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第一章~低層突破は難しい~Ep31

更新遅くなってしまってごめんなさい。

現実世界で二日後――七月十五日午前九時。

今回のログインでの二日目を迎えていた。

「っ!」

のびてくる灰色の腕。

しかしそれは腕とは形容しがたいほどの腐臭した塊だった。

不敗の誇り――ではなく腐敗の埃で構成された人型のモンスター。

『ゴーンバッド・ピープル』

舞う埃が鼻孔をくすぐる。

鼻をつんざくような埃臭さに顔をしかめる。


寂れた都市。

前層の海とは一転して、灰色の世界の中に俺はいた。

未来廃都市をイメージしているのだろうか。

崩れているビルやアンテナは灰色に染まってはいるが、元はとてもグッドシステムだったように思える。


『グゥウウウウウ!』

そのビルの陰から現れるゾンビたち。

埃でできているため、攻撃範囲の小さい矢では大きなダメージを与えられない。

一気に霧散させられる簡易地雷(インスタント・ボム)の方が有効だ。


だが、俺にはそれができなかった。

いや、その選択肢はこの階層によってつぶされていた。


この階層は今俺の立っている床が地表となっているわけではないのだ。

爆発を起こすとその衝撃で、階層が壊れる。

それほどに脆い。


俺は初めてここで戦闘をしたとき、なにも知らずに爆発を起こしたせいで一層の教会まで戻されてしまっている。


その時は爆発の衝撃が俺の立っていた場所まで連鎖的に響き、俺はもろにその衝撃を食らってしまった。

他の階層では地形オブジェクトとの接触でダメージを負うことはなかったが、この階層ではそれが有効になっているようだ。


「キリがないな」

矢で、頭部であろう場所を打ち抜いていくが、実体として存在しているのかも分からない敵はすぐには倒れてくれない。

既に周囲には六匹ほどのゾンビがはびこっている。

ラリアットのように右手を薙いでくるゾンビの下にもぐり、敵の右側を後ろに抜けると同時に、下から首元を狙撃。

空振りに終わったことで体勢を崩した一体は無視し、今度は三体同時に跳びかかってきた奴らを、着地前に三体とも穿つ。


「くそっ、【隠密】が使えれば……」

俺は今【隠密】を使うことができなかった。

いや、今俺に深い事情があるとかそういうことではない。

このステージに舞っている埃。

今も俺の鼻孔をくすぐっているが、この埃は状態異常を引き起こす。

『状態異常:汚染』

これにかかると、この階層にいるモンスターが集まってくるようになる。

そして、この状態異常はより濃い埃の渦を浴びるとその効果を強くする。

つまり、ゾンビの攻撃にあたると、物理ダメージだけでなく、『汚染』によるモンスターの索敵能力が上がっていくのだ。


俺は状態異常に対抗する策を未だ持っていない。

そのため、この階層に来た途端――といっても四層からの塔付近は清潔な空間で、その先にあるゲートをくぐってからなのだが――俺は『汚染』されている。


俺は特に意味はないが、【映像効果】によって矢に炎の映像を付与している。

なんか可燃ごみの焼却所みたいな光景が目の前に広がっているが、埃ってなんでも燃やせるからな。

こんな階層で環境保護とか考える方が難しい。


俺が軽くあしらうように躱していると、奴らは最後の力を振り絞ったのだろうか、一か所に集まり合体し始めた。

しかしそれはレッドとかブルーとかがいるようなかっこいい合体ではない。

醜く腐卵臭を漂わせながら、ぐにょぐにょと一体化していく様は気味が悪い。


『グゥウウウウァアアアアア!』

体長二メートルほどになった巨大ゾンビが咆哮をあげる。

だが、ハウルではないようだ。

俺は敵が一体になったことで動ける範囲が広がったことを喜ぶ。


「せっかくだからもうちょっと埃対策っぽい映像にしてみたいな」

俺は作ってあった別の映像に切り替える。

そして一射。

地面すれすれを走る丸い物体。

それはまるで、かの自律型清掃ロボットのようでそれが敵の足を穿つ。

カーリングのように次々と飛んでいくお掃除ロボット。


