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無職は正義  作者: 半半人
勇者×→無職○
9/69

家でお金を稼ぎたい

家のベランダで本を読みながらそろそろ夏だということを肌で感じた。

元の世界なら蚊なんかが辺りを飛び回りイライラするのだが、自宅守衛者(ホームガーディアン)の能力で結界を張っているため快適なことこのうえない。夏に移行中のため気温も適温だ。


「やるか……!」

「おーい、部屋の温度下げて」

「あ、分かったよ」

「ふぅ、快適快適」


自宅守衛者の能力は家の中で(身体的に)無敵、魔力で結界を作り操れる、に加え家の中の温度も多少なら操作できる。


ユユの機嫌は直ったようだし、


「やるか……!」

「おーい、何か届いたぞ」

「そういえば調味料が切れたついでに色々買ったんだった」


ライン商会のアーレンさんと連絡を取っていたことを忘れていた。


「代金立て替えといたから倍返しな」

「俺に働いて稼げ、と」

「おう。私がいなかったらお前は飢え死にしてんだぞ?」

「そんなこと言ったらユユだって……」

「その辺のぶっ倒して食えばいい」

「確かに」


この家がなくなってもユユは生きていけることは良いことなのだが、何故かその事実を突き付けられると少し寂しい。

俺にはユユが必要なのだが、ユユは俺がいなくても大丈夫だ。

家の中以外でも力が使えればなぁ。こんな思いをしなくてもいいのに。


「なぁ、ユユ」

「ん?」

「もし、ここ以外に住むってなったらどうする?」

「別になんとも」

「だ、だよね……」


うん、分かっていたけどズバッと言われると凹むなぁ…。


「何で凹んでんの?」

「いや、ユユが一人でも生きていけると思うとさ」

「??」

「俺の存在意義が……」

「安心しろ。もし、自宅守衛者の能力が働かなくても、専属使用人として雇ってやるよ」

「ユユ様とお呼びしても?」


ユユはニコッと笑うとかなり強いデコピンを放ち、俺は敷地外に吹っ飛んだ。


「殺す気か!?」

「悪い、加減間違えた」


全然申し訳なさそうな雰囲気が感じられないが、許してやろう。

嘘とはいえ、「専属使用人として雇う」と言ってくれたことは嬉しかったし。


「そういえば。やるか、って何をやんだ?」

「あぁ、そうだった」


庭から家の中に入り、物置からいくつかの道具を取り出した。


「これは?ビニール?」

「正確には薄く伸ばした耐水スライムだけどね。見た目や性質はビニールとなんら変わらないよ」

「ふぅーん」

「これをノヴァイルから貰った木材で造った骨組みに被せて…」


大きさにして、縦四メートル、横二メートル、高さ二メートルの長方形型の骨組みにビニール擬きを被せると、


「じゃじゃーん、ビニールハウスができるんだ」

「で?」

「去年失敗した野菜栽培をしようかと」


去年、敷地外の地面を耕したりして野菜の栽培を試みたが尽く失敗したのだ。

その反省を生かし、ギリギリ敷地内のベランダで収まるビニールハウスを使い成功させようと考えた。

そして、先程までこの世界の野菜が記された「初心者でも分かる!簡単野菜栽培!」を読み簡単な知識を頭に入れていた。

肝心の育てる野菜はアーレンさんのおすすめをいくつか買ったものに加えて送ってもらった。

プランターは簡単に作れるから問題はない。


ただ、


「何を育てるのだ?」

「ポ、ポリツァー」

「何で?」


ポリツァーとは楕円形で、瑞々しく、シャキッとした歯応えが特徴の野菜である。

簡単に言うと味の無い楕円形のリンゴが実る。

味は無いが調味料でどうとでもなるし、他のお手軽野菜に比べ栄養が多いのでこれにした。

ただ、育て方が難しいため高い値段で市場で出回っている。


ユユはこう思っただろう。「去年失敗したのに、何故よりによって育てるのが面倒なものを選んだのか?」と。


理由は、敷地内なら自宅守衛者の力でどうとでもなりそうな気がしたからだ。




嘘です。



本当は高く売れるからです。



多少の苦労で金が稼げるならやる他ない。

無職な俺が金を稼げる方法はこれしかないと思ったのが本当の理由だ。





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