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無職は正義  作者: 半半人
勇者×→無職○
6/69

家とか関係なく強いユユ

屋根の修理から数日。

何事もなく過ごしていく日々に異世界であることを忘れてしまう。元の世界に帰りたいとは思っていたが、二年も経てばここの生活に慣れ諦めてしまっても普通だと思う。


事実、ここでのユユとの生活は元の世界より充実していて俺は好きだ。


「ユウト~」

「ん?どうした、の…」


ユユが胸より上をドアに乗りだし、俺の名を呼んだ。髪が濡れていることと、裸であることからお風呂上がりと思われる。


「タオル取って」

「あれ?洗面台の近くにストックがあったと思うけど」

「無いから呼んでんだよ。早くくれ」

「はいはい」


ふふ、これでタオルを渡すと見せかけて突撃しても文句は言えんぞ…。

二階の洗濯干場のタオルを持って来ようとした。すると、体に微かな風を感じ、遅れて水滴がいくつかかかった。


「ユウト、やっぱいいや」

「えぇ、せっかくここまで来たのに」

「もう取った」

「はぁ…この辺の後始末は誰がやると思ってるんだか…」


階段を降り、台所に向かった。さて、今日は前に狩ったドラゴンの肉を使って料理しよう。これ以上放置すると衛生的に危ないし、ユユのリクエストで今日はハンバーグが食べたいと言われたのでちょうど良い。

肉をミンチにして……。


「まだできねぇのか?」

「当たり前だろ。それに、料理は手間隙かけて…って、服着ろよ!」


ユユはタオルを巻いているだけの格好だった。上も下も辛うじて隠れているのが妙にドキドキする。


「だって暑いんだもん」

「いいから服着ろ」

「いや」

「はぁ、こっちの身にもなってくれよ…」

「何か言ったか?」

「いえ、何も!」


ユユは冷蔵庫からジュースを取り出し、ソファーの上に座りながらそれを飲み始めた。


「コップを使ってよ!」

「大丈夫、ちゃんと飲み干すから」

「そこは問題じゃないよ」

「あ、お前も飲みたいのか?仕方ねぇな…」

「そういうわけじゃ…」


ユユはコップを一つ棚から出し、それに表面張力が働く程並々とジュースを注ぎ俺の近くに置いた。ありがたいが優しいのか悪戯したいのかどっちなのかはっきりしてほしい。

ただ、どちらにせよ今日は上機嫌そうだ。


料理の最中にソースの材料が無いことに気付き、床下の物置に手を伸ばした。

そこで、誰かが家に入ってくる気配を感じた。自宅守衛者(ホームガーディアン)の能力で結界を張り魔物の出入りを禁じているため、入ってきたのは人間で間違いない。数は、四…五…六人か。


「ユユ、誰かハンバーグ会に招待したの?」

「んなことするかよ。私が独り占めすんのは知ってんだろ?」

「まぁね」


俺が招待したわけでもない。考えられるのは、たまたま通りかかった人が寄った、ここに逃げ込んできた、もしくは…


「おいおい、こんな物騒な所に民家があるなんてオレたちゃツイてるなぁ」

「「へい、親分!!」」


盗賊、山賊、か。

皆それぞれ、片手に剣を持ち、片手に食料や金になりそうな物を適当に詰め込んだであろう袋が携えられている。


「ってな、わけでしばらくここに匿ってくれや。しばらく、したら出ていくからよ。もちろんそん時はここの資源も戴くけどよ」


なるほど、大体は察した。逃げてきた賊がここに隠れるついでに金目の物を巻き上げよう、ってことか。

普通の人ではない俺からしたらピンチでも何でもないが、


「あぁん?随分可愛らしいのがいるじゃねぇか」


ユユのお風呂上がりを見られて良い気はしない。こんな状況にも関わらずユユは瓶に口を付けをちびちびとジュースを飲み、その味を堪能していた。


「ユユ…ピンチなんですよ~……」

「んぐ、んぐ」

「話を聞け!!」


親分が怒声を上げるも俺たちには効果は無い。だが、これ以上事を荒げるのはおすすめしないぞ。自宅守衛者の能力でこの家から…。


「お前ら、誰?」

「…ば、馬鹿か!?この状況見れば分かんだろ!!」


今さら現状確認するユユにため息が出た。俺と同じように思ったのか子分の一人が脅しにかかるもユユは無視していた。


「そこの嬢ちゃん。大人しくしてれば痛い思いをしなくて済むぞ」

「そこの男は金品や食料を出せ!」


子分の多くが俺に剣と銃を向けた。

おいおい、たかが男一人に銃なんて物騒すぎるだろ。あと、そこの親分ムカつくんだけど。


俺のユユに下心全開で近付くんじゃねぇよ。


俺の怒気に気付いたのか、それとも偶然か。子分の三人が白目を向き床に倒れた。

賊の全員が倒れた奴を目にし、しばらく硬直した。

相変わらずジュースを飲んでいるユユと目が合うと思わず笑ってしまった。俺の出番はどうやら無さそうだ。


「お前らぁ!!一体何を…」


また一人失神する。

驚き、怒りを露にするも、俺たちはその場から動いていないし、動く気配も見せてはいない。

賊のほとんどが突然失神する不可解な現象に恐怖していた。冷静でいられなかった親分がしびれを切らし、子分を払い除け俺に切りかかってきた。

だが、途中で車に跳ねられたように壁に衝突した。

そこで、完全に意気消沈した子分どもの周囲に結界を張り、俺は動き出した。


「死んで、はないな。よかった。家で殺人とか勘弁してくれよ」

「残りはどうすんだ?」

「その格好の方はどうすんの?」

「良いじゃねぇか。今回ある意味ラッキーだったしよ」

「俺的には全然ラッキーじゃないの」


ユユの能力は無装覇者(ノーガスト)。ノーガード・ストロンガーの略で、軽装備であればあるほど強くなる。

今回は裸に限りなく近いため、すごい速さで賊を失神させ、親分に関しては鉄拳をお見舞いしたわけだ。


「さて、俺らを狩ろうとしたんだから…狩られる覚悟はできてるよ、ね?」

「「ひぃいぃ!!」」


俺は賊を一ヶ所にまとめ、衣服以外の持ち物を取り上げた。自業自得、その一言に限る。

このまま強い魔物がうろうろしている外に放り出してもいいが、そこまで俺は鬼ではない。


「殺生、ってやつに俺はあまり関わりたくないからさ」


賊が涙目でこちらを向き、何度も頷いた。


「皆さんは、どこから来たの?ノヴァイル?サラヴィス?」


そう尋ねると唇を震わせ、サラヴィスの方を指指した。そこまで怖がらなくていいのに。会話が成立しなくて困るので以後気を付けよう。


「サラヴィス、ね。了解」


俺は賊全員を結界に閉じ込め、それ持ち外に出た。

そして、思い切り振りかぶりサラヴィスの城目掛けてぶん投げた。中で叫び声が聞こえるが、気にはしなかった。城に直撃しても中には影響が出ないように結界の強度は上げているし、問題はないだろう。


家に入るとユユが、


「私より鬼だ」


と言った。

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