「なんかおもしろくないな」

俺はレベルが上がった【映像効果】によってできるようになった、高精度の映像に切り替える。

これはかなり形が元の矢とは違う。

【映像効果】は他のスキルと比べてレベルが上がりやすいようなので、ここまでできるようになったのだ。


「くらえ」

俺は奴の心臓部に矢を放つ。

すると、奴目がけて飛び出したのは一人のおじさん。

そしてその両手にはモップを一つずつ持っている。

ルンルンバキュームおじさん――略してルンバおじさんだ。

巨大なゾンビにぶつかるルンバおじさん。

矢の位置からして、敵の足元をモップで掃いた彼は、ゾンビに衝突し霧散していった。


「アディオス、ルンバおじさんよ」

その後も次々と突貫していくルンバおじさんのおかげできれいさっぱりすっきりと光の粒子になったゾンビ。


「ふぅ……」

五層は俺にとって、かなり厄介な階層だった。



その後も次々と現れるゾンビはルンバおじさんに掃除させ、俺は先へと歩いていく。


ここはかなり広い。

俺はこの廃都市を歩き回ったが、それだけで数時間はかかる。

まあ、絶えずゾンビが襲ってくるからというのもあるが。


しかし、この廃都市に六層への塔を見つけられていない俺は、目立つように半壊している巨大な建物の中へと入ってみた。

中は外と変わらず相変わらずの埃っぽさと腐臭。

建物を支えていたのであろう柱はひびが入り、そのほとんどが崩れている。

傾くままにとどまった柱が危うげにこの建物を建物たらんとしているようだ。


天井は全て落ちているのであろう。

建物がワンルームの吹き抜けになっている。

側壁が柱に寄りかかることで、空間を作ることができているというような感じだ。



「っ!」

感じる気配。

俺はその場を飛びのく。

すると現れたのはまたしても埃でできた一人の戦士。

『ゴーンバッド・ナイト』

左手に持った埃の詰まった剣と右手に掴む埃の込められた盾。


そして、体は埃でできている。


灰色の戦士が切りかかってくる。

「いけ、ルンバおじさん」

突貫するモップ男を左手に持った剣で薙ぎ払う戦士。

だが、彼の身体は所詮幻影。

埃も詰まってなければ、誇りを持っているわけでもないただの幻影だ。


そして何事もなかったかのように穿つ矢が敵の行動に間を空ける。

そのスキに連射されるルンバおじさん。

高速で奴の周りを移動しながら連射されるモップ男は、戦士の正面から、背後から、右から左からモップを突き出し襲っていく。


『ギォオオオオ!?』

あまりの光景に驚いたのか、大量の矢に貫かれた戦士が悲鳴を上げる。

そして、ルンバおじさんの見た目をしているため、盾で矢が弾かれることもない。

速度で優っている俺のワンサイドゲームだった。


「あれは……」

俺の目に映ったのはこの床の下へと続く階段。

戦士を倒した俺はこの建物の奥に階段があることを発見していた。


ここからがこの階層の本当のダンジョンなのだろうか。

他に探索するところもなかったことから、ここが塔へ続く道なのだろうと予測している俺。

この先に待ち受けているのは何なのか。


「いこうか」

くぐもった声が響いている。

この下は今までよりはるかに難易度が高いのだろう。


俺は暗く先の見えない階段を降り始めた。


なかなか執筆に時間を割けない状況になってきてしまいました。

できる限り投稿していけるようにしますが、かなり間が空いてしまうと思います。

本当にごめんなさい。

そして、最新話を追ってくださっている方、本当にありがとうございます。










『今日のゼンアク』

状況:警察に取り締まり室へと連行されている途中、館内で児童虐待の被害者である幼女と出会った。彼女は両親と強制的に離されることが決定したようだった。ので、聴取後、彼女を引き取ることにした。

善:幼女と暮らすことができる。

悪:引き取る…………って許されるの?

そして、私と幼女の新たな暮らしが幕を開けた。(byゼンアクさん)

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