これからは……
すみません、かなり短いです。
やっべえ
魔族がバルバッハを襲撃してから二日が経った。
村は未だに襲撃の爪痕が残っていたままだった。
それでも、着々と村の人達の手によって村は復活の兆しを見せていたのだ。
「さて……もう、動けるようになったて言うか、昨日の時点で完全だったんだけどな…」
そう言いながらベットの上から起きて着替えを済ませようとしているのはアルレット=エジェロワール、今回の魔族襲撃事件のほとんどを一人で戦い抜いた少年である。
彼は11歳ぐらいなのにも関わらず、一人で魔族二人を相手にし、バルバッハを守ったのである。
いや、もし…彼によく村を守ってくれたと誰かが礼を言ったのならば、彼は否定をするだろう。
彼はただ村の事よりも親友とも呼べるエリーナ=ヴァオラルシア、それに自分の親を守ることを優先しただけなのだ。
それでも、魔族に立ち向かって行ったことは結果的に村を救ったことになるのだから本人からしたら複雑な心境だろう。
まあ、彼にとってはこんな事は考えるまでもないことだ。
彼は今回の戦いで力を覚醒させたのだ、そっちの方がよっぽど大事な事だろう。
そして、今、彼は着替えを済ませて、自分の家からさほど遠くはないヴァオラルシア家の方に行こうとしていたのだ。
彼が魔族の戦いで死なずに済んだのはエリーナのおかげと言ってもいいだろう。
体を張って魔族の攻撃を防ぎきった。アルレットはその時は無傷でいられた、だがエリーナは瀕死の重傷を負ったのだ。
アルレットはその時の事を鮮明に覚えている、守れなかったことは事実で結果だと、何を言われようと自分は何も出来なかったと、そうアルレットは言うだろう。
「父さんにはあんな事言われちゃったけどな…………と、その前に母さんの所にも行っておかなきゃな」
それでもこれからは違う、もう一度言うがアルレットの力は覚醒したのだ。
今のこの力があったのならば魔族との戦いだってきっと、優位に立って事を進めれただろう。
___だが、それは後の祭りである。
過去は過去、それに今回の事件がなければこの力は覚醒していなかったかもしれないのだ、その事に関しては感謝をしていいぐらいだろう。
それに、これからはもう、守れないなんてことは一生起きることはないだろう…。
これからは違う……。
そう思いながらアルレットは部屋から出ようとした。
その瞬間、逆にドアが勢い良く開いたのだ。
「アルッ!!アレクシアが目を覚ましたぞ!!!………ん?」
勢い良くドアを開いてきたのはアルレットの父ロマンだった。
そして、アルレットはロマンの勢い良く開けたドアに顔面を思いっきりぶつけて仰向けに倒れたのだった。
「そうか……俺、まだベットの上の人だと思われてるんだっけな……ちょ〜痛い……」
「何言ってるんだ?………て、お前!!何で動いてるんだ?!まだ安静にしてろって!!」
「……ふぅ………治った…」
「……は?」
「だから、怪我は治った」
この時、ややこしい事になったなと思うアルレットと何を言っているんだコイツは?という変な目で息子を見るロマン達、二人の姿がそこにはできていた。
◆◇◆◇
「なあ、ホントに治ったのか……?」
「だから、さっきから言ってるし実際に動けてるだろ?」
「まあ、そうなんだが……」
いい加減しつこいな父さんも……俺はこの通り体も動くし怪我のところも治ったって言うのに。
あの後、俺は父さんにいろいろと聞かれたりしたのだが、治ったしもう、動けるとしか言いようがないのでただ、もう大丈夫な事を告げている。
なのに___
「でも……あと一週間ぐらいは掛かる感じだったんだぞ?それがもう、治ってるだなんて信じられんだろ……」
えぇ……しつこ〜……何なんだよって。
こんな事でそんなにしつこく言われるとは思ってもいなかったんだが……。
まさか……父さんが結構な心配性だったとはな……ハ〜…どうしたもんか。
「何で、そんなに心配するの?大丈夫だってば……」
「あぁ…すまんな……父さん昔はかなりの心配性だったもんでな……母さんにも「そこはしっかりしてくれ」って言われてるんだよな」
注意されるほどだったのかよ………全然、そんな感じはしなかったのにマジかよ……。
「とにかく…俺はもう、大丈夫だからエリーの所に行ってくる……後、母さんの所にもね…」
「ほぅ……母さんはついでで…大事なのは「彼女」かい…?」
その時、父さんはニヤニヤしていたので普通にからかってきただけだろうと予想。
全くからかい方が子供すぎる、何歳だよあんた……。
だがまあ、構っている暇はないので軽く流すような感じで呆れた風に言ったのだ。
「はぁ?…」
だが、この時、父さんは物凄い勢いで後退して腰に差していた剣の鞘に手をかけたのだ。
一瞬にしてこの部屋にピリピリとした重い空気が流れる。
え?……な、なに?……ただ普通に話してただけじゃん、どうしたと言うのだろうか?
