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7話

 ユキノの名前を『死亡者リスト(暫定)』に見つけて、そのまま下までリストを見ると、下に行くにつれて『攻略対象に殺害された』人が増えていく。

 そして、最後の方は殆どが『攻略対象に殺害された』人達になる。

 ……ずらりと並んだ死亡者リストは、最後の数字が287番である。

 今回のこの会場でのテストプレイ参加者は全部で300人だったはずだから、『生還者』13名を加えてぴったり300名。

 これで打ち止め、という事だろう。

 ……ならば、何故『(暫定)』なのか。

 そんな疑問に答えるように、メッセージが現れる。


『あなたには挑戦者としての権利が与えられます』

 そんなメッセージが壁に浮かび、それをきっかけにしたかのように次々と文章が壁に浮かんでいく。

『あなたは条件1のいずれかを満たすことで、その時点であなたに有効な指名をしていた人を救出することができます』


 条件1

 甲:ゲーム終了までに999999999999ペタルを所持していた場合

 乙:ゲーム終了までに存在する全ての装備アイテムを回収した場合

 丙:ゲーム内時間トメント30日23時59分59秒までに固有の名前を有するキャラクターの全てが死亡、或いは消滅した場合

 丁:ゲーム内時間トメント30日23時59分59秒までに固有の名前を有するキャラクターの全ての好感度が100になった場合




『また、条件2のいずれかを満たした場合、プレイヤーは暫定的死亡状態になります』


 条件2

 A:プレイキャラクターの体力が0になる

 B:プレイキャラクターが死亡するイベントが起きる

 C:プレイヤーが死亡を認識する




『暫定的死亡状態になったプレイヤーは以下のルールに従います』


 1:暫定的死亡状態になったプレイヤーは挑戦者を1人指名することができます

 2:挑戦者が条件1を満たした時点で有効な指名を行っていた場合、暫定的死亡状態は解除されます

 3:全ての挑戦者のプレイが終了した時点で2を満たさなかったプレイヤーは死亡します

 4:挑戦者の指名は途中で変更できますが、変更してからゲーム内時間で1か月間は指名の効力を発揮しません

 5:挑戦者のプレイ状況、他の暫定的死亡状態になったプレイヤーの指名状況はいつでも確認できます。尚、挑戦者のプレイにおけるゲーム内時間のズレが起こる場合、閲覧時には最も時間の進みが遅いプレイヤーに合わせて統一されます




『挑戦者は以下のルールに従います』


 一:挑戦者は『ステラ・フィオーラVR』を最初からのデータでもう一度プレイすることができます

 二:プレイ中はここにある全ての情報・他の挑戦者の様子・暫定的死亡状態になったプレイヤーの指名状況をいつでも自由に閲覧することができます。尚、挑戦者のプレイにおけるゲーム内時間のズレが起こる場合、閲覧時には最も時間の進みが遅いプレイヤーに合わせて統一されます

 三:二度目のプレイ中も条件2は適応されます

 四:『ステラフィオーラVR』で奇数日に起こるイベントは『ステラ・フィオーラ』と同様の数・選択肢・選択肢の結果・発生条件を有します

 五:挑戦者は条件1を満たした瞬間に有効な指名を行っていた暫定的死亡状態になっているプレイヤーを救出することができます

 六:ゲーム中に起きるいかなる不具合に対しても一切の関与・対応を行いません




 ……これで全部、らしい。

 ……額面通りにこれらの条件だのルールだのを受け止めるなら、このゲームは所謂『デスゲーム』なのだろう。

 そしてこのままだとユキノは死ぬ、ということになる。

 そんな馬鹿げた事があるか、と思いたいが、正直否定するメリットが薄い。

『デスゲーム』という言葉に惑わされた滑稽な人間として笑われるより、ユキノが死ぬ方が余程問題だ。

 それに、あのバグを見る限り……どうも、それが真実のように思えて仕方がないのだ。

 ……とりあえずは、このゲームが『デスゲーム』であるという事を信じる方向で動くことにしよう。

 文面を見る限りではまだユキノは死んだ訳では無いという事が分かる。

 そして、ユキノが指名したプレイヤーが『条件』を満たしたなら、ユキノは死なずに済むという訳だ。

 念の為『現在の指名状況』を見てみる。

 『あなたを指名している暫定死亡者』のリストには、ユキノの名前だけがある。

 ……指名はプレイ状況を見ながらいつでも変えられるんだから、ラスト1か月までに決めればいい、という事になる。

 今から指名していることのメリットは無い。ユキノはそれでも指名している。

 つまりはそういう事だ。このゲーム、何が何でも勝たねばなるまい。




 早速『条件1』、つまり挑戦者として満たすべき条件の検討に入ろう。


 まず、甲の条件『999999999999ペタル』。

 これは完全に運だ。

 最短で貴族になって全財産をカジノで賭け続けて間に合うか、という所だろう。

 或いは、VRがVRであることを利用して、王族にでもなって国庫から金を持ち出す、なんてことができればそれが一番手っ取り早いが。


 次に、乙の条件『装備アイテムフルコン』だ。これも厳しい。

 アイテムの中には『公園』や『海辺』に行った時にランダムで拾えるアクセサリーアイテム等の、取得に運が絡むものが幾つかある。

 そして、イベントがらみで取得できるアイテムも回収する為に魔王と貴族と王子辺りで3股を掛けながら進める必要がある。つまり、割とイベントも詰まる訳で、ランダム要素が絡む部分の試行回数を増やすことでフォローする、という事がやりにくい。


