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第一章~低層突破は難しい~Ep27

四層ダンジョンの海路へ入る桟橋へとたどり着く。

両側を絶壁に囲まれた海路。

塔のある真上から見れば視界も広かったが、ここからでは前しか見えない。

「にしてもこれどうやって進めばいいんだ?」

まさか、泳いでいかないといけないとかはないよな?

内心焦る俺はとりあえずステータス確認をする。

「あっ……」

今までボスを倒した余韻とエクストラスキル取得の興奮から気付いていなかったが、フレンドからメールが来ている。

といっても有馬ゼミの奴ら、ガウス、フェルナとしかフレンドになっていないが。

「えっ……」

ガクから届いていたメールを見て言葉を失う。

誤解が解けた…………のか!?

ってかそれならもっと詳しく教えろよ!

ガクはそういうところがばっさりしている。

あぁ、なんかモワモワしてきた。

ってことはもうキルされてもいいってことだよな?

町でログアウトしても誰からも追われなくなるんだよな?


「やっとか……」

これで逃亡生活も終わるのだろう。

あ、でもさっきのゼンアクたちには目つけられてるよな……。


ってそうだよ、とりあえずステータス確認。



******

NAME:kureha / 残りステータスポイント:0

レベル:33


HP:1

MP:0

SP:0


STR:0

VIT:0

DEX:195(390)

INT:0

AGI:135(270)


()は【起死回生】発動時。


スキル

【弓攻撃】Lv:23【索敵】Lv:20【隠密】Lv:22【逃走】Lv:26【夜眼】Lv:19【映像効果】Lv:1

【無音】【罠術】【起死回生】【狙撃手】

******


「かなり上級スキルとエクストラスキルが増えたな」

スキルレベルに上限のない基本スキルのレベルはほとんどが20を越してきている。

にしても【起死回生】が強いっ!

ステータス値が400に届こうとしてるぞ!?

ステータスはあくまで補正だからってこれは高い!

「早く試したいな」

だが疲労がたまっている。

そして背後から迫ってくるかもしれないゼンアクたちの存在。


「あのシュンスズとかいうやつには【隠密】が効かないしな……」

厄介だ。

それに【無音】だからといって音関係全てに強いわけでもない。


あ、ちょっと試してみたいことあるかも。

「これって水の上走れたりするのか?」

率直な疑問。

どの程度の速さなら水面を移動できるのか。


物は試しだ。

何事もやらなければ始まらない。

「よしっ」

十メートル程ある桟橋を滑走路代わりにし、海の上へと足を踏み出す。

一歩、二歩、三歩…………十歩、と確実に進んでいくが、徐々に沈んでいく身体。

「やっぱ特別なスキルでもないと無理か…………」

そういうシステムのようだ。


しかしそれでも数十メートルは駆けてきた。

ほとんど跳躍で稼いだようなものだが。

「海中散歩…………もわるくない」

俺は【隠密】に身を隠し、水中へ姿を消す。

これならば【反響定位(エコー・ロケーション)】とやらも使えないだろう。


海中。

夜の海は冷たい。

そして、想像を絶するほどの暗さ。

とことん役に立つ【夜眼】だ。

海底は5メートル程下に。

幅5メートルほどの海路は海中でも両脇を囲まれている。


海藻の間をくぐっていく。

【索敵】も作動させながら、モンスターの気配を探り……そいつを知覚した。


『シーナイト・サカナクン』

人の形をしているが、手には水かきがあり、首筋にはえらがある。

半魚人か……。

えらやひれは黄色く、水色の皮膚に包まれた体は1メートル程。

手には黒い銛を握っている。


これ海中で矢を放てるのか?

相当近距離まで近づけば、銛と同じように使えるかもしれないが、基本使えないだろう。

となると、罠を使うしかないか。

俺は、赤い宝石の形をした簡易地雷(インスタント・ボム)を、海路を挟む右の壁に設置。

――発動条件は対象の接近。


半魚人が、罠が設置された壁沿いを泳ぐ。

『ドゴン』

海中にいるせいでくぐもって聞こえる爆音。

水しぶきが盛大に上がる。

だが、【無音】によって俺の攻撃で音がでることはなく、モンスターが呼び寄せられることもない。

そして、その爆発が半魚人を飲み込む。

ダメージを受ける半魚人。

【罠術】での罠の威力はDEX値の補正を受ける。

一撃で瀕死まで追い込む威力。

フラフラと体を揺らす半魚人の背後へ回り込み、超近距離から矢を射出。

近距離であれば、矢でもダメージを与えられる。


よしっ、これはいける!

