第一章~低層突破は難しい~Ep28
HPが0になっていたので1に修正しました。
気付いていませんでした、ごめんなさい。
【索敵】を活用し、入り組んだ海路を探索していく。
この海路の迷路を抜けるためには、地図を作るしかないだろう。
俺はまずは曲がり角を右へ右へと曲がっていき、右端の道から地図を埋めていくことにした。
「おっ、やっと行き止まりか」
最初に曲がった角から今に至るまで何回右へ旋回したことか。
渦巻き状に内へ内へと進んできたのであろうその最奥地。
半径10メートルほどの円形の空間。
「海上には何もない……な」
だが、俺の索敵マップはある影を捉えていた。
モンスターだ。
しかもかなりでかい。
体長3メートルはあるだろうか。
小舟の大きさを超える幅。
大きな顎に生えた無数の牙。
シーラカンスのようだ、と言えばいいだろうか。
平たい顔からこちらを見る鋭い眼。
『シー・ラカンス』。
黒色の肌をした魚影が小舟の周りを旋回している。
「これ、攻撃食らったら舟壊れるぞ!?」
俺は慌てて、矢を来た道の方へ放つ。
【映像効果】によって小舟の幻影を魅せる矢。
動きを見せた影に釣られ、視線を揺るがす魚影。
水面付近までゆっくりと上昇してきた奴の頭部を真上から穿つ。
地上程ではないが、確実に入るダメージ。
そこで俺は気付く。
陽動用だった沈んでいく矢がその動きをとめるまで――沈んでいる最中でも【映像効果】がその矢を舟の幻影で包んでいる!?
「よしっ」
俺は奴の注意をそらすための矢、浮上してきた奴の頭上を穿つ矢とを打ち分ける。
注意をそらすための矢が数メートル先の海中を、幻影を連れて沈んでいく。
さらに攪乱される魚影はターゲットを絞り切れず、俺の乗っている舟を襲うことはない。
その作業を続けていく。
そして、沈んでいく矢を追って、浮上していた魚影が海底へと沈んでいく。
だが、この短い時間の間に俺は準備を終えている。
海底に着地したと同時にその幻影を消す矢。
しかし、もうすでに海底まで潜水してきた魚影。
そして爆発。
海底にしかけてあった簡易地雷が連鎖的に爆発。
奴の体力を大きく削る。
怒ったのか、その勢いで海上まで急浮上してくる魚影。
その勢いのまま体を空中に投げ出す。
「やっと会えたな?」
その頭部を貫く漆黒の矢。
水中とは違う空中での狙撃に、クリティカルヒットが出る。
【狙撃手】によって与ダメージが二倍に。
顔面からエフェクトを散らし、海中へと押し戻される奴。
暴れ狂うように海路の最奥部を泳ぎまくる魚影。
そして壁に衝突するたびに爆発を浴びる。
「ふぅ、海での戦いは難しいな」
光の粒子となった魚影を見て思う。
剣や槍などの打撃武器ならまだ水中で使えないこともない。
刺突攻撃は銛のように使えるだろうからな。
しかし、俺の矢ではモンスターに届かない。
どうしても罠だよりになる。
「簡易地雷も便利だが、海中用の罠とかもあると便利か?」
だが、材料がない。
俺はとりあえず、モンスターのいなくなったこの通路の最奥部海中を【索敵】で探索する。
「ん?」
海底の壁に空いた穴。
人一人が通れるであろうその穴はずっと先まで伸びていた。
海底洞窟。
「これは罠の予感…………」
海中に行くのは捨て身になってしまうが、もう町での誤解も解けたようだし、やるだけやってみるとしよう。
小舟を崖際に漂わせておきながら、俺は海中へと飛び込んだ。
光の届かない海底洞窟。
人一人しか通れないような狭い通路はすぐに終わりを迎え、広い通路へとでる。
直径5メートルほどの洞窟だ。
そして感知されるモンスターの姿。
『シー・サバ』に『シー・イワシ』
何匹もの群れを成して遊泳している彼ら。
その隅を、俺はここにいませんよ、と心の中で語りかけながら通る。
【隠密】によってモンスターに見つからない俺。
モンスターの群れが竜巻のように通路を覆っているが、その脇をスルリと抜ける。
「俺だけだったからなせる業だな」
そのまま通路を進んでいくと、なんだか上の方へとカーブしていく。
そして、俺は水面を見た。
「ぷはぁっ!」
顔を出す。
そろそろ酸素の限界だった。
危ないな……。
海上へと出た洞窟。
直径二メートルほどの洞窟が伸びている。
「ここからが本番か」
俺は唇を引き締める。
【罠術】がそれを捉える。
慌てて足を引く俺。
【罠術】によって作動する前からその効果が分かるようになった。
足でこつんとつつく。
すると洞窟の床がその部分だけ消失。
穴を除くと下には水で埋まった空間が。
そこを泳いでいる無数の魚影。
「こんなのに落ちたらひとたまりもないな」
注意して進んでいく。
だが、一瞬の気のゆるみがそれを引き起こした。
足元に転がっている石ころに足が当たる。
そして転がっていた石ころがカチンと音を立てた。
「……うそだろっ」
【罠術】によって発動されてしまった罠の効果が分かる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴオ!
