地上へ……
お待たせしました。
「――――いたたたた……。何か意識が遠のく自体ばかりが起きてるように思えるな……」
銀色の光が室内を満たし、オレの体は壁に叩きつけられ……一瞬だけだけど意識が跳んでいたようだった。
というか、オレの魔力に耐え切れず木剣が爆発したけど、威力が強すぎないか!?
あの爆発を思い返しながら、ようやく目が慣れ始め……部屋の全容が明らかとなった瞬間、オレは口をあんぐりと開けていた。
「わ、わーーお…………」
クレーター。
まさにその一言が全てを理解させるのに十分な一言だと思うように、オレがモンスターに魔力を込めた木剣の一撃を放った場所にポッカリと大きな穴が開いていたのだ。
その洒落にならない光景を前に、あんぐりと口を開け……わーお、としか口に出来ないのも頷けるだろう。
「あっ! というかモンスターはどうなった!?」
唖然としてたオレだが、モンスターを倒していないというのに体に魔力を行き渡らせていないことに気づき、急いで魔力を行き渡らせると同時に周囲を見渡し始める。
キョロキョロ、キョロキョロと周囲を見て……すぐにモンスターを見つけた。
というよりも、見つからないほうが可笑しい状況だった。……なんせ、床にめり込んでいるのだからな。
「つか、あれだけの爆発だったのに良く生きてるなぁ……」
地味に強いだろこいつ。
心から思いながら、とりあえずトドメを刺すべくゆっくりと近づいて行く。すると……。
『――――ン』
「ん?」
『――人間……』
何か、いきなり昔懐かしのシュ●ちゃんの吹き替えの人の声が頭の中へと響いてきた。
えー? ナニコレー?
顔を顰めていると、頭に響く声は尚も続いていた。
『人間、わたしのこえが……聞こえるか……?』
「……えーっと、大体予想はついているけど……この声って、お前か?」
『そうだ……、わたしは、このダンジョンに封印されているが伝説のゴースト……その名も、大賢者ェロイットだ』
「……なあ、今最悪な名前を耳にしたんだが気のせいか? ロイットだよな?」
誤魔化すようにオレはそう言うが、聞こえていた。エロイットと言ってるのがバッチリ聞こえていた!
そう思いながら、エロイットを見ていると……ごほんごほんとワザとらしい咳を脳内ですると……。
『そ、そうだ。わたしは……ロイット、大賢者……ロイットだ』
「……それで、そんな大賢者様がどうしてこんなところで幽霊型モンスターになってるんだ?」
誤魔化しやがった。……こいつ、絶対に信用出来ない! 心からそう思いながら、オレは大賢者は抜きにしてもエロイットという名前を思い出し始める。
すると、オレの知識なのか神さまの知識なのかは分からないが、視界につらつらとエロイットという名前の項目が表示されていく。
……ちなみにそんなオレの状況に気づいていないのか、エロイットはつらつらとモンスターとなった経緯を語っていた。
まあ、俗に言う……自分の研究が異端とされて、王国に捕まって処刑されたけれど成仏することが出来ずにふらふらしていると何時の間にか街の下にあったこのダンジョンに住み着いていたと言う。
その言葉に対して、オレは適当に相槌を打つだけだが……普通のプレイヤーは声を聞き取れないということもあるのか、久しぶりに話せてヒートアップしているようだ。
ヒートアップしている内容も右の耳を通り左の耳から抜けていく。そんな感じにまったく覚える気はなかった。
というか、吹き替え版のシ●ワちゃん声で女体の神秘がどうとか言ってるのは止めて欲しい。
そんなことを思いながら、エロイットを見下ろしているが……ようやく確信に至る物がヒットした。
同時にエロイットから……。
『だから、人間よ……。お前のその慎ましやかなぉっぱぃを成長させる手伝いをさせて欲しいのだ……』
―――――
・大賢者エロイットについて。
この人物は、『大賢者式おっぱい豊胸術』を発行しており、それが原因で処刑された最低な賢者である。
更に言うとこの本を創るために、幾人もの女性の胸を大賢者の権限で無理矢理揉んだとも言われている。
ちなみに豊胸は成功したかと聞かれたら、全然成功せずに乳揉まれただけだったと怒る女性が多々居たという。
なお、この大賢者には妙な信者は居るが同時期に処刑された。
しかし、性質が悪いことにエロイットたちが没して数十年のときを経て、執念からかモンスターへと変異したが噂を聞きつけた神官たちによって地の底へと封印されたらしい。
P.S.エルサさんへ。
やっちゃってください♪
―――――
「賢者という名のクズじゃねぇかよ!!」
『あ、ちょ! やめ! やめてぇぇ! 死んじゃう! 死んじゃうのぉぉぉぉぉ!!』
検索結果の表示と共に、神さまからの抹殺許可を貰ったオレは心の底からそう叫び、魔力を込めた拳を振り下ろした。
やめてと叫んでいるが……変態に慈悲は無い。
心からそう思いながら、魔力をこめた拳を下ろし続けるが……権力でおっぱいを揉もうとする奴にも慈悲はない!!
