宣戦布告
私はユウトに言われた通りキリアールと治療術師の元に向かった。
「後でちゃんと謝っとけよ。あいつ、ああ見えて結構根に持つから」
「…はい」
キリアールの憎しみが形となって現れた今回の一件を全て否定することはできない。もし、同じ立場であったら…同じようなことをしただろう。
「なんか。お前似てんだよなぁ…」
言葉を交わすようになってからそう思うようになった。ユウトに抱くものとは違うこの感情は何なんだろう?親近感に似たこの気持ちが分からないでいた。
着いた場所は水車小屋だった。自然に同化した澄んだ景色がよく映えている。そこには白髪に白い髭、俗に言う仙人のような格好をした老人が食事をしていた。
「ぬ。お主ら何用かな?」
意識と言葉をこちらに投げかけるが箸の動きは止まらない。
「すいませんが傷を治してほしくて」
「ほほほっ、まぁそれ以外でこんな所を訪ねる者はおらんからな。ところで、わしのことは誰から聞いたのかな?」
この質問でキリアールと見合った。ユウトのことを話してもいいのか?それとも全てを知った上での質問なのか?いや、最悪実力で逃げればいい。
「ユウト、をご存知ですか?」
「…ほっほっほっ!いやはや、まさかあやつがわしを頼るとは…。よっぽどなんじゃろう……」
ようやく手を止め私たちの方を向いた。その顔は嬉しそうな、懐かしそうな。大変な過去があったようだ。
「承知した。金はいらん。すぐにあやつの元へ帰ってやれ」
そう言うと光の球を掌から放つと、ふわふわと漂いながら切られてしまった足に吸い込まれた。
「個人差はあるが半日で完全に再生するじゃろう。傷が塞がる前でよかったの」
「それはどうしてですか?」
「傷を覆う皮膚を突き破って足が生えるのは苦痛じゃぞ」
「……」
「ほっほ、冗談冗談。ユウト殿にはよろしくお伝えくださいな」
「…分かりました」
「ユユ!向こうから……!」
キリアールが慌ててこちらに声を掛けるが、
「マジですかい…」
それは背後にいた。
「ウィーズ…っ!!」
「ストップ、ストップ!!」
戦闘体勢に入るが、ウィーズが慌ててそれを制する。
「今日の出会いは偶然だから!狙って会いに来てるわけじゃないから!!」
「嘘つけ!」
「騒々しいんだけ、ど…」
更に小屋に入ってきた人物の声には聞き覚えがあった。
「…ユークリッド!?」
「ラヴェール!?」
な、な、何なんだ!!?
「ラヴェールさん。ちょっと面倒なことになったんすけど」
「予想外過ぎて私も一瞬絶句した」
「お前ら…組織の連中か」
「あぁ、そうなるな」
「……ちょ、そんな怖い顔で睨まないで…」
ラヴェールに質問しつつ、ウィーズを睨み続けた。
「リカールはいないの、か?残ー念」
「…ちょ、ラヴェールさん!?」
「だって、あんなに興味深い男いないし」
なんか……ぶっ飛ばしたいな。
「と、に、か、く。今日はお互い止めときましょう?お互い用事は別々にあるみたいなんで。ね?」
ウィーズの言うことがもっともなのが少し癪だが、その通りなので戦闘体勢を解いた。
「そのうち、全員ぶちのめすから」
二人を睨みその場を後にした。
「ユユ?顔が…」
「え?」
「何で笑ってるの?」
そんなの簡単だろ?
今までの鬱憤を全力で晴らせるんだ。嬉しくない筈がない。




