表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/39

第一章~低層突破は難しい~Ep24

「二回目は洞窟に追いやられないのか」

俺は先程の洞窟があった場所を通り過ぎる。

というより、そもそも先程の位置に洞窟がなかった。


プレイヤーが入るごとにその位置を変える洞窟なのだろう。

俺は矢を避けながら進む。

しかし、目の前から飛んでくる矢は進むにつれて激しさを増すようだ。

「っ!」

左肩ギリギリを通過する漆黒の矢。

あぶなかった!

はぁ、と一呼吸つける余裕などなく、矢をかいくぐっていく。


だが、襲ってくるのは矢だけではなかった。

「ぁあ!?」

唐突な出来事。

俺の右側を塞ぐ断崖の前方から無数の岩石が降り落ちてくる。

俺は足を止めることを余儀なくさせられる。


その岩は地面にぶつかると同時、爆散し、その中からタンブル・ウィードがでてくる。


風にあおられた大量の草塊。

カサカサと乾いた音を聞かせながら近づいてくる無数の爆塊。

だが、それの登場などお構いなく放たれ続ける矢。


転がりながら矢を蓄えたタンブル・ウィードが俺を襲う。

矢によって逃げ道を塞がれている俺はその襲撃の中へと入ってしまう。

「ぅおい!?」

足元で起こる爆発。

素早く跳躍し躱すが、跳躍した先を矢が通る。

「おりゃあ!」

向かってくる矢に自分の矢を当て、俺へと向かうベクトルを霧散させる。

そして先程の簡易地雷(インスタント・ボム)をばらまき、トリガーとなる紐を一斉に引っ張る。

ドゴン、ドゴンドゴォオオン!

