ノヴァイル終戦
ノヴァイルに着くととんでもない光景が広がっていた。
キリアールはマーティン達を使い、ノヴァイルのほとんど破壊し、多くの死傷者を出していた。
「人には手を出さない約束だったろ!!」
俺は声を荒げてキリアールを睨んだ。
ノヴァイルに勝利したのは良いことだが、これは違う。ただの破壊は何の意味もなさない。
「私にはやることがあるの。手を貸してくれたのには感謝するけど…」
「ふざけんな!!」
拳に力が入ったがなんとか押さえ付けた。
ユユの件といい、感情の昂りやすくなっている。もっと落ち着かなければ…。
「…ごめん。少し落ち着いた。でも、わざわざここまでしなくても」
「ノヴァイルのしたことを知らないから!!そんなことが言えるの…」
キリアールは涙目でそう訴えかけた。
俺が召喚される前、ノヴァイルは他の領地を手に入れるために非道な行いをしていた。
ノヴァイルは魔法より科学や技術の分野に長けていた。それを利用した化学薬品でフィークエードを少しずつ侵略していった。風邪のような軽い症状で誰も気付きはしない。徐々に蓄積されるそれは長い時間を掛け、フィークエードの人々を蝕んでいった。ノヴァイルの仕業と気付く頃にはすでに国とは呼べない有様だったという。
俺がノヴァイルに長く居たがらないのもそのためだ。今回の侵攻にあま手加減していないのもそうだ。
キリアールの気持ちは分かる。だが、無関係の人を巻き込み死者を多く出した事実を見逃すことはできない。
「俺がなんであなたを仲間にしたか分かりますか?倒さなければいけないもう一つの相手がいるからです。その相手にあなたが加われば必ず厄介になる。第四の勇者を召喚させた後に殺されると分かっているからです」
俺はユキをキリアールの前に連れて来た。
「知り合い、ですよね?」
キリアールは顔を伏せてしまった。
「…ユキは私の母が、十年前に召喚したの。ユキはとてもいい子で…。フィークエードを必ず守るって、母と私に言ってくれて……それで…」
それで敵国の俺たちを殺そうとしたわけか。
「ユキは他に何か言ってなかったか?召喚される前のこととか?」
「何も。ただ、“私には何もないから”って」
「なるほど。それは本人から聞くしかないな」
今の今まで出会わなかったのは俺たちが勇者らしい活動をしてこなかったから。それとも何か別の理由があるのか?
ユキのことは分からなかったがとりあえず最悪な場面は免れた。
もし、俺とユユ対ユキと第四の勇者になったら
確実に死んでいただろう。




