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8話

 1周目同様にプロローグを終える。

 変化した事と言えば、ペロミアさん相手に挨拶する時にできるだけ笑顔を心がけた所ぐらいか。

 その後も特に変わりなく、筋トレと花屋での仕事を繰り返す日々を送った。

 特筆する事と言えば、仕事中は接客に力を入れ、客が途切れれば全力で力仕事に取り組み、仕事が途切れればスクワットに励む、と、徹底的にトレーニングを組み込み始めた事だ。

 その成果もあり、1日目終了時で『筋力』が5、『容姿』が2という快挙を遂げた。

 ついでに『ダフネ』は、『ペロミアの花屋』の看板改め筋肉娘として町内で話題になるという快挙も遂げた。余計なお世話である。




 そしてその日出た給料すべてを食料につぎ込んで、肉を中心にできるだけ多くの食料を買い込んだ。

 これからは1分1秒も無駄にできない。僅かな時間でもちまちまと筋トレに費やし、1日でも早く『筋力』をカンストさせねばならない。

 目標はムーメス(2月)の8日までに『筋力』をカンストさせることだ。

 ……チキンプレイとでも言うべきかもしれないが、一度『筋力』500の体で動きなれてしまった以上、それを下回る状態で戦える自信が無かった。

 デスゲームというぐらいなのだから、それぐらいの慎重さは必要だと割り切ろう。

 気は急くが、急いては事を仕損じて死ぬのだろうから。




 ムーメス(2月)の4日。遂に『筋力』がカンストした。予定より早かったな。

 そしてそのついでと言っては何だが、『容姿』も30まで上がった。これは嬉しい誤算だ。まさか休日を使わなくてもここまで上がるとは。

 ……とりあえず、『容姿』が40を超えないように気を付けながらいこう。




 そして仕事日を挟んで、次の休日。

「おはよう、ダフネちゃん!今日はどこかに行くの?」

「スラム街の裏カジノで稼いできます」

「そう!楽しんできてね!いい結果が出るといいわね!」

 当然、『筋力』だけでは心もとない。装備も欲しい。

 しかし、残念なことに……恐らく、鎧を購入する時間は無い。

 バグったレヴォル戦以外で鎧の必要性を感じた事は無かったが、もしかしたら『戦闘力』も体の動き方に関わってくるのかもしれないし、不安ではある。

 ……しかし、まあ、一応、カジノに行けば防具が手に入りはする。

 不安要素ではあるが、今回は暫くそれでいく羽目になりそうだ。


 


『謎の女戦士ダフネ!遂に10連勝!こいつを止められる奴は最早この闘技場には居ないのかーッ!?』

 これがデスゲームである可能性が高い、という事を頭に入れていたはずなのに、いざ闘技場で戦い始めたら色々吹っ飛んで、気づけば戦闘を楽しんでいた。

 ……下手に緊張するよりはいいだろう。そういうことにしよう。

 しかし、魔物との戦いで慣れてしまって、また対人戦が下手になっていた。

 バグろうがなんだろうが、これから戦おうとしているものは一応人間である。魔物とは急所、狙うべき部位、挙動、あらゆるものが違う。

 それに、バグったレヴォルとの戦闘で分かった事だが、本人が魔法使いならああいうように魔法を使ってくる。つまり、『騎士』ならきっと剣を使ってあのレベルの挙動で殺しにかかってくるはずだ。

 ……何がどう転ぶかは分からないが、今の所立てた計画のままいけば、少なくとも4人はイベントと関係なしに殺さなければならない。

 その内の1人が、攻略対象の中で2番目に強いと思われる騎士『サージス』である。

 魔王の右腕にして最強の剣士、と銘打たれた奴で、普通なら戦闘は楽しみだったのだろうが、今回は自分とユキノがかかっていることもあり、不安要素の1つになっている。

 その時までにもっとプレイヤースキルを磨いておく必要がある。

 闘技場での1戦1戦をその糧にするのだ。




 さて。手に入ったコインは剣の為に明後日に持ち越すとして、『炎の指輪』だ。

 前回の様にペロミアさんに渡すわけにはいかない。なぜなら、今回はペロミアさんも殺害対象だからだ。少しでも強くなられたら困る。

 今回は自分で使用することにする。

 指輪を指に嵌めると、微妙に『魔力』が上がる、奇妙な感覚が体に走る。

 ……いずれは『魔力』も使って戦闘できるようにしないといけない。

 魔王の右腕サージスに勝る部分が用意できるとすれば、まず間違いなく『魔法』だろう。

 リーチが長いという事はそれだけで有利だ。他の戦闘でも役立ってくれるに違いない。




 カジノから帰って食事を摂り、寝床に入りながらメニュー画面を開く。

 他の挑戦者の様子も見てみようと思ったのだ。

 『挑戦者の様子』を選択する。

 プレイヤーは……10人に減っているな。死んだわけではなさそうだ。つまり、このゲームから下りたんだろう。まあ、自分の命がかかるとなればそうなっても仕方あるまい。

 ……プレイキャラクターネーム『ダフネ』がもう1人居る。

 この人は……『丁』、つまり『超ハーレムEND』狙いでいくつもりらしい。

 最初から魅力を上げて、ピネラ(1月)の終わり頃には貴族の娘との替え玉イベントを起こしている。

 そのままピネラの舞踏会に出席、と。言うまでも無く最短だ。

 しかし、生活・仕事ターンをスキップしているらしい事はすぐに分かった。

 『挑戦者の様子』で分かるのは、パラメータの推移、起きたイベント、攻略対象の好感度、取得アイテム、といった程度なのだが、パラメータの推移を見る限りでは仕事日にパラメータが全く上がっていない。