後方――俺が歩いてきた方から聞こえる轟音。
そして背後に迫る大量の水。
豪速の水流がこの洞窟を埋め尽くそうとしていた。
「ぉおおおおおお!?」
全力疾走で洞窟を走り出す。
天井が崩れてくる罠を跳び越し、側壁から飛び出してくる銛をスライディングで躱す。
AGI補正の上がった俊足でどうにか逃げ続けていられる俺。
だが、罠の無数に張り巡らされた洞窟を全力疾走で駆け抜けるなど無理だった。
いや、正確に言えば、この通路には終わりがあった。
そこにたどり着き、壁に衝突しないようにと慌ててスピードを落とした俺。
その勢いのまま罠をぶち抜く。
「あっ…………」
まじかよ。
突如空いた床から落下する。
押し寄せてきた水流が洞窟を埋め尽くし、視界を大量の気泡が覆う。
視界では何も見えない。
だが【索敵】によって俺は敵の姿を確認していた。
先程いたシー・ラカンスだ。
今度は水中での一対一。
果たしてどうやって勝てと?
俺は黒色の魚影と相対する。
水中ということもあって、動きの速い敵。
「うぉお!?」
こちらは逆に速度の落ちる中、ギリギリで奴の突進を躱す。
そしてこの10メートル四方の立方体ルームの壁面、底面、天井部に簡易地雷を仕掛けていく。
「近距離攻撃ができないのは痛いな」
俺は水中でなんとか奴の突進を躱し、壁面へと誘導。
すぐさま躱す俺とは対象に爆発の渦中へと飲み込まれる敵。
このままいけばなんとかなるかと思ったが、そう簡単にはいかない。
「そんなのありか!?」
シーラカンスがその場で回転し、竜巻を発生させる。
そしてその竜巻をこちらへと放ってくる。
海流が容赦なく俺を巻き込む。
「くそっ!」
水中に落下したことで一旦途切れてしまっていた【隠密】を慌てて再発動。
海流に乗って奴の近くまでやってくるが、気付かれることはない。
そして、奴の身体そのものに罠を設置。
トリガーを引くことによって誘爆させる。
今回は自動ではなく、手動での爆発だ。
超近距離での大爆発を食らい、光の粒子となる敵。
思うのだが【隠密】が強い。
爆弾を敵に設置しても気付かれないなんて。
なんとか倒したが、さて、ここから脱出しないとな。
結局いい罠もなかったし…………。
ただ宝箱はあったのだが中身はカネだけだった。
役には立つよ?
でもロマンがさ、ないよね。
来た道を【隠密】によって敵に悟られることなく戻っていく。
直径二メートルの海中通路を通る際に、敵とエンカウントした時は爆発で道を開けた。
「もどってきた」
再び船に乗船する。
俺はその後も海路の探索をつづけた。
そして…………。
「ここが依頼で頼まれた場所か?」
海路迷路の途中にスタート地点とは別の入り江を見つける。
俺はその桟橋に小舟を固定し、足を踏み入れる。
『今日のゼンアク』
状況:幼女が大人二人に両脇を挟まれ、腕を掴まれていたので、その男女から幼女を取り返した。
善:幼女は彼らから解放された。
悪:その彼らは幼女の親だったので、ただただ犯罪だった。
そして私は、犯罪ロリコンと呼ばれた。(byゼンアクさん)