい、お任せ下さい…」
そして、ロマンが部屋から出ようとした時。
「うぅん……ミーナ?…」
「えっ?……」
アレクシアが目を覚ましたのである。
「本当にもう大丈夫なのか?!……」
「だから大丈夫よ!……ホントに心配性なんだから」
ミーナがいるお陰で怪我などは問題はないがやっぱり心配になるのは普通だと思う。
「それでも俺はホントにしんぱ__ 」
「ハイハイありがとね!もう、大丈夫ですよ」
こっちはホントに心配してるってのにぃ……。
まあ、でも…大丈夫だったんなら安心だな。
「ホントに大丈夫ならよかった、アルに教えに行って来る」
「あら、アルはもう、大丈夫なのね?…」
「あぁ、大丈夫だぞ…」
そう言って俺は部屋を出てアルレットの部屋に向かって行った。
そして、勢い良く開いたのだを開けた。
「アルッ!!アレクシアが目を覚ましたぞ!!!………ん?」
だが、部屋を開けた先には真正面に仰向けで倒れている息子がいたのだ。
「そうか……俺、まだベットの上の人だと思われてるんだっけな……ちょ〜痛い……」
「何言ってるんだ?………て、お前!!何で動いてるんだ?!まだ安静にしてろって!!」
いくら怪我が治ってきたとはいえまだ動くのはダメだろうと思ったのだ。だが、次にアルから言われた言葉は何を言っているのか分からなかった。
「……ふぅ………治った…」
「……は?」
「だから、怪我は治った」
そう言ってきたのだ。
ホントに治ったのかと聞いても、
「この通り動けてるだろ?怪我は治ったよ…」
としか言ってくれないのだ。
俺としてもアルも普通に動けてるのであまり細かくは言わなかった。
なので俺も少し心配性が出てはしまったが本人がもう、動けると言っているのでそれいじょうは止めなかった。
それに__
「とにかく…俺はもう、大丈夫だからエリーの所に行ってくる……後、母さんの所にもね…」
すぐにみんなの所へアルが行こうとしていたし別に止める気もなかったが、ここで少しだがアルをからかってやろうという心の悪魔の囁きが聞こえたのだ。
まあ、こういう時は冗談交じりに話した方が言いとも誰かが言っていた気もするし。
「ほぅ……母さんはついでで…大事なのは「彼女」かい…?」
そう、ほんの軽〜くからかったつもりがまさか逆鱗に触れるとはおもいもよらなかった。
「はぁ?…」
そうアルが言ったあとに俺は反射的に後ろに下がっていたのだ。
なんだ??自分でも何をやっているのか分からなかった。
アルを見ればアルも何をしているのだろうというとてもキョトンとした顔をしていた。
だが………それ以前にアルから放たれている殺気が尋常ではなかったのだ。
今まで感じたことのない殺気、こんなに離れているのにまるですぐ近くで首に刃物を突きつけられているかのような感覚。
周りの空気がピリピリとしているのを感じるここは今まさに死闘の世界と化しているこのような雰囲気が出ている。
間違いなくこれはアルから放たれている。
この殺気、オーラ、気迫とも呼ぶべき気を放っている。
だが、ホントに恐ろしかったのはアルが無意識にこれを発動していたということだろうか。
「ア、アル……少し、からかっただけだって……な?」
俺は必死にアルを落ちつかせるように話した方をした。
だが__
「いや……何でそんな事してるの?……俺もからかわれたって分かるよ」
「?!……だ、だよな……ハ、ハハ…………」
アルは怒ってすらいなかった、だが、ホントに怒っていなかったらこれだけの殺気を普通は出すだろうか?
そんな事を考えている途中で俺は気付いた、自分も無意識の内に腰の剣の鞘に手をあてていた事に。
これが意味する事、つまりは本能的に体が動いたという事。
それだけの殺気を向けられたという事。
ど、ど、どういう事だ?!な、何故アルがそれだけの殺気を放てるのか?
いや、そもそも何故、今そんなに殺気をあてられたのか?
そうこうしてるうちにアルは母さんの所へ行くと言って出ていってしまった。
いろいろと聞きたかったことはあったのだが今俺が思うことは__
「殺されずに済んでよかった…」
それだけだった。
「何それ!フッ……それって貴方がホントに感に触るようなこと言っただけじゃないの?」
あの後、俺はしばらく考えていたが何故あんな殺気を放たれたかよく分からなかった。
「俺は何をしてしまったのか……」
「考えすぎねぇ〜……もぅ…」
「いや、そう言われてもなぁ…」
「と、いうか何でアルがそんな事出来たのよ?そこでしょ…」
「えっ?……」
いや、そりゃあアルにはいろいろと………いや、教えてないな。
剣術以外はどうかは分からないが、相手への威圧のかけ方なんてことは一切教えてないはずだ。
だとしたら………確かに……どうして威圧のような事を出来たのだろうか?
「確かに、変だな…」
「でしょ〜?…」
「でも、そんな力どこで覚えたのか……」
いや、待てよ………相手への殺気や威圧をかけることは簡単だが、それ以外にも強力な威圧効果を与えることが出来る力がある。
「【スキル】か……」
「そうだと思うわ…」
だったら納得がいく、あれだけの強い威圧を受ければ俺ぐらいなら何とかなるがアレクシアなどが受けていたら気絶してしまうのではないだろうか?
でも、何故アルがそんなに【スキル】を持つているのだ?
「あの時か……?」
魔族との戦いの中では新しい【スキル】を覚えたとでも言うのだろうか?
ホントにそんな事が……?
普通、【スキル】と言うのは修行や鍛錬の中で自分の才能が開花すると手に入るものである。
それ以外でもスキルを手に入れることは出来るが、戦いの中で手に入れたというのは俺は聞いたことがない。
それでもあの戦いでだと俺は思った。
だが、それで本当にそうだとしたら何て強大な【スキル】を手に入れてたのだろうと思った。
あんな威圧効果を与えることが出来る【スキル】何てとても、扱えるようなことでは………っ!!
待てよ……だとしたらもしかしてあの時は普通に俺に起こったんじゃなく、まだ制御出来ていなかった【スキル】が発動してしまったのではないだろうか?
もし、そうならそれは、危険だな………。
「アルにはいろいろと気をつけてもらった方がいいな…」
「え?……どうしたの?貴方」
「いや……何でもない…」
だが、この時ロマンは分かっていなかった。
アルが戦いの中でその才能を開花させて得た【スキル】は一つだけではないことを………。
まだ、ロマンが思ってもいない強大な力をアルレットは二つも持っているのだから。
そして、一番、知っておくべきだった事を知っていなかったのだから。
【称号スキル】のうちの一つが恐ろしい力である事に。
そう、【称号スキル】の「闇からの還元」で今もアルレット【能力値】はどんどんどんどん、上昇していっていることに。
次はしっかりとアルレット目線なのでいつも通りです。