「ア、アル……少し、からかっただけだって……な?」
完全に警戒されてる……誰が?…俺が??……えぇ……。
父さんは焦りからか、冷や汗を大量に流していた。
「いや……何でそんな事してるの?……俺もからかわれたって分かるよ」
「だ、だよな……ハ、ハハ…………」
俺は……今、父さんに殺気を放ったのか??…無意識に……。
何のために?……いや、放ってしまった?……。
どうやって………?
と、考えた時に一つ思い当たり事があったのだ。そう、それはあの魔族との戦いで手に入った【スキル】。
「死の覇気」である。
俺はまだ覚えたスキルを完全に把握している訳ではない。
つまりそれは完全に使いこなせている訳では無いということ。
だからこそ今みたいな事が起こったのではないだろうか?
そうだとしたら………これは早急に対応が必要だな……すぐにでも鍛錬が必要だ。
でも、今は母さん達の方が優先。
「ごめん父さん……それじゃぁ俺は先に行くよ」
「あぁ……後でなァ〜……」
うあぁ……完全に今のでやられちゃってるよ……果たして俺はこの力使いこなせるだろうか?………不安だ…。
◆◇◆◇
自分の部屋から出た後、すぐに俺は母さんの部屋へ行こうと急いでいた。
すると、前の廊下の方から使用人のミーナさんが歩いてきた。
「__ !!、アルレット様!もう動いても大丈夫なのですか?!」
「あ〜はい…父さんにも言われたんですけどね、大丈夫ですよ」
「そうでしたか………それと、私達使用人には敬語は不要でございます………直りませんね」
「ハハハ〜………」
イヤ〜働いてもらっている上にタメ口で話すのは流石に躊躇いがあるな。
元日本人なわけだしな〜。
というか、最近はホントに家に居ることが少なかったからこうしてミーナさんと話すのは久しぶりだな。
ミーナさんは使用人皆のまとめ役でもあるにも関わらず、まだ二十五歳とか……ヤバ過ぎ…改めて異世界半端ない。
「ところでミーナさ……」
「…………」
「ミーナは…どうして…此処に?」
やべ、敬語じゃないと片言風になっちまう。
「それは、勿論、アレクシア様の看病の為でございます」
なんだ…ミーナさんも……あ〜心の中だったらいいよな?
父さんと一緒に看病していてくれたのだろう。
「ありがとうミーナ……それで、今入っていい感じかな?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
と、快く入室を許可してくれたのだ。
よかった、入れないとか言われたらちょっと心配になるしな。
まだ二日しかたってないし、俺みたいにチートな力を持っている訳じゃないからな母さんは……多分まだ安静にしていないといけないレベルだろう。
「ふぅぅ……なんか緊張してきたな……」
何でかは分からないが緊張してきた……。
そして、目の前の扉を開け、中に入ると奥の窓側の方に大きなベットがあり、そこに母さんはいた。
「あら?……アルッ!…どうしたの?そんなに驚いちゃって……お〜い、アル〜?…あら?」
「えっ?……あ、あぁ!母さんの様子を見ようかなと思ってさ…」
「あらァ…そうだったのね…」
あれぇ……なんか思ってたのと違うな、もっとこう…全身グルグル包帯で重傷みたいな感じを予想していたのだが…。
「私なら大丈夫……だってミーナがいるもの…」
「え?…どゆこと??」
「ミーナは家の使用人でも、ありながらこの家の専属の魔術騎士でもあるの……それに加えて回復魔法まで使えるの」
魔術騎士って………そうだったのか…。
聞いたことがないような単語が出たな……。
「回復魔法……?」
「えぇ、そうよ……魔法には「生活魔法」「戦闘魔法」があることは分かるわよね?」
「う、うんまあ……」
それから母さんは続けた。
「でも、それだけじゃないそれに続く「回復魔法」というものがあってあまり細かくはないけどまあ、簡単に言えば自分の魔力を治癒力だったり回復力に変化させる魔法のことなの…それのお陰で私はこうやって回復できてるのよ」
なるほど……そういう事だったのか。
確かにあの時も【称号スキル】の馬鹿げた性能の「闇からの還元」という称号スキルも能力値を治癒力に変えてたがあれのような感じか……。
「分かった……怪我はだいぶ治ったみたいで良かったよ…ありがとうミーナ、それじゃぁ俺はこれで……」
「あら?……何処か行くの?」
「あぁ、ちょっとエリーの方にも顔を出してくるよ」
「フゥ〜〜ん………そう…気をつけて行ってらっしゃい……」
「?……う、うん、分かった……」
チッ……なんか父さんみたいな反応してるし、全く………分かるよ、俺は鈍感じゃないからな。
だが、そのような事は一切ないので否定否定。
ありえないだろエリーとなんて……ハハ…夢の世界じゃないんだから。
さて、それじゃぁエリー宅へ向かいますか〜…。
◆◇◆◇
「あら〜アル君!どうしたの〜?ってもう怪我とか大丈夫なの?」
あれから俺は急いでヴァオラルシア家の方に来たのだが、そこでちょうどマルナさんと会ったのだ。
「あ、はい…怪我は…大丈夫です、今日はエリーの見舞いというか、そんな感じです」
自分のチートで治ったんだけどな……
「そう、良かったわね、エリーなら今は自分の部屋に居るはずだからどうぞ上がって上がって」
「すいません、お邪魔します」
そうしてマルナさんに挨拶をしたあと、玄関の扉を開けて中に入ってエリーの所へ行こうとしたのだが、なんと玄関のすぐ近くの二階に上がる階段をエリーが松葉杖で上がろうとしている最中だったのだ。
えぇ?!何で動いてんだよ、まだ動いちゃダメじゃないのか?
俺はすぐに声を掛けた。
「おい、エリー何してるんだよ?怪我は治ったのかよ?」
「えっ?……えぇぇ?!ア、アル〜?!」
めっちゃ動揺された……。
「な、何で此処にいるの?!」
「いや、エリーは大丈夫かなと思って見に来たんだけど…」
「えっ?ホントに?!……それって心配してくれてるってこと……?」
「いや、心配するに決まってるだろ……それに感謝もしてるしなあの時のことの…」
まあ…今日はほとんどそれについても話に来たんだがな。
「そっか…………まあ、立ち話もあれだし部屋で話そうよ!」
「あぁ、失礼するよ…」
それから、エリーに連れられエリーの部屋へと入っていく。
意外に綺麗だった………。
それから、何か話そうと口を開こうとするが、何も浮かばない。
やべ、完全にこれは気まずいってやつだ……。
見舞いに来てこれはさすがにやばいな……何か話題を探さなくては……。
そうこうして俺が考えているうちに部屋に来てから俯いたままのエリーが話し始めたのだ。
「あの時は…多分……無意識に動いてたんだと思う」
「え?……」
「あの時、アルに森にいろって言われたあとさ、自分がこうしているあいだもアルが戦ってくれてると思うとどうしてもじっとしてられなかった……心配で心配でしょうがなかった」
「エリー俺は__ 」
俺が話そうと口を開くもエリーに遮られる。
「それで!……あの場に行ってみたら私の考えは当たってた……あそこでそのままだったらアルはもっと酷い目にあってた……だから、私はアルのことを助けることができて良かったと思ってるよ!」
「……エリー…」
それからエリーはいつものような明るい笑顔を俺に向けてきた。
けどそれは違う……いつもの笑顔じゃない。
偽りのモノだって言うのは見ればわかる………。
怖かったと思う……どれだけあそこで前に出ることが勇気のいることか……そして、俺の為にしてくれた事だと……。
………やはり俺もホントに変わったもんだ……こんなことを考えるようになったなんてな。
こんな事は二度とさせるわけにはいかない……自分を変えるのは今、この瞬間しかないだろう。
「…エリー……エリーが助けてくれたことはホントに感謝してる……ありがとう。でも、これっきりだ……俺はもっと強くなる、何にも屈しないし敗れない。自分の大切なものを守れるようになりたいから……これからは俺が全部……自分の大切なもの守るよ……」
「大丈夫だよアル、アルだけがそんな思いする事なんてないんだよ?私は大丈夫だからっ!ね…」
「エリー、俺はもうあんなのは見たくないんだ……自分が何も出来ずにいるのは嫌なんだ……それに……」
「それに?……」
「いや、何でもない……っとそれじゃぁ俺は行くよ元気そうで良かったよそれでもまだ安静にしてろよ」
「っ!………う、うん」
それから俺は部屋から出て、マルナさんに挨拶をしたあとヴァオラルシア家を後にした。
勝手なのは分かってたんだ………でも、何も出来ずにいるのは嫌だ……それに……改めて今回の事で俺はまだ昔の俺だと分かった、何も変わってないと。
だが、これからは違う………そう、これからは……新たに得た力で自分を変えるんだ。
そして俺は誓う……自分の大切なものは絶対に守ろうと。
もうちょっと早く書きたいよね……うん。
アルレットもようやく気持ちがまとまったんスかね。
すみません訂正というか削除した部分があります
最後の魔王と魔族の会話は後々になっていらないな、と思ったので消しました。