 丁の『名前のあるキャラクター全員の好感度MAX』は……不確定要素まみれではあるが、この中では一番現実味が高いかもしれない。

 一応、『ステラ・フィオーラ』には攻略対象全員を落とす、いわゆる『ハーレムEND』が存在する。かなりイベントがきっつきつになるが、やってできない事は無い。

 ただし、攻略対象全てを好感度の限界である『好感度100』にする訳では無かった。

 それぞれのキャラクターENDを迎えるために必要な好感度は『80』がボーダーラインだ。つまり、『ハーレムEND』は、全ての攻略対象の好感度を 『80以上』にするものでしかない。つまり、これを満たそうと思ったらイベント外の事をやるしかないのだろう。VRならではの方法で、というべきか。

 そして気になるのは……『固有の名前を持つキャラクター』という言い方だろう。

 その言い方をすると、『レヴォル・クレヴェール』を始めとした攻略対象7名は当然含まれるが……非・攻略対象であるはずの『ペロミア』等々も、含まれるんじゃないか……?

 ……『ハーレムEND』というより、『ごった煮END』になりそうだな。ああ。


 最後に、丙。

『名前のあるキャラクター全滅』。

 言うまでも無く、これが最難関になるのだろう。

 ……他のプレイヤーは知っているのだろうか。あの『バグ』を。

 攻略対象は全部で7人だ。7回あんな戦いをして、それで生き残れるとは思えない。

 バグったレヴォルに不意討をくらっても勝てたのは、運の要素が大きかったように思う。

 最後に投げた『水の霊水晶』の水が、どこにどう発射されるかなんて分からなかったのだから。


 あのバグは『挑戦者の従うルール六』を見る限り、予め仕込まれているものだと考えるべきだろう。

 バグったレヴォルの様子から考えると、丙の条件を満たすのは確かに困難であるように思える。

 しかし、甲と乙の条件を満たすには完全に運が絡む。

 ……もう一度、よく条件を見る。

 ……『全ての固有の名前を持つキャラクター』が『死亡、或いは消滅している』のが条件だ。『固有の名前を持つキャラクター』はペロミアさん……国王もか。国王は『テドル・クロナレイ・エルヴァラント』という大層な名前だったはずだ。

 そして大事な事は、それらを『殺害する』ことでは無く、それらが『死亡、或いは消滅している』ことなのだ。

 つまり、手を下すのは自分では無くてもいい。……と、なると、だ。

 ……やはり、丙の条件を満たすのが一番確実だし、それに何より、自分に向いている。

 このゲームは非・VR版とは違うゲームだ。イベントは全て同じものが用意されているという事は分かっているが、これは別のゲームだ。

 ……元々の『ステラ・フィオーラ』では、『霊水晶』は物語のフレーバーでしかなかった。

 魔物を捌いて食うというコマンドは無かった。

 仕事の日は存在すらしなかった。よって仕事日にパラメータが上がることも無かった。

 カジノで出禁は食らわなかった……と思う。

 つまり、あまりにも不確定要素が多すぎるのだ。

 しかし丙の条件なら、最悪の場合は全員バグらせてでもなんでも殺せばいい。

 そして、もしそうでないなら……バグを起こさずに上手くやれるなら、乙女ゲームらしく攻略対象7人全員のイベントを起こしに起こして、イベントの中で攻略対象が死ぬように仕向ければいいのだ。

 事故死。同士討ち。処刑。幾らでもある。

 それらを上手く使えば、あのバグった状態のキャラクターとの戦闘は最小限に抑えられるはずだ。




 願わくばこれがデスゲームなどというのは性質の悪い冗談で、何がどうなってもユキノが死ぬことなんて無いと思いたいが、そうもいかない。

 目を閉じれば、『コンティニュー?』という文字が浮かぶ。

 それに迷わず、『YES』と答えた。




 こうして『丙の条件』を満たす為、ユキノを救う為のデスゲームが始まる。




【キャラクター作成】

 この画面を見るのも2度目になる。

 今度は前回の様に適当に決める訳にはいかない。

 体型等々は前回と同じにする。

 これは、前回折角慣れたVRの体の感覚を捨てるのは勿体ないからだ。どうせまた殺し合いになる。少しでも不安要素は減らしたい。

 髪と瞳の色は両方黒。『000000』。非・VR版ではこの要素は無かったのだから、今回もここは関係ない。

 誕生日はイベント等々を計算して、ピオニア(6月)の1日にする。

 そして名前だ。

『アメリア』ではなく、『ダフネ』にする。

『ダフネ』は魔王の妹の名前である。

 この名前にしておくと魔王の反応が少々変わる。

 ……それはどうでもいいが、それよりも大切なのは誘拐フラグが1つ省ける上に、最初から魔力が10の状態でスタートする、という事だ。

 つまり、魔力会得の為のイベントと、誘拐フラグのイベント、合わせて2つをスキップできるという事だ。

 これを利用しない手は無い。

 そして誕生日はピオニア(6月)の1日。

 誕生日イベントは好感度の上昇が大きい。存分に攻略対象に祝わせてやろうじゃないか。


『以上でよろしいでしょうか』

 表示された文字に『YES』と答えれば、1周目とは重さが段違いな2周目が始まる。

 この周で、『ステラ・フィオーラ』の舞台、王都エルフィーナには血の雨が降る。相当愉快な血のゲリラ豪雨になるだろう。

 緊張もするが、楽しみでもあるな。

『挑戦者』の名に恥じないプレイをしてみせようじゃないか。




 ……よし。まずは鍛えるか。


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