 仕事ターンにもパラメータが上がる事を知らないのか、それとも生活ターンや仕事ターンをこなすだけの気力までは無いのか。

 しかし教える手段も無い。他のプレイヤーの様子を見て……つまり、こちらの『ダフネ』の様子を見て分かってくれることを祈るだけだ。


 2人の『ダフネ』を除く残り8人はそれぞれ『グロリアーナ』が2人、『アメリア』が1人、残りはそれぞれの付けた名前、という所か。

 『グロリアーナ』2名と他1名は『乙』、つまりアイテム収集を目指すようだ。

 『アメリア』と他1名が『甲』……金稼ぎを目指しているように見える。

 そして残りは全員『丁』を目指しているのだろう。魅力を上げたり、さっさと攻略対象とのエンカウントを済ませたりしている。

 ……『筋力』を上げることに走った人はいないらしい。

 それと同時に、『各生還者の指名状況』を見ると、もう1人の『ダフネ』に指名が殺到していた。

 こっちに入っているのはユキノの指名だけだ。

 ……ユキノは信じてくれているらしい。

 ならばそれに、何が何でも応えなくては。


 ……ここで少々考えてみる。

 ユキノは『攻略対象によって殺害された』。

 ……『ステラ・フィオーラ』のイベントから考えられるパターンは『魔王の好感度が低い状態で魔王のイベントを進めた』というパターンしかないが……。

 ……しかし、ユキノが死んだ、とされているのは、『イリオ11日』だ。

 不可能だとすぐに頭がはじき出す。

 魔王『キルシス・カルディオン』とエンカウントする為には、魔王を討伐しに行くか、『誘拐フラグ』を5つ立てて誘拐される必要がある。

『誘拐フラグ』は数種類あるが、最短で行っても……6月、ピオニアの1日か。もっと早いルートもあるかもしれないが、今は思いつかないな。

 魔王討伐に至っては、トメント(12月)になってからしか起こせない。

 ……ユキノはあくまで『殺害された』のだ。

『巻き込まれて死んだ』でも『衰弱の末』でもない。

 となれば、結論は自ずと見えてくる。

 おそらくユキノも、攻略対象をバグらせたのだ。


 『攻略対象によって殺害された』人の数を見る限りでは、バグって襲い掛かられて死んだ、という人が大半なのだろう。恐らく。

 ……バグる条件がまるで分からない。

 多くの人が恐らく攻略対象をバグらせている。(恐らくは。魔王『キルシス・カルディオン』はそこまで人気のキャラクターでは無かった、と思う。ましてや、キルシスを真っ先に攻略しようとする人が選択を間違えるとは思えない。)

 しかし、ではその条件は一体何なのか。

 ……1つ、考えられることがあるとすれば、『殺そうとする』事だろうか。

 少なくとも、レヴォルがバグった要因は『殺そうとしたこと』の様に思える。

 ただ、至って普通にプレイしていて攻略対象を殺そうとするとは思えない。となれば、恐らく条件はもっと別にあるのだ。

 普通に恋愛をしていてもバグが発生するような、何か、そういう条件が。




 考えていても埒が明かない。

 その日はしっかり寝て、翌日の仕事日を経て、またカジノへ向かい、闘技場に出る。

 『炎の指輪』は、非・VR版ではフレーバー的意味しか無かったが、『炎を発生させる』という設定があった。

 折角なので『魔法』に慣れておくべきか、と思い、使いながら戦ってみた。

 ……戦い方の幅は広がるが、『魔法』は、物理的な攻撃よりも制御しにくく、結果が見えにくいという印象を受けた。

 これを完全に制御し、結果を予測できるようになるか、結果を見てから瞬間的な判断を行うかそれは慣れていけばおのずと決まっていくだろう。


 という事で、また勝ち続け、『魔剣・エクスダリオン』を手に入れることができた。

 もうこれが無いとやっていけない。最早『魔剣』というか、『愛剣』である。『愛剣・エクスダリオン』。……一気に響きがほんわかしてしまうな。愛剣、と発音するとどうも犬の方に聞こえてしまう。


 ……さて。

 ここで、15連勝の景品として『宵闇のドレス』なるものが手に入っている。

 ……これが今回のプレイにおける『防具』である。

 装備してみる。

 ……ぺらい。重厚感が無い。防具という感覚は全く無い。

 腕とかむき出しである。何故だ。ドレスだからか。

 しかし、これの良い所を1つ上げるとすれば、決して動く邪魔になることは無いだろう、という所だ。

 『宵闇』の名の通り、このドレスは闇でできている。

 一応、シンプルなドレスの形状をしてはいるものの、只の闇である。特に裾の方はその傾向が強く、そこには『布がある』という感覚は無い。よって足がもつれたりすることも無い。服としては有能だと認めてやってもいい。

 アイテムの説明欄には『形を変える闇は敵から姿を隠すのにも役立つ』とある。これがどういう事かを試す時間があまり無いのが惜しいな。

 ……明後日には檻の中だから。


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