連鎖的に巻き起こる爆炎。

【罠感知】によって、煙の先から飛んでくる矢を認識、躱す。


「し、しのぎぎったか……」

大量の草塊は全て爆発させた。

だが、今もなお崖から落ち続けている岩が重なり、進路を塞ぐ。

「ま、まだくるのか!?」

冷や汗を感じる俺。

そして左側に視線をやると見つかる洞窟への入り口。


心を決める。

「望み通り入ってやるよぉおおお!」

二つ目の洞窟へと足を踏みいれた。



造りは先程のモノと同様、鍾乳洞でできた数十メートルの一本道。

そして例のごとく塞がれる入り口。


「水滴の罠はさっきと一緒か」

俺は先程の洞窟で既に知覚している、水滴の罠や鍾乳石の罠を回避していく。



だが、新しい罠もあるようだ。

「ぬわ!?」

心臓を跳ね上がらせる俺。

【罠感知】によって反応を感じ取った足元の水たまり。

鍾乳石によって隠れていたその水たまりを振り返りざまに見る。


そこに映ったのは白髪を生やし、腰を曲げた…………デフォルメされた俺の姿。

「お、俺のおじいちゃん姿!?」

そう俺の心臓を跳ね上がらせたのは水面に映ったクレハおじいちゃん。


あまりの衝撃に思わず振り返る俺。

「ぎゃぁああああああ!?」

振り返った俺の視界。

その中に立つは白い髪に、腰を曲げたせいで低い身長になっているデフォルメされた俺のおじいちゃん姿。

そう、そこには確かにクレハおじいちゃんが現れていた。


彼がいるのは進行方向に対して、俺の前方。

道を塞いでいる形になる。


「あ、あの通してもらえませんか……?」

自分でもよくわからないが、話しかけ、しかも敬語を使う。


すると何を思ったかクレハおじいちゃんは進行方向へと歩き出す。

カチッ。

音がした。


「…………は?」

気付いた時には遅かった。

前を行くクレハおじいちゃんが踏み抜いた罠のトリガー。

背後から不穏な音が聞こえる。

転がってくる巨大岩。

「ふざけるなぁああああああ!」

背後から迫る巨大岩から逃れるため、クレハおじいちゃんのいる前方へと全力疾走する俺。

しかし、前を行くクレハおじいちゃんは耳が悪いのか、俺の悲鳴など気にしていない。

後ろを行く俺のことなど考えず、次々と、…………羨ましいほど爽快に罠のトリガーを踏み抜いていく。

「アホがぁああああああああ!」



「ぉわあ!?」

天井から落ちる鍾乳石に、急に地面を開く落とし穴。

俺はクレハおじいちゃんへの怒りをあらわにするも、彼は運がいいのかギリギリで罠にかからない。

「くそっ! 罠を次々と作動させる()ってことか!」

強制的に発動されていく罠群。

足元から伸びてくる鍾乳石を右にステップし躱したと思ったら、その場の地面が落とし穴になる。

すかさず、他の鍾乳石を掴み、体を落とし穴から離れさせると、真上から降り落ちてくる鍾乳石。

そして滴り続ける水滴。


「いつまでいるつもりだよ!?」

罠にかかる俺はクレハおじいちゃんに追いつけないでいた。

すると、俺の念が通じたのか、罠としての効果が切れたのか――ただ単にロープが張られているという罠に引っかかり転倒する彼。


思わず、そんな彼をみて俺は祖父に言われた言葉を思い出す。

『どうせ転ぶなら、目の前で転んでるやつの一歩先で転べ』

「はぁ、俺の前で転んでんなよ…………」

しかし、後味が悪いので合掌だけ残しておく。

どうか長生きできますように…………。


俺は彼の体を通り過ぎ、洞窟最奥のスイッチを押す。

すると、例のごとく最奥から徐々に閉じられていく洞窟。

「入り口と出る時のこれはお決まりなのか!?」

悪態をつきつつも、洞窟内を懸命に逆戻り。

罠を躱しながら、駆けていくが、【罠感知】が捉えた水面を見ると再び現れる彼。

クレハおじいちゃんは、罠である水面を見ること(・・・・)がトリガーとなって出現するらしい。

「またでてくるのかよ!?」

さっきの合掌を返せ!

それとアンタ全然死ななさそうだな!


背後から迫る粉砕音と罠をブチ抜くクレハおじいちゃん。


「あぁあああああああああ!」

焦りよりもむしろ怒り。

しつこい!

目の前にいる白髪男を睨みつけながら、彼を追い越し洞窟の外へ飛び出す。


道を塞いでいた岩は既に無くなっていて、俺が出ると同時に洞窟も塞がっていく。

そして、俺の視線の先に見える四層への塔。


目と鼻であるその塔へ駆け抜ける。

心の中はまだあの白髪が支配しているが……。

いや、あれはトラウマになる……。

もうおじいちゃんになれない、と心の中で嘆く俺。


そしてたどり着く。

四層への塔。

「ここにいるのはなんなんだろか…………」

かなりイレギュラーだった階層の主。

俺は何が待ち受けているのか、気が気じゃなかった。



扉を開ける。

【夜眼】によって明かりが燈る前に把握できる部屋の全体図。

「なんだこの形……」


中央の六角形の部屋の各頂点から伸びる八メートルほどの通路。

アスタリスクか?

この形を表すにしっくりくるのはそれしかないだろう。


【索敵】で把握した部屋の概要だが、俺が今いるのはその通路の一つ。

入り口から中央にある半径5メートル程の六角形へと足を進める。


その先にいたのは一体のモンスター。

猫?

黒い毛に包まれた2メートル程の小柄な体躯。

ジャラジャラとしたお宝で装飾された服を身にまとっている。

ルビーにサファイアにエメラルド。

そして耳をはみ出させるように被る赤と金のパンプキンハット。

ギラギラとした青い眼。


「盗賊猫か? 罠ばかりあるのに宝が一つもないのはお前のせいか」



逃走者(ランナー)】と盗賊猫(キッドキャット)


「なあ、お前は俺を捕まえられるか?」

それとも俺が逃げ切るか。


いや、相手も容姿からすれば追われる側だけどな。

苦笑……。


矢を構える。



「さあ、逃走者(オレ)盗賊猫(オマエ)の逃走劇を始めようとしようか」



漆黒の矢が敵の頭部へ放たれる。

しかし、素早く跳び躱す盗賊猫。

そして身に着けていた宝石をこちらへ投げてよこす。

赤い宝石――ルビー。


『ィキキキキキ!』

口を開けその歯を見せびらかす盗賊猫。

俺の一メートル程前に落下した宝石は落ちると同時、音もたてず床に吸収された。

「ん?」

何が起こったのだろうか。

変化が感じられないことへの違和感。


だが、勝負中に答えのでない疑問を考えるのは正解ではない。

何が正解かは正直わからないが、攻撃あるのみ。


「はぁあああ!」

ここでは逃げ道がないと中央まで駆けていく俺。

右手を前に掲げ矢を放つ。

だが、矢を放つ寸前。


俺の立っている地面が隆起した。

「おぁああ!?」

このままだと押しつぶされる!?

バランスを崩した俺は隆起した地面から飛び降りる余裕もない。


「くそっ!」

手の操作のみで簡易地雷(インスタント・ボム)を隆起する地面の根元へ投げつけ、トリガーを引き抜く。


爆音。


俺がある地点(トリガー)を踏み抜いた瞬間から【罠感知】によって感知されていた地面(ワナ)が壊れる。

「あの宝石……」

今隆起した場所は先程、盗賊猫が投げた宝石の落下地点。


「罠を設置して戦うボスか!?」

俺かよ!

とツッコんでいる余裕はないようだ。


その鋭い歯を見せ、口角を目元まで引き上げている盗賊猫。


そして今俺が抜けきった一本を除いた五本の通路。


始まった三層ボス戦。

中央で向かい合う。


「お前の罠と俺の罠…………」

さて、どちらが強いだろうな?

俺は唇を強く結ぶ。


中途半端でごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