ペナルティ
今回は短めです。
あと、エイプリル参加したかったですが、ネタがありませんでした(涙
「エルサーーッ! 無事だったか?!」
装備欄で何を装備するかを設定し、決定を押した瞬間――裸からちゃんと服を着た状態へとオレは変化する。
サラバ、痴女候補生。やっぱり服は偉大だ。
心からそう思いながらオレはホッとする。
……イーゼ? 彼女は裸に慣れたからか、裸のまま堂々と立っており風を受けているよ。
凛々しい痴女だな……。見習いたくないし、憧れたくもないけれど。
とか思っていると、向こうからブシドーが大きな声を上げながら近づいてくるのが見えた。
なのでオレも返事を返すために手を振ることにする。
「ああ、大丈夫だーーっ。そっちはどうなんだ? というか、あのゲスジジイどうなったんだ?」
「ふぅ、ふぅ……。無事なら良かった……。ゲ、ゲスジジイか……、あいつは凄いことになったお前が巨大なアニマステラさんを倒してすぐに逃げようとしたのだ」
「そうなのか……って、逃げようとした? 逃げた、じゃなくってか?」
「ああ、逃げようとした。だ。今は袋叩きにされて縄で縛り付けている」
そう言うブシドーは呆れたような表情をしているのだが、いったい何があったんだ?
疑問が表情に出ていたのか、彼女が説明を始めてくれた。
「先程も言ったように、ジ・ゴールドはアニマステラさんがエルサたちによって倒されたあたりで不利と判断したのか、すぐに逃げ出そうとしたのだ。
だが、逃げ出そうとした方向から、運が良いのか悪いのか拙者たちが戦っていることを告知を見て知った流星さんたちが近づいて来ていたらしい」
「つまり、流星さんが……逃げ出そうとしたゲスジジイと出くわして逃げ時を失ったって所か?」
「……だったら良いのだが、もう一人の同行者である嵐牙さんが有無を言わさず顔面に飛び膝蹴りを打ち込んだんだ」
アチョーだったか、ヤイサホーだったかという甲高い叫びと共にな。そうブシドーは言う。
当然、ゲスジジイは「た、頼む逃がしてくれぇ! 金なら、ゲームでも現実でも良いから、幾らでもくれてやるぅぅぅ!」と言ったようだが、それは無視されたらしい。
「とりあえずはジ・ゴールドをどうするかと話し合っている最中だから、エルサたちもすぐにこちらに来て欲しいのだが……大丈夫か?」
「ああ、それなら大丈夫だけど……、イーゼのほうが……」
「イーゼさんがどうかし……ぶっ!? な、何故裸なのだぁ!? まさか、まさかさとる! 貴様、あんな年端も行かない少女を無理矢理脱がせたというのかぁ!?」
「なんでそうなるんだよっ!? あの状態から戻って気がついたら素っ裸だったんだって!!」
顔を真っ赤にするブシドーにオレは叫ぶのだが、彼女の頭の中ではきっと「ぐへへ、おれをたのしませるんだー」なんて下種い表情をしているオレの姿が浮かんでいるのだろう。
というか失礼な奴だな。オレはそんな表情はしないぞ? ……というか、したらビジュアル的に最悪だろうし。
「き、貴様も素っ裸だったぁっ!? まま、まさか、まさか……過ちを犯してしまったというのかっ!? 拙者というものがあって、ニィナさんという者がありながらっ!?」
「だから、何度も言うけど、オレは何もしてな――――っ!?」
妄想はますます進んでいるらしく、ブシドー……というか雪火はもう頭にヤカンを載せたら簡単に沸騰するようになっていることだろう。
だからその誤解を解くために、オレは更に声を荒げようとした……瞬間、眩暈を感じ、その場にしゃがみ込んでしまった。
その様子にブシドーも気づいたらしく、不安そうな声を上げながらオレの体を揺する。
だが、その感覚はどこか遠くに感じられ……ノイズが走る視界には半透明なパネルが表示されていた。
その内容は、今時分に起きている……いや、起きようとしている現状の説明が書かれていた。
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・神化の代償
1.一週間ほど見た目がかなり幼くなります。
2.その間、ステータス値は軒並み下がり、最大値も100で止まります。
3.一週間が経ち元に戻っても、ゲーム内で一ヶ月はステータス最大値が999で止まります。
その間、倒れないように気をつけてください。
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え? なにこれ? なんなのこれ??
表示されている告知に目を点にしていると、視界に走るノイズが薄まっていくのを感じた。
そして聞こえるのは、戸惑うようなブシドーの声だった。
「エ、エル……サ? そ、それはいったい……?」
「ふぇ……?」
プルプルと震えながら、驚いた表情でブシドーはオレを見る。
というか、ブシドーの身長ってこんなにも大きかったか?
不思議に思いながら首を傾げると、ズルリと肩から着ている服がずれた。
……あ、あれ? どういうことだ?
「にゃあ、ブシロー? いっらい、こりぇは……ん? んべ!?」
不思議に思いつつ、ブシドーに声をかけながら彼女に向かって行こうとする。
だが、自分の声に違和感を感じた瞬間、足が何かに引っ掛かり顔から転んでしまった。
どしゃっという音と共に顔が地面とキスして、痛みが顔に走る。と、涙が溢れ出すのがわかった。
「いちゃい……いちゃいぃぃ~~!!」
「わわっ!? エ、エルサ大丈夫か!?」
慌てた声でブシドーがオレに近づくと、ヒョイとオレを抱き上げた。
そして抱き上げたオレに対して、彼女は頭を撫でていく。
「うぅ……って、ちょっろまれ? にゃんれ、しぇっきゃがオリェをだきあぎぇれりゅ?」
「……あー、エルサ……。何故拙者がお前を抱き上げれるのかと言うとだな……。ちょっと待ってくれ、えっと……確か、こう、だった……のだよな?」
凄く言い辛そうにブシドーがオレを見るのだが、そこはかとなく嫌な予感がするのを感じる。
そしてその予感は、彼女が四苦八苦撮影したスクリーンショットで判明した。
「……エルサ、これを見てくれ」
「シュクショ? ……うぇ? にゃに、こりぇ?」
ブシドーが見せたスクショ、そこには硬い表情を浮かべながら幼女を抱き上げるブシドーが写っていた。
だがそれは問題ではないのだ。問題は、幼女のほうだった。
その幼女は見た目、5,6歳ぐらいで身長は年相応の小柄、銀色の髪は腰下まであり、円らな蒼い瞳はブシドーを見ている。
ちなみに服装は何処かで見たような大きな服を羽織っているようで、足首にはパンツが引っかかっているのが見えた。
これは、もしかして……もしかしなくてももしかする……?
嫌な予感を確信に変えつつ、確証を得るために……オレはブシドーへと問いかけた。
「にゃあ、ブシロー……? オリェ、ようろになってりゅ?」
「……そのとおりだ」
気まずそうな表情をしながら、ブシドーは首を縦に振った。
……どうやら、オレは見た目が幼女になってしまっているようだった。
…………マジデ?
ということで、幼女になってしまいました。見た目は。




