散り散りのメンバー・3
お待たせしました。
「これで――最後だっ!」
――GGGGGGGGGUUUUUUUURRRRRRRUUUUUUUUUUUUUU!!
夕陽を背景にして、手に握られたナイフが腕の振りとともに鉄の軌跡を描くと、雄叫びを上げながら襲い掛かる狼型のモンスターの命を刈り取った。
それを見届け、ふうと息を吐き出してから夕陽に照らされた周囲を見渡すと……つい先程までの激戦を物語るように地面にはモンスターの素材が多々落ちていた。
とりあえず、回収だな。
そう思いながら、インベントリの中へと回収を始めると同時に、イーゼがホームとなっている集落の中央に建てられた家へと駆け出していった。
多分、残されていた仲間が心配なのだろう。オレも追いかけるべきなんだろうけど……、代わりに樹之命さんが付いて行ってくれているから大丈夫だな。
まあ……だけど、素材の回収をする前にだ……。
「えーっと、サンフラワーさん? 暇だったら、モンスターの落とした素材の回収を手伝って欲しいんだけど?」
「ふふっ、わたくしは忙しいんだぞ? とてもとてもすげーくらいに大事なことがあるからな」
「……そのすげー大事なことって言うのは、オレの髪とか体とかを触ることなのか?」
「そうだ。いわゆる、ダチのスキンシップってやつだ!」
「あー……、そーですかー……ひゃ――っ!?」
撫でられた箇所がゾクリとし、オレの口から可愛らしい声が洩れ……なんだか恥かしくなった。
駄目だこれは……、今はまだこの女性の性格が良く分からないから判断に困る……。
というか、やばくなっていたニィナと同じような気配がするのは気のせいじゃないはずだ。
……そういえば、ニィナってどうしてるかな……。まだ、ほんの数日だけしか経ってないけど、元気か心配だ。
そう思いながら、サンフラワーさんがオレの体にベッタリとする中で素材を回収していく。
若干その行為に現実逃避が入ってるけどな。
そして、どうやらオレの真上には不幸の星でも輝いているらしい。何故なら厄介ごとが増えたからだ……。
「貴女! エルサさん!! これには助かりましたけど……、あ、貴女に借りを作るつもりなんてワタクシにはありませんからねっ!!」
視界にカラフルな衣装が見えたと思ったら、突如ファンシーな杖を突きつけプンスコ怒っている女性がそう叫んできた。
えっと、確かこの人の名前って……なんだっけか? えーっと確か……。
名前を思い出そうとしたところに、オレにべったりだったサンフラワーさんがギロリと女性を見た。
「あぁっ!? テメー、何わたくしの邪魔をしてやがるんだ!?」
「ひ、ひぃっ!? え? ちょ――サ、サササンフラワーさんっ!? なんで、ワタクシにメンチを切ってくださっていますのよ!? というか、そういうキャラでしたの!?」
「メンチを切るわけだぁ? それはなぁ、テメーがわたくしとエルサのスキンシップの邪魔をしたからだろーがよぉ!」
「あひゃああああああっ!? ご、ごめんなさい~~!! ――って、何なんですのよこの状況はぁ!?」
サンフラワーさんのメンチから立ち直ったえーっと……本当に名前なんだっけ?
とりあえず、似非魔法少女さんと思っておこう。その彼女がオレたちを見ながら頭を抱えた。
まあ、頭を抱えたくなるよな。
だって、黙々と素材を拾うオレと、そのオレにベッタリとくっつきながらギロリと睨み付けているサンフラワーさん、というよりもサンフラワーさんのスキンシップが色んな意味で怪しすぎるんだ。
「えっと……、彼女が言うにはスキンシップらしいけど。……えーっと……」
「ス、スキンシップって……、これはそういうレベルでは……と、というか貴女。もしかしてワタクシの名前を覚えていないとでも言うつもりですのっ!?」
「……………………」
「覚えていませんのね! コンチクショウ! おーぼーえーてー……いませんのねー!? ワタクシの名前は、アニマステラ! ア・ニ・マ・ス・テ・ラ! ですわっ!!」
「ああ、そうだったそうだった。そんな名前だったんだ」
「チクショーーっ!!」
アニマステラ、そういう名前だったんだ。似非魔法少女さんのプレイヤーネームを思い出し、頷くと彼女はショックを受けているのか天に向かって叫んでからガクリと膝を突き項垂れ始めていた。
……そんなにショックだったのだろうか?
自称ライバルとか言ってたから、覚えられているものだと思ってたのか?
などと思っていると、目の前に告知が表示された。
「今度はいったいどうなったんだ? ――って、マジか?」
内容を見てオレは目を瞬かせる。
何故なら、そこに表示された告知は3つあり、その一つが驚くべき内容だったからだった。
《――告知。イースの集落がモンスターたちに蹂躙され崩壊しました。》
《――告知。プレイヤー『流星』とプレイヤー『嵐牙』が合流しました。》
《――告知。プレイヤー『ブシドー』がイーゴの集落を開放しました。》
◆
――――― イーゼサイド ―――――
装備した革の鎧が重く、穿かされたパンツが股に喰い込んで少し痛いけれど、我は頑張って走った。
先程と同じようにパンツを脱ごうとワンピースの中に手を入れようとするのだが、後ろから威圧感がして止めたのだ。
ガミガミはもう嫌なのだ。
そう思いながら走っている途中、変な格好をした女がすれ違ったが、向こうは我に目を合わせていなかったから気にしないのだ。
そして、小高い丘の上に家が見えると中から外に出ている者の姿が見えたのだ。
その者は我々であり、我とも繋がっていた者なのだ。
けれど、その姿はちんちくりんな感じの我とは似つかないスラッとした体型をしているし、中身だってもう違うのだ。
数日前までは、そのことに内心怒りを感じていたし、あいつらは裏切り者とも思っていた。だけど、それはもう感じないのだ。
それに……無事でよかったとも思っている。だから……、我はそいつの名前を呼んだのだ。
「はぁ……はぁ……イ――イーナ!」
「その声……E-0? 珍しい、出不精のあなたが何でここに来…………あなた、本当にE-0なの?」
エルフたちがそれぞれの自己を手に入れた日、我はみんなへと酷いことを口にしたのが原因だろう。
イーナは我の声に気づくと、嫌そうな顔をしながらこちらへと視線を向けた……が、驚いた表情を浮かべながらこちらを見てきたのだ。
自己を確立した期間が我よりも長い分、我に向ける表情にも言葉にも感情が篭っている。……我もいずれはああなるのだろうか?
そんなことを頭の片隅で思いながら、我は驚いたまま固まるイーナを見たのだ。
「ああ、我はE-0だったのだ。だけど、今はイーゼという名前なのだ」
「へー……おっどろいた。あなた、我々であることに拘り続けてたじゃないの。それがどうして名前をつける気になったの?」
「……初めは、ある奴に無理矢理名前を呼ばれたのだ。そのときは泣いて泣いて、泣きまくったのだ。けど、そんなときに我々が我の前に現れてくれたのだ。そして、我々はこの大地のいたる所に居ると言うことを教えてくれたのだ」
「なるほどね。我々から切れたつもりだったけど、わたしたちを見守ってくれてたのね。……だったら、拘り続ける理由はない。ってことかー」
我の言葉に納得したようにイーナは頷き、改めて我をジロジロと見始めたのだ。
な、何だかこそばゆい感じがするのは、きっと気のせいではないはずなのだ。
モジモジしていると、どこか安心したような嬉しいようなため息がイーナの口から漏れたのが聞こえ、顔を上げると……抱き締められたのだ。
「わわっ!?」
「まあ、何にせよ……無事で良かったよ」
「……そう、なのだな。イーナも無事で良かったのだ。それに、安心するのだ。我らが絶対にイワンたちも助け出して見せるのだ」
我のことを心配してくれていたイーナの言葉に胸の奥が温かくなるのを感じながら、我もイーナの背中に手を回す。
……体格の違いがあって、ギリギリだったけれど何とか回せたことにホッとする。……おっぱいがあったらきっと回らなかっただろうけど。
「うん、信じてるよ……。けど、無茶はしないでね。……イーゼ」
「分かっているのだ。イーナ、絶対に帰ってくるのだ」
――絶対に、みんなを助けて……!
そう心に近いながら、我は次の目的地に向けて移動を開始するために歩き出そうとする。
……が、どこか申し訳なさそうにエルサが立っていたのだ。
「あー……、決意して次の目的地に旅立とうとしている所悪いんだけどさ、イーゼ」
「何なのだ?」
「もう空が夜になり始めているから、今日はここで休んでから次の集落に向かおうと思ってるんだけど……」
「そう…………なのか?」
エルサの言葉に、我の中にむくむくと育っていたやる気が一気にシナシナと萎びていくのが分かる。
だけど、最後の抵抗と言わんばかりに我はもう一度尋ねるのだ。
「……正直、助けに行きたいと思う。だけど、暗い中での移動は体力も精神も使うし、モンスターは夜目が利く奴らが多そうだから、な……」
「…………わかったのだ」
申し訳ない顔をしたエルサを見ながら、我はしょんぼりと頷く。
そして、ゆっくりと振り返ると……微妙な表情をしたイーナが居た。
「あー、えーっと……うん、まあ……ゆっくりして体力を回復してね」
「そうするのだ……」
イーナの声を聞きながら、我は彼女の家へとエルサたちとともに入っていったのだ。
そして、ここ数日と同じようにエルサがコメを使った料理をつくり、舌鼓を打ってしばらくしてから我はベッドの中へと入った。
……どうやら疲れていたようで、気づけばぐっすりと我は眠っていたのだった。
出鼻を挫く物語(涙