「はあああああああああああ……っ! でりゃああああああああああああああーーーーっ!!」
無意識なのか、意識的なのかは分からない。分からないが気合を込めて放たれた拳には何時の間にか火の属性が宿っており、燃え上がる拳がエロイットへと放たれた。
拳がエロイットに触れた瞬間、室内全てを焼き尽くすほどの炎がオレの拳から放たれ――驚きながらも、拳を打ち込んだまままたも呆然としてしまった。
『あ、ああ……! 燃える……! わたしの、わたしのやぼうが……燃える……! 体と共に燃え尽きてしまう……!!
おっぱい、もっとおっぱい、おっぱいの感触をぉぉぉ…………!!』
何とも最悪な捨て台詞を残しながら、エロイットの体は炎によって焼かれていき……後には灰も残らなかった。
まあ、幽霊だしなぁ……。
そして、エロイットが燃え尽きたというのに今だ部屋中が燃えているのは何故だろうか。しかも室内は燃え盛っているのにオレの体が熱くない……というか消し炭にならないのは、魔力を体に行き渡らせているからだろうか? それとも、このエロ衣装のお陰か?
「うぅん……、謎だ……」
とりあえず、炎が治まったら……エクサに聞いてみるか。
そう思いながら、オレはジッと燃え盛る部屋の中で立ち尽くしていた。
そして、しばらくして炎が鎮火していくと同時に、オレの視界に詳細画面が表示された。
~~~~~~~~~~
バトルスキル【魔法剣:LV1】を獲得しました。
バトルスキル【魔法拳:LV1】を獲得しました。
バトルスキル【魔力圧縮:LV1】を獲得しました。
バトルスキル【魔力爆発:LV1】を獲得しました。
バトルスキル【魔力伝達:LV1】を獲得しました。
バトルスキル【魔力供給:LV1】を獲得しました。
バトルスキル【火炎耐性:LV1】を獲得しました。
バトルスキル【魔法剣:LV1】が【魔法剣:LV5】にレベルアップしました。
バトルスキル【魔法拳:LV1】が【魔法拳:LV5】にレベルアップしました。
バトルスキル【火炎耐性:LV1】が【火炎耐性:LV7】にレベルアップしました。
エクストラスキル【言語理解:LV1】を獲得しました。
『エクサダンジョン』を攻略しました。
称号:魔法剣士――を獲得しました。
称号:魔法拳士――を獲得しました。
称号:爆発痴j――称号:爆発乙女――を獲得しました。(涙
称号:野望を打ち砕く者――を獲得しました。
称号:執行者――を獲得しました。
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……何というか、魔力系に充実したスキルばかりだな。っと、そういえばステータスのほうはどうなってるんだ?
ふと疑問に思ったオレは、ステータスを表示してみることにした。
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名前 : エルミリサ
種族 : 半神
年齢 : 14
HP : 7936/8936
MP : 502/6089
STR : 3252
VIT : 2953
DEX : 3645
AGI : 3943
INT : 2642
MND : 2652
LUK : 529
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……もうね色々と可笑しいよな、このステータス……。
遠い目をしながら、表示されたステータスを見つつオレは率直にそう思う。
まあ、この体の宿命と思うしかないだろうけど。
そんなことを思いながら、オレはエクサの居る部屋の扉を開けた。
◆
「あ、戻ってきた…………」
「……えっと、何があった?」
「あんたに関係ないようで関係あるような出来事に巻き込まれてただけ……」
「そ、そうか……」
何処かゲッソリとした表情のエクサに声をかけるとそう返答を貰ったが……本当、何があったんだろうか?