海の中ということもあり、動きが制限されるかと思ったが、【起死回生】による補正上昇とのバランスがうまく取れて逆に動きやすい。


これなら四層でも通用するな。

水面に顔を出し、息をする。

現実よりは長く潜っていられるようだ。


俺は【索敵】でゼンアクたちがこの階層から去ったことを確認、塔のふもとまで戻る。

「はぁ、今日はここで寝るとするか」

【隠密】をフルで稼働させ、灯台の陰で眠る。

海中に潜っていた時の水は、海中から出ると同時に渇いたので気にならない。


俺は重い瞼を閉じる。

すると眠気はすぐにやってきた。


四層攻略は明日から始めよう。



翌日、朝四時に起床する。

今回のログイン三日目。

【隠密】のおかげで誰にも見つからずに一夜を明かせた。


「さて、どう探索を始めようか」

昨日の海中散歩で海の中まで【索敵】範囲圏内だということは分かった。

あたりを見回す。

他のプレイヤーが何か探索するために使っているものがないか。


「あっ……」

桟橋が設置されている海路への入り口。

茶色の岩場となっているこの入り江の隅に一つの小屋がある。

舟屋だろうか。

その一階部分につながれている一艘の船。


俺はその小屋へと向かう。

すると舟屋の中にNPCを発見する。

白髪の生えたおっさん。

割と年を取っているだろう。

髭も生えていて強面の顔だが、写真を眺めながら時折見せる笑顔はやさしい。



舟屋にお邪魔し、声をかける。

「あの、船って借りられたりしますか?」

「なんだ冒険者か? じゃあ、船を貸す代わりに、これを、海路を進んだ先にある別の入り江にある舟屋まで届けてくれ」

渡される小包。

写真を見つめながら話すNPC。

娘さんだろうか。

どうやら離れて暮らすことになってしまったらしい。

この小包はそんな娘さんに渡す贈り物なんだと。


『NPC依頼(クエスト)【船乗りの頼み】を受けますか?』

これが依頼(クエスト)か。

なんだかんだで今まで受けたことがなかったな。

まあ、船を貸してもらえるって言うんだし、断る理由はないな。

俺はyesを選択する。


船は白い板でできた木製のもの。

長さ二メートルほどの小型だ。

俺が一人だからだろう。

依頼(クエスト)を受諾したパーティ規模によって大きさが変わるようだ。


船に乗り込む。

「おぉ、揺れがリアルだな」

乗った衝撃で揺れる小舟。

まぁ、俺は乗り物酔いしないから大丈夫だが。


木のオールを漕ぎ海路を進む。

「なかなか力がいるな」

STR補正のない俺は現実の身体を動かすのと同程度の疲労を感じる。

【索敵】を発動しながら海路を進んでいく。


すると小舟の下に向かってくる魚影。

オールを離し、小舟の上から狙撃する。

しかし、水面に入る際、速度を落とす矢。

水面近くまで浮上していた魚影にはかすったものの、深くダメージを与えられない。

「っ!」

やりづらいな。

だが、一つ気になったことがある。

水面を飛来する矢に一瞬魚影が釣られたように見えたのだ。

奴はそれが矢だと認識し、無視をきめこんでいたが。


衝撃。

小舟に体当たりをしてくる。

『シー・サバ』

50センチほどある体長。

青白い肌は銀色に輝いている。


そして小舟に突進する際、水面から飛び出しぶつかってくる。

だが、飛び出してくる位置が小舟から近すぎるため狙撃できない。


「いきなりだが試してみるか」

俺は【映像効果】を使ってみることにする。


グラフィックの調整は大学での講義で学んでいる。

割と鮮明に描けていると自負する俺。

そのグラフィックを載せた矢を水面ギリギリで、水面と並行に放つ。


矢を映像が取り囲む。

小型の船。

プロジェクターで投射されたような白い光からなる矢の大きさ程度の小舟。

それが突進のための助走距離を取っていた、シー・サバの頭上を通り越す。

釣られてそれにとびかかる奴。


尾びれをゆらし、水面へ飛び出てくる。

尾びれの付き方がイルカと同様なのか、高い跳躍力を魅せる彼。

だが、その一瞬を見逃さない。

俺の放った二艘目の舟……いや二発目の矢が奴を打ち抜く。

一撃で絶命させる。


「これはいきなり役だったな」


ウキウキ気分。


俺は四層の海路を進んでいく。


『今日のゼンアク』

状況:九九を教えてほしいと小学生の家庭教師に雇われたが1~10まで教えるのではなく1の段だけ教えた。

善:小学生が自分で九九について考える時間を作れた。

悪:小学生が九九を1の段しか覚えられなかった。

そして私は家庭教師をクビになった。(byゼンアクさん)

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