気になるかと言われたら少しは気になる。だけど聞いたらいけない気がするので聞かないでおこう。
そう思っているとエクサのほうもエクサのほうで起きてしまったであろう何かを忘れたいとでも言うように話題を変えてきた。
「それで……、特訓第二段階の手の先に魔力を流す行動は出来た……?」
「待て、手の先に魔力を流すだけ。それだけで良かったのか? あと、ついでに一撃でも入れるぐらいで?」
「当たり前……。だって、アレは変態すぎる上に能力もあるから手に負えないし、普通に倒そうにも『物理攻撃無効』も付いてる。だったら、魔力を行き渡らせて憑依されないように魔力を維持することと……一撃でも入れることが出来るようにすること、それがこの特訓第二段階の真の目的……。
つまりは何時の間にかダンジョンに住み着いた扱いが難しい変態を上手く再利用していたわけ……。どうかした?」
……えー、まじでー……? マジで一撃入れるだけで良かったのかー? まあ、普通に初心者が戦うには絶対に倒せないモンスターって感じだったよなぁ……。変態的な意味でも。
所謂、昔からのロングセラーである(一時期やや落ち気味だった)超大作RPGで言うところの、勇者ひとりだけで魔王城内のモンスターと戦うレベルの難易度だ……。
初めて知った事実に顔を顰めていると、向こうも何かをしたことに気づいたらしくオレを見てくる。
というか、可能性に気づいたらしく……「まさか」と呟いていた。
「……もしかして、やっちゃった?」
「もしかしなくても、殺っちゃった……」
「……倒したかって聞いたんだけど、完膚なきまでにやっちゃった?」
信じられないとばかりにエクサがもう一度訊ねたので頷くと、そそくさとオレが出てきた扉を軽く開けて中を覗こうとしたが……すぐに閉めた。
そして、ゆっくりと振り返ったエクサの顔は汗だくとなっており……、肌も少し赤く見えた。
けれどその表情は信じられないと言うか、予想通りと言うべきかという分かっているけれど分かりたくない。そんな感じの表情をしていた。
「……なに、あの熱さ? いったいなにしたの……?」
「えっと……」
さっさと答えろ。そんな気配を漂わせながら、エクサはオレを睨むように見つめる。
なので、オレは正直のどう戦えば良いのかという方法を考えて自分なりの……というよりも多分正解であろうやりかたを口にして行き、最後にあの変態を叩き潰したということも告げた。
そんなオレの発言を頷きながら、エクサは……徐々に眉を寄せて顔を顰め始めていく。
そして、全て語り終えたときには……腕を組んでどう言えば良いのかという悩んでいる表情を浮かべ……。
「はぁ~~~~…………」
物凄く大きな大きな溜息を吐き出した。
……またまたどうしたんだと。いや、分かるよ? 何かまたオレがやらかしたんだろ?
そう思っているとエクサはオレに対して説明を始めるつもりなのか姿勢を正した。……なので、オレも反射的に姿勢を正す。
「……やっぱり、何度も言うけど……体が主神様の分け身なだけはあるわ。
またそれを忘れて普通の人間基準でやってたみたい。……ごめんなさい」
「え、っと……、何度も謝られても困るんだけど……詳しい説明頼めるか?」
「わかった……。チラリと室内を見たことと、あんたから話を聞いただけだけど……たぶん大体は当たってると思うけど、やっぱり直に見ていないから詳しくは説明出来ない。……それでも良い?」
確認するように問いかけてきたので、オレは軽く頷く。
それを確認したエクサは話を続ける。
「……良いみたいね。それじゃあ、説明するよ。
第一に通常、武器に魔力を通すのは一度に10ぐらい、良くて50が限界だったりする。……まあ、込めれる魔力は等級によって変わる物だけどね?
で、あの木剣は等級は最低級を用意しておいたから、50なんて魔力を一度に注いだら砕け散るのが普通なの。
なのに、あんたの持っていた木剣は爆発したと言ったよね? だったら、その爆発っていうのは限界以上の魔力が注ぎ込まれた結果、木剣に込められるはずだった膨大な魔力が木剣を破壊したときに爆発の性質を得て爆発してしまったと見るのが良いと思う。
……つまりは、武器に魔力を込めるつもりならあんたの魔力に耐えれるほどの等級の武器を用意しないと爆発してしまうっていうこと。
しかも、等級の違いでも爆発力が変わるなんてことだったら……、辺り一面焼け野原になる可能性もあると思って」
だるそうな雰囲気だけれど、真剣な顔をして話すエクサをオレはジッと見続ける。
すると、手を前に出してピースをするように指を立てようとしたが、言うのが躊躇われたのか口を閉ざした。
「第二に……いや、これは言うのはやめておく」
「え? やめておくって……、どうして」
「それは、嫌でも気づく……もしくは別の神が教えてくれると思うから……。ただ言えることは、主神様の分け身に入ってるからって分かるけど、あんたの魔力の質も量も異常だってこと……。
そこだけは覚えておいて……」
そうエクサが言った瞬間、オレの足元が光り出し――光の柱となった。
突然のことで驚き、すぐに飛び出そうとするオレだったが、エクサが静止するように手を前に出す。というよりも、伸ばしたてもバシンッと弾かれたので出るに出られないだろう。
「初歩の魔法の訓練はこれで終了……。あんたは剣を選んだから基本的に接近戦で魔力を使う戦いかたが基本だけど……、もっと魔力の扱いが上手くなったらもう一度来て。
そのときは、杖を使って遠距離系の魔法を教えてあげるから……。
今日はお疲れさま……。またね」
エクサが言うだけ言うと、オレを中心とした小さな光の柱が光を増し……あまりの光の強さに目元を手で隠した瞬間、最大限の光が手越しの視界を覆った。
光が収まり……、体に風を感じるようになり……ゆっくりと腕を下げて目を開くと、リットル訓練場内のグラウンドの片隅に立っていた。
そして、目の前の光景にオレは……唖然とした。
「え、なにこれ?」
そう……オレの目に映るグラウンドは…………荒れ果てていた。
とりあえず、現状のエルサのステータスは通常プレイヤー(廃プレイ)の10倍というチートっぷり